2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590666
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
飯野 和美 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (90402263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖 隆 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (20169204)
前川 真人 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20190291)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 悪性褐色細胞腫 / メチル化解析 / プロテオーム解析 |
Research Abstract |
本研究は悪性褐色細胞腫の転移関与遺伝子、関与分子について分析し、潜在的がん転移能力のもつ意味やそれが顕性化する機序の解明を目的としている。[悪性化に伴うメチル化解析][タンパク発現量の面からのプロテオーム解析]の二つのアプローチを考え、このうち平成23年度は前者を中心に下記の研究を行った。 (1)実験のデザインと研究対象褐色細胞腫患者のエントリー。臨床情報の収集。(2)組織からのtotal RNA抽出。(3)組織からのgenomic DNAの抽出とそれらを用いた全ゲノムのメチル化解析。【対象】褐色細胞腫症例38例(良性31例、悪性7例)。悪性7例のうち原発巣摘出後に長時間を経て転移巣が確認され悪性の診断に至った下記2例を全ゲノムメチル化解析の対象とした。症例1;男性 1986年右副腎褐色細胞腫を摘出。1993年胸腹部・Virchowリンパ節に転移を診断。症例2;女性 1992年膀胱褐色細胞腫を摘出。2003年左第8肋骨・右下肺に、2004年胸骨・脊椎に転移を診断。【研究経過・結果】(1)パラフィン包埋組織より約35 mgの切片を切り出しtotal RNAを抽出、38例のうち24例について解析に十分量のサンプルが得られた。(2)症例1. 2の原発巣、転移巣よりgenomic DNAを抽出した。得られたDNAは全ゲノム網羅的DNAメチル化解析に提出予定。(3)38例のうちMEN2型は6例(2例が多発病変)であった。Von Hippel-Lindau tumor suppressor gene (VHL)のmutationは2例、筑波大学大学院臨床医学系分子検査医学に依頼し検索したsuccinate dehydrogenase (SDHB, SDHD)gene mutationは3例に陽性であった。11症例に重複はなくいずれも悪性の診断はなされていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、本研究開始初年度として、まず実験のデザインおよび対象褐色細胞腫患者のエントリーと臨床情報収集、さらに材料収集を行った。これらの材料を用いて、今後展開する研究サンプルとして腫瘍組織RNAおよびDNAの抽出を行った。10年余の経過でfollow upされている患者の腫瘍組織の採集には多くの関連施設の協力を必要とし、また材料の収集に時間と労力を要した。得られたパラフィン包埋組織からのRNAおよびgenomic DNA抽出に関しては、質の高い十分量のサンプルを得るために複数の抽出キットを試用する必要があり、多くの時間と費用を割く必要があった。その結果研究計画では平成23年度に着手する予定であったgenomic DNAを用いた定量的メチル化解析、および凍結保存組織からのプロテオーム解析サンプルの抽出、が来年度以降に持ち越された。当初の実験計画よりやや遅れがみられる部分もあるが、質の良い十分な研究サンプルを得ることで、それらを用いて、今後順調な研究の展開が期待できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)腫瘍の悪性化に伴うメチレーション解析:悪性褐色細胞腫組織を用いて、同一症例内での原発巣および長期間を経て発症した転移巣におけるメチル化解析を行い、(転移器質獲得・癌抑制解除の機序として)ゲノム上のメチル化CpG領域が関与する遺伝子を同定する。メチル化されたプロモータ領域の下流に存在する悪性化抑制遺伝子が絞り、定量的Methylation specific PCR法を用いてメチレーションの程度を評価する。SDHB, SDHD, VHL, RET, NF1についてもその上流に悪性化に伴ってメチル化されるプロモータ―領域の有無を解析する。 (2)摘出腫瘍のタンパク発現量の面からみたプロテオーム解析:摘出腫瘍組織から精製分離されたタンパク質を還元、非還元SDS-PAGE, 二次元電気泳動法にて分離。異なった発現を示すタンパクを解析し、切り出したスポットからペプチド断片を作成しMS/MS解析による質量分析にて同タンパクの同定を行う。i)良性/悪性間で発現に有意差のみられるタンパク、ii)原発巣と転移巣の間に発現較差のみられるタンパクについてその発現の特異度を検討する。一方で、悪性腫瘍の細胞増殖、血管新生、細胞接着、組織浸潤、どの過程に関与する蛋白の発現に較差がみられるか検討する。(3)DNA Microarrayによる既報の転移関連遺伝子プロファイリング:プロテオローム解析結果をふまえ、各腫瘍組織から得られたtotal RNAを材料とし、各種癌関連遺伝子チップやhuman Full Genome チップを用いて、oligo DNA Microarrayを行い、遺伝子発現のプロファイリングを行う。おもにプロテオーム解析で発現較差が疑われたタンパクで既に機能が既に明らかなものについては、その周辺機能関連遺伝子について集中的にプロファイリングする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度から繰り越された腫瘍genomic DNAを用いた全ゲノムメチル化解析、およびMethylation specific PCR法を平成24年度に予定しているため、メチレーションアレイ解析用マイクロアレイおよび、その関連試薬に経費をあてる予定である。さらに、タンパク発現量の面からのプロテオーム解析にスタートとして、トランスクリプトーム、ミローム、ゲノム、エピゲノム解析、遺伝子プロファイリングと展開させる各種オミックス解析をもう一つのアプローチ法として計画しており、来年度以降これらに必要なゲノムマイクロアレイチップなどマイクロアレイ関連試薬、およびその消耗品に多くの経費があてられる予定である。上記の研究の成果で絞られる悪性化候補遺伝子について、さらに遺伝子プロファイリングとその機能解析を行う計画であり、アレイによる定量化、遺伝子導入実験、抗体を用いた免疫組織学的実験などを予定している。細胞培養系、放射線同位元素、を駆使した新規の実験系を組む必要がある。そのために必要な各種試薬に研究経費が占められている。研究後半には、候補遺伝子の同定からのさらなる展開としてトランスジェニックマウスの作成と、その発がんモデル、転移モデルとして評価に関する研究を考えており、遺伝子導入実験試薬および動物について研究経費をあてる予定である。予定している実験や研究に必要な設備、大型装置などのハードウエアはおおむね既に整備されているため、研究経費は主に消耗品にあてる予定である。
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Research Products
(3 results)