2012 Fiscal Year Research-status Report
抗がん剤による時間治療の分子基盤確立をめざしてー細胞モデルシステムの樹立と応用ー
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23590645
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
池田 正明 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80232198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 恵 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (10506801)
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Keywords | 時計遺伝子 / 時間治療 / 癌 / プロモーター解析 / 細胞モデル / Bmal1 / トポイソメラーゼI / イリノテカン |
Research Abstract |
私たちは抗癌薬の時間治療法に関して、その分子基盤を確立するため、モデル細胞系を樹立し、時間治療法の分子基盤の確立を目指している。イリノテカンはトポイソメラーゼIを標的とする抗癌薬であり、その作用発現機構や代謝経路が明らかになっていることから、時間治療法の分子基盤を確立するためのモデル細胞系を構築する上で適している系の一つである。すでに、私たちはイリノテカンの標的分子であるトポイソメラーゼI 遺伝子プロモーターを解析しそのリズム発現機構について解析し報告している。 1) 時計遺伝子の発現とシグナル経路の解析 癌細胞における増殖性のシグナル伝達システムとそのシグナルによる時計遺伝子の発現は、癌細胞における概日リズム性の維持や破綻と強く関係があることが知られている。中でも現在多くの癌標的薬の標的となっているHIF1αと低酸素シグナル系に注目し、塩化コバルトによる低酸素様刺激とHIF1α/ARNT 過剰発現細胞における時計遺伝子発現動態を解析した。Bmal1, Per1, Per2 プロモーターレポーターを用いて発現動態を解析したところ、Bmal1, Per1 は塩化コバルトによるプロモーター活性の上昇が確認された。また、HIF1α, HIF2α/ARNT による発現動態の変化も観察され、時計遺伝子が低酸素関連のシグナルによって発現に変化のあることが明らかとなった。 2)トポイソメラーゼIの発現と低酸素シグナル系の解析 トポイソメラーゼIの低酸素での発現誘導は今まで知られていない。そこで私たちはプロモーターレベルでの発現誘導の有無を検討したところ、塩化コバルトによる発現の誘導があり、またこの誘導がHIF1α/ARNT の過剰発現で増強されることを見出した。E-boxを欠失させたプロモーターではこの誘導が部分的に減弱化することから、この発現誘導はE-box を介して惹起することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、抗癌薬の標的として注目されているHIF1αとそのシグナリングシステムと時計遺伝子および概日リズム性発現をする抗癌剤標的因子との関連について特に注目して重点的に解析を行った。特に概日リズム性発現を示すイリノテカン標的因子であるトポイソメラーゼIについて、モデル系としての位置付けに基づいて詳細に検討した。この結果、今まで知られていなかったトポイソメラーゼIが転写レベルで低酸素シグナリングによって、発現制御を受けること、またこの誘導はHIF1α/ARNTによって増強することを、見出すことに成功した。これは今後の抗癌剤の作用機構を検討する上で、重要な視点を与えるものと考えている。 特に低酸素刺激誘導がプロモーターのE-boxを一部介していることを示唆する結果が得られており、時計機構と低酸素シグナリングを結びつける機構である可能性があり、このような知見が得られたことは、本研究課題の今後の方向性を決める上で重要なポイントであると考えており、研究途中の到達点として意義のあるものである。 さらに、低酸素シグナリングが時計遺伝子に発現に対する影響について検討したが、Bmal1, Per1は低酸素による発現誘導を受けることが示され,時計のリセットに関連する可能性があり、今後、その分子機構と時計発現における意味を検討する必要がある。 以上のように、H24年度は重要な知見を見出すことが出来ており、概ね目標を達成できたものと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
時計遺伝子と抗癌薬標的因子およびその代謝因子の遺伝子発現を同時に計測可能なシステムの構築を目指している。すでに、異なる発光色をもつルシフェラーゼを用いたマルチカラールシフェラーゼシステムの構築と応用の研究は、共同研究者と実施し、実用化を行っている。本研究課題では、このマルチカラーシステムを、抗癌薬の時間治療のための分子基盤の確立をするための、モデル細胞系に応用する計画で、研究を進めている。すでに、抗癌薬イリノテカンをモデル系の抗癌薬と位置付け、その標的であるトポイソメラーゼI のプロモーターの発現解析を完了しており、また、昨年度においては、イリノテカンの代謝や細胞からの排出に関与する因子のプロモーターをクローニングし、レポーターベクターに導入して、レポーター系の準備を完了している。今後は、これらのマルチカラーレポーター系を同一の細胞に導入し,リズム発現を同時に解析可能なモデル細胞システムを樹立するための実験条件を確立するとともに、低酸素などの発癌に関連する細胞情報系の状態とこれらの因子発現の関係や日内変動に与える影響などの解析を推進して行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験を遂行するための基本的な機器類は、共同機器を含めて揃っているため、備品、物品の購入予定はない。ただし、実験の実施状況により、利用頻度の高い機器の購入が必要になる可能性もある 使用を予定している物品は、細胞、遺伝子実験に用いる試薬、ディスポ器具が主たるものである。その他、動物利用実験を行う計画であるため、その関連の支出を予定している。 旅費としては、国内2回、海外1回の学会発表を予定しており、これらの出張旅費を支出する事にしている。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] 梢時計機能は個人の概日/睡眠特性を反映する2012
Author(s)
肥田昌子, 北村真吾, 片寄泰子, 榎本みのり, 大澤要介, 渡邊真紀子, 野崎健太郎, 有竹清夏, 樋口重和, 加藤美恵, 守口善也, 亀井雄一, 池田正明, 三島和夫
Organizer
Neuroscience2012
Place of Presentation
名古屋
Year and Date
20120918-20120921
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[Presentation] 末梢時計リズムは個人の睡眠特性・生物時計機能を反映する2012
Author(s)
肥田昌子, 北村真吾, 大澤要介, 片寄泰子, 野崎健太郎, 榎本みのり, 有竹清夏, 樋口重和, 加藤美恵, 亀井雄一, 池田正明, 三島和夫
Organizer
第19回日本時間生物学会学術大会
Place of Presentation
札幌
Year and Date
20120915-20120916
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