2011 Fiscal Year Research-status Report
診療ガイドラインにおける新たな課題の検討とその普及・実施計画立案に関する研究
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23590634
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
濱島 ちさと 独立行政法人国立がん研究センター, がん予防・検診研究センター, 室長 (30286447)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 医療の質 / 診療ガイドライン / 利益相反 / モデル評価 / 利益・不利益 |
Research Abstract |
1)諸外国におけるガイドライン作成に関する情報を収集し、その比較検討を行った。2011年3月に米国IOM(Institute of Medicine)が、ガイドラインの定義を変更し、以下の8つの基本要件を提示した。(1)透明性、(2)利益相反、(3)作成委員会の構成、(4)科学的根拠の系統的レビュー、(5)推奨のグレード、(6)推奨の表現、(7)外部評価、(8)更新である。この条件に対応し、アメリカがん協会(ACS)では、ガイドライン作成方法を修正し、新たな作成方法を公表した。ACSのがん検診ガイドラインは科学的根拠だけでなく、医療の現状を考慮していることから、広く普及している。今回の修正でも利益相反、一般市民のガイドライン作成委員会への参加、外部評価を求める方法などを明確化した。利益・不利益のバランスの検討には、判断樹分析を用いる可能性も示している。USPSTFでは、すでに判断樹分析を取り入れ、対象年齢や検診間隔の検討にも応用している。昨年公表した子宮頸がんガイドラインでは、未だ直接的な死亡率減少効果が得られていない細胞診とHPV検査の併用法を、判断分析により利益と不利益のバランスを検証し、細胞診と同様に推奨した。一方、新技術について最終結果が得られない場合、関連学会を中心としてデルファイ法などを用いたコンセンサス会議も広く行われていた。2)無作為化比較対照試験公表後の対応について、前立腺がん検診ガイドラインを検討した。PSA検診については死亡率減少効果に関する確固たる証拠が十分ではなく、欧米で行われている2つの大規模試験の結果公表が待たれていた。その後、更新が行われた10件のガイドラインやエビデンス・レポートのうち、大規模試験の結果公表と同年が4件、翌年4件、翌々年が2件であった。更新後の検討について系統的な検索を行わず、新たな2つの大規模研究に関する追加的コメントに留まっているものもあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は諸外国のガイドラインについて、1)新技術の迅速な評価、2)利益と不利益の評価、3)利益相反に関する検討を行うこととなっている。1)及び2)については、前立腺がん検診を例に検討をすすめた。作成方法については、2011年3月に米国IOM(Institute of Medicine)のガイドラインの定義及び基本要件が公表されたことから、今後ガイドライン作成団体への影響は大きいと考えられることから、引き続き情報収集に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
診療の標準化・質の改善を目的とし、診療ガイドラインの作成が国内外で広く行われているが、医療のニーズに対応するための課題を残している。信頼性のある質の高い安全な技術の提供のためには、新技術の迅速な評価や利益・不利益の評価は、診療ガイドラインに不可欠の過程である。診療ガイドラインは医療政策に有機的に組み込まれることにより有効活用されることから、作成過程の改善や普及・実施計画にも同様の視点からの検討が必要である。そこで、診療ガイドライン作成の問題点である新技術の迅速な評価、利益と不利益の計量的評価、利益相反への適切な対処を検討し、さらに政策決定への利用を目標とした普及・実施計画を立案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【1.モデル化による新技術の迅速な評価、利益と不利益の評価の検討】ガイドラインの推奨作成プロセスにおける利益と不利益に関する計量的評価方法(モデル化の利用を含む)を開発する。【2.診療ガイドラインの新たな推奨決定プロセスの開発】従来の推奨決定プロセス、またGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)など、国際的に標準化された方法との比較検討を行う。その結果に基づき、我が国でも応用可能な推奨決定プロセスを開発する。【3.診療ガイドラインの実施・普及計画立案作成】医療現場と診療ガイドラインの格差を明らかにし、その問題を解決するための課題設定、実施計画を立案する。【4.諸外国ガイドラインの情報収集】調査検討の成果の一部を国際医療経済学会やGIN(Guideline International Network)などの国際会議で報告すると共に、これらの国際会議を通じて引き続き情報収集を行う。
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