2011 Fiscal Year Research-status Report
がん薬物療法における血管新生阻害薬の薬物効果予測因子としての眼底所見の探索的研究
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23590638
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安藤 雄一 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (10360083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
満間 綾子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10467326)
伊藤 逸毅 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10313991)
寺崎 浩子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40207478)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 医薬品副作用 / 血管新生阻害薬 / 眼底検査 / 網膜血管 |
Research Abstract |
本研究では、がん薬物療法における血管新生阻害薬の有用なバイオマーカーの確立を目的に、がん薬物療法中の患者を対象に探索的に眼底検査を行っている。平成23年度は、交付申請書の実施計画に基づいて、学内倫理委員会より承認を得たのちに、外来化学療法室に無散瞳眼底カメラを設置して、文書による参加同意が得られた外来化学療法中の患者を対象に眼底所見の記録を行った。 平成24年3月末までに83名より同意を取得し、眼底所見の撮影は延べ462名に対して行った。これら83名の内訳は男性48名および女性35名であり、年齢は中央値58歳(28歳~83歳)であった。大腸がん患者が78名と大部分を占めており、治療内容(レジメン)は、大腸がんに対するフルオロウラシルを基本とする化学療法に血管新生阻害剤ベバシズマブを併用するレジメンをはじめとして、あわせて16レジメンであった。なお、本研究で撮影した眼底所見をきっかけとして、網膜中心静脈閉塞症および眼底出血の患者をそれぞれ1名を偶然に発見した。 眼底所見の系統的な解析は開始したばかりであるが、すでにいくつかの臨床的に重要な知見を得ている。第一に、治療期間が長い患者においてベバシズマブの投与前後における網膜血管径の変化がより大きい傾向が認められた。第二に、ベバシズマブ投与終了後2~3時間で網膜血管の変化がもっとも大きくなるため、眼底所見の観察に適していると考えられた。第三に、術前治療例での観察から、腫瘍縮小効果が大きい患者において網膜血管の変化が大きい傾向が認められた。これらの知見から、本研究の仮説のとおり、血管新生阻害薬ベバシズマブの投与前後の網膜血管の変化はその治療効果を予測するバイオマーカーとして有用である可能性がある。また、網膜血管の変化をより科学的に検証するために、適切な定量法も検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外来化学療法室に本研究専用の眼底カメラを設置できたことにより、眼底検査が円滑に進められた。眼底写真の記録に関わる手技の習得にやや時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度における眼底所見の探索的な記録をとおして、血管新生阻害薬ベバシズマブ投与の前後における網膜血管径の変化がその抗腫瘍効果を予測するバイオマーカーとなる可能性が示唆された。平成24年度はより定量的で再現性の高い血管径の評価法の検討とともに、眼底所見と抗腫瘍効果の関連について統計学的な解析を行う。本年度内の学会発表を予定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内旅費として本研究の初期成果についての学会発表、消耗品費として眼底所見の解析に必要な記憶媒体や文具、眼底カメラの維持費などを予定している。
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