2011 Fiscal Year Research-status Report
悪性腫瘍細胞の薬剤感受性に及ぼすスフィンゴ脂質代謝の関与
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23590667
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村手 隆 名古屋大学, 医学部, 教授 (30239537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小嶋 哲人 名古屋大学, 医学部, 教授 (40161913)
高木 明 名古屋大学, 医学部, 助教 (30135371)
鈴木 元 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80236017)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | NSmase2 / ATRA / MCF-7細胞株 / プロモーター解析 / Sp1転写因子 / PKC delta |
Research Abstract |
ヒト乳がん脂肪株 MCF-7(all trans retinoic acid (ATRA)感受性)とMDA-MB-231(ATRA非感受性)を用いてATRAの各細胞株への効果とスフィンゴ脂質代謝酵素のneutral sphigomyelinase 2 (NSMase2)への影響について解析した。 既報のごとく前者はATRAによって増殖が停止し、後者は増殖は停止しなかった。ATRA刺激MCF-7においてNSMaseの酵素活性、NSmase2のタンパク、mRNAレベルが増加していた。NSmase2プロモーター解析の結果、5’プロモーター領域の-148 bpから-42 bpの領域にあるSp1結合予想モチーフがATRAの反応性に重要で、Sp1転写因子阻害剤であるミスラマイシンAならびにSp familyの過剰発現実験により転写因子としてのSp1ないしSp3の重要性が確認された。 ATRAによる転写因子SP1への影響はDNAプロモーター領域への結合力の増加ではなく、ATRA刺激によってPKC δ活性化がおこり、それによるSp1のリン酸化とそれに伴うこのプロモーター領域のヒストンH3のアセチル化がNSmase2の転写亢進に重要である事をはじめて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究テーマとして設定した6テーマのうち、(1)乳がん細胞株でのATRAの増殖抑制と、スフィンゴ脂質代謝酵素発現の意義に関しては、上記のように十分な研究成果を得て、Journal of Biochemistryに論文を発表した。その他、テーマ(2)の肺がん細胞株におけるS1P lyazeの発現調節機序解析に関してはBiochim Biophys Actaに、テーマ(6)のGlia cell line derived neurotrophic factorによる増殖動態の変化とSPHK1/S1Pシグナルの関与においても研究を完成させ、J Cell Biochemistryにそれぞれ論文を公表した。 テーマ(3)赤白血病におけるスフィンゴシンキナーゼ1の腫瘍性および分化誘導時の発現レベル変化の意義に関しては、ほぼ実験を終了して現在投稿準備中である。 テーマ(4)および(5)の自然に存在する食品含有物であるレスベラトロールの白血病細胞株に対する増殖抑制効果の解析、ストレス環境下でのスフィンゴシンキナーゼ2の発現調節機序についても順調に研究を進めており、予定した平成23年度からの年次ごとの研究計画、方法通りに実験が勧められており、自己評価による「研究目的」の達成度はほぼ満足できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね申請した研究計画書どおりに研究を遂行する。論文化が予定以上に進行しているので、まずは投稿を予定しているテーマ(3)赤白血病におけるスフィンゴシンキナーゼ1の腫瘍性および分化誘導時の発現レベル変化の意義にかんしてレフェリーからの指摘を待って、それにより十分な追加実験を行なう。 当面の主要な研究活動を、上記のテーマ(4)自然に存在する食品含有物であるレスベラトロールの白血病細胞株に対する増殖抑制効果の解析および(5)のストレス環境下でのスフィンゴシンキナーゼ2の発現調節機序についてに集中させる。 さらには予備実験の結果から推定された酸性セラミダーゼのホルモンによる新規調節機序を、テーマ(5)から独立させた形で有望な新規研究テーマとして設定して実験を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度およびその翌年度の研究費の使途は、当初の申請書に記載した通りほぼすべて実験に必要な消耗品費として支出する。細胞の培養、遺伝子導入、プロモーター活性の測定にかかる試薬等は、本年度購入したものの残りでもまかなえるため、初年度分よりは予算が減額されるが、おおむね次年度支給される予算額で実験をまかなう事が出来ると判断している。
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