2012 Fiscal Year Research-status Report
LDL受容体非介在性の脂質輸送担体を用いたニーマン・ピック病C型の治療戦略
Project/Area Number |
23590642
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
入江 徹美 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (60150546)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 洋一 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (70423655)
有馬 英俊 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (50260964)
本山 敬一 熊本大学, 生命科学研究部, 講師 (50515608)
松尾 宗明 佐賀大学, 医学部, 准教授 (20219398)
持永 早希子 佐賀大学, 医学部, その他 (70601045)
藤戸 博 佐賀大学, 医学部, 教授 (50325594)
|
Keywords | ニーマン・ピック病C型 |
Research Abstract |
Niemann-Pick病Type C (NPC)は、コレステロール(C)等の細胞内の脂質代謝・転送の破綻に起因する稀少難病である。近年、環状オリゴ糖シクロデキストリン(CyD)がNPC患児への人道的使用において症状を部分的に改善することが報告されている。しかし、CyD誘導体の選択、投与量・投与間隔の設定、投与経路、併用薬の選択等を含む至適投与プロトコルなどは未だ確立されていない。本研究は、佐賀大学医学部附属病院にて実施しているNPC患児へのCyD療法に対する科学的根拠を提供し、治療の最適化を図ることを目的としている。 平成24年度は、前年度に確立したin vitroおよびin vivo評価系を用いて、以下の新知見を得て、臨床現場にフォードバックした。1) CyDは、正常細胞のCバランスに影響を与えない低濃度で、Npc1欠損(Npc1 KO)細胞の遊離型C (FC)を減少させ、エステル型C(EC)を増加させた。その効果には至適濃度が存在した。2) Npc1欠損マウスにCyDを投与すると、体重減少の抑制、肝臓中FCの減少及び延命効果が観察された。3) NPC患児に2-hydroxypropyl-β-CyD (HP-β-CyD)を静脈内及び脳室内投与後のHP-β-CyDの動態パラメータを算出し、in vitro実験で得られた至適濃度条件を考慮した投与プロトコルを提案し、NPC患児の治療に貢献した。 現在、CyDの作用機序解明並びに有効性・安全性に優れる候補化合物の探索を継続している。さらに、基礎研究の成果を臨床に逐次フィードバックしつつ、CyDの至適投与条件(投与経路、投与量、有害事象の回避など)を確立するための協働作業を継続している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に、本研究の遂行に必須な各種実験材料の入手、測定系の構築が当初計画以上に進捗したので、平成24年度は、前年度に構築した評価系を用いて、「研究実績の概要」に示したような多くの新知見が得られた。特記すべきことは、CyDによるNpc1 KO細胞におけるCバランスの是正効果に至適濃度範囲が存在することである。さらに、CyDの効果は、CyD環を構成するグルコース数、置換基の種類、置換度などに依存し、現在使用されているHP-β-CyDよりも約10倍低濃度で有意な効果を示す誘導体を見出すことができた。現在、当初の予定を繰り上げ、Npc1欠損マウスに対して各種CyDの投与を開始し、最も有効性・安全性の高いCyDの選択の目処が立った。また、NPC患児におけるHP-β-CyDの静脈内及び脳室内投与後の動態パラメータを算出できたので、当初平成25年度からの開始を予定していた項目であったが、NPC患児へのHP-β-CyDの投与に際して、従来よりも有効で安全な投与条件が設定できた。現在、本研究の成果を基盤としたHP-β-CyDの投与が実施されている。以上より、当初の計画以上に順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) Npc1 KO細胞を用いたCyDの作用機序の解析 低濃度(1 mM以下)のCyDが、どのような作用機序でNpc1 OK細胞における異常なCバランスを是正するかは明らかになっていない。様々な仮説は提唱されているが、実験的証拠は見出されていない。我々は、CyDの細胞内への取り込みを検討したところ、正常細胞に比べてNpc1 OK細胞へのCyDの細胞内取り込み量が多く、さらに、Cと複合体を形成すると、その取り込み量がさらに増加することを見出した。また、正常細胞とNpc1 OK細胞では、高濃度(10 mM以上)のCyDの細胞膜障害作用に違いがあることを見出した。これらの現象を手がかりに、CyDの作用機序解明に向けて検討を進める予定である。 2) Npc1欠損マウスを用いたCyDの有効性・安全性評価 平成24年度に実施した研究から見出された有効性・安全性に優れるCyDに関して、特に中枢神経系への影響を調べる目的で、CyDの脳室内投与による影響を、一般行動学的試験、生存率および脳病理組織学的検討により評価する。さらに、現在臨床使用されているHP-β-CyDにおいて認められる一過性の肺障害の発症機序に関する検討を進める。本研究には、これまで当研究室で確立した肺障害評価系が有効利用できる。 3) NPC患児におけるCyD療法の最適化 平成25年度も含めて3年間の研究で得られる成果を総動員して、CyDの至適投与条件を確立する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に使用するNpc1欠損マウス(BALB/cNctr-Npc1m1N/J)の繁殖・飼育に伴い必要とする飼料、床敷きの購入を物品費で行う。それ以外にも、1) Npc1 OK細胞や神経様細胞の培養に用いる試薬類、2) CyD、Npc1蛋白質の機能低下をもたらすU18666A、スフィ ンゴリン脂質合成酵素阻害薬miglustat、デンドリマー/CyD結合体などの被検薬品類、3)CyDの定量に用いるHPLCカラム、移動相に用いる溶媒等の試薬類をHPLC用試薬類、4)C定量に用いるC定量用キット、firipinおよびフローサイトメトリー関連消耗品類等のC 定量解析試薬、5)IL-6、INF-βおよびSTATの定量・解析に用いるELISA kitや抗体類を炎症性サイトカイン・シグナル解析試薬、6)培養細胞の細胞傷害性の判定に使用するMTT assay試薬およびAnnexin V assay用試薬を細胞傷害判定試薬、7)実験動物の苦痛軽減に用いる麻酔薬、薬物投与カテーテル、採血用シリンジ・注射針等を動物実験用試薬を物品費として使用する。また、研究成果を学会(日本薬学会年会)にて発表する経費、佐賀大学の分担研究者との打ち合せにかかる経費を旅費として使用する予定である。
|
Research Products
(17 results)
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Phosphoenolpyruvic acid (PEP), an intermediary metabolite of glycolysis, as a potential cytoprotectant and anti-oxidant in HeLa cells2012
Author(s)
Kondo Y and Ishitsuka Y, Kadowaki D, Kuroda M, Tanaka Y, Nagatome M, Irikura M, Hirata S, Sato K, Maruyama T, Hamasaki N, and Irie T
-
Journal Title
Biological and Pharmaceutical Bulletin
Volume: 35
Pages: 606-611
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Antiproliferative effect of 2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin (HP-β-CyD) against chronic myeloid leukemia in vitro and in vivo2012
Author(s)
Masako Yokoo, Yasushi Kubota, Sakiko Mochinaga, Aya Maeda, Tatsuo Ichinohe, Hiroshi Fujito, Taishi Higashi, Keiichi Motoyama, Hidetoshi Arima, Tetsumi Irie, Shinya Kimura
Organizer
54th ASH Annual Meeting and Exposition
Place of Presentation
USA, Atlanta, Georgia World Congress Center
Year and Date
2012-12-08