2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590655
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武田 晴治 北海道大学, 保健科学研究院, 特任准教授 (80374726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 仁志 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (70197622)
末岡 和久 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60250479)
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Keywords | リポ蛋白質 / 表面電位 / ケルビン測定 |
Research Abstract |
今年度は3つの項目を実施した。1)基板上に高密度に固定化されたLDL粒子の集合体の表面電位をケルビンにより測定した。2) 溶液中でLDLおよび酸化LDLの形状と硬さの変化について検討を行った。3)酸化されたLDLより生成する小さい分子の塊(パーティクル)が赤血球の形状に与える影響について検討した。 1) LDLの酸化を評価するときに用いられるTBARS量と表面電位変化を比較した。TBARS値が酸化前の3μMから約4μMに増加した状態(酸化初期)では電位は酸化前と比較すると大きく減少した。更に酸化が進みTBARSが10μM以上になっても、電位はわずかの低下のみが観察された。ニンヒドリンでアミノ基の含量を測定したところ、酸化初期でほとんどなくなっていることから、表面電位の低下はLDLに含まれるApoB100のリジン側鎖などが修飾されたことによるものである可能性が示唆された。 2) mica表面をAPTESで修飾した基板にLDLを固定化して硫酸銅を酸化剤として添加後、37℃で酸化をおこなったときの粒子の形状の変化と硬さの測定を溶液中でおこなった。 酸化前は幅約30nm高さ12から15nm程度の粒子が複数観察されていたが、酸化時間の増加ととともに高さが減少してつぶれていく傾向が観察された。また、数は少ないが粒子径が200nm以上の大きい粒子が基板上で形成された。これら粒子はLDLに比較すると10倍程度やわらかいことがフォースカーブ測定から示唆された。 3) 酸化により異なる粒子径のものがLDLから生成することがわかったので、限外フィルターとイオン交換カラムで酸化LDLをサイズと荷電状態で分離した。赤血球に分離分画した酸化LDLを添加したところ形状が変化を起こし、溶血をおこした。LDLまたは硫酸銅を添加しても赤血球の溶血がおきないことより酸化LDL由来の物質が原因であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1). 1粒子レベルでの電位測定の再現性と粒子形状と電位の統計解析2) 溶液中での一粒子レベルでの電位および酸化還元電流測定3,4) 個々のLDLカイロミクロン、VLDL粒子のリアルタイム酸化プロセス観察と剛性測定 5). マクロファージ泡沫化、血小板凝集させる、リポ蛋白質の物理的性質を決定する。 を実施予定であった。 1)については実験はほぼ終了しており、解析が進み、学会発表済で論文準備中である。 2)溶液中での一粒子レベルでの電位および酸化還元電流測定は溶液と探針間の影響が大きく、測定が遅れている。最終年度に優先して測定したい。 3,4)LDL以外のリポ蛋白質、IDL,VLDLを基板に固定化して形状観察をした。IDL,VLDLは予想される形状のものが観察できず固定時に構造が壊れやすいことが示唆された。これらは非常に軟らかい構造であることを示唆していると考えられる。 5) 血小板の採取に問題があり、凝集が開始してしまうことがあったが、血小板の採血時にクエン酸を入れておくことで解決した。24年度は、赤血球を用いて酸化LDLの影響について検討した。LDLの酸化に伴い赤血球を溶血される作用が観察された。溶血させる酸化LDLは分子量3000以下の分子を多く含んでいることがフィルターによる分画により示唆された。これらの分子は280nmに吸収を持ちことよりペプチドなどが含まれている可能性がある。これらの分子の血小板の凝集についても検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
溶液中での一粒子レベルでの電位および酸化還元電流測定は溶液と探針間の影響が大きく、測定が遅れているので優先して測定したい(予定実施期間6ヶ月)。 また、一粒レベルでケルビン測定用の試料作成時に構造に特徴のある吸着構造物が観察された。これらがApoB蛋白質である可能性が考えられ抗ApoB抗体などで確認したい。これによりケルビン測定で観察して分子がApoB蛋白質なのかどうかが推定可能と考えられる(予定実施期間3ヶ月)。 LDLが酸化されるに従い粒子の大きさの異なるLDLが存在することが判明したので、酸化LDLをフィルターやゲルろ過法などを利用して大きさにより分類する(予定実施期間2ヶ月)。 分類したLDLが血小板の凝集作用があるかどうかについて検討を行う。冠動脈疾患はマクロファージの泡沫化や血小板凝集など様々な要因が相乗的に関与していると考えられ血小板凝集の有無も検討したい(予定実施期間4ヶ月)。 期間全体を通して測定結果の解析を行い学会での発表と論文化の作業を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)