2011 Fiscal Year Research-status Report
フローサイトメトリーによる核酸代謝酵素欠損症診断法の基礎的検討
Project/Area Number |
23590668
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
登 勉 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60106995)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | MTAP / 酵素欠損 / フローサイトメトリー / エピトープマッピング / 形質転換細胞 |
Research Abstract |
FCMによる白血病の病型診断は日常診療でルーチン化しており、本学附属病院検査部でも実施している。本年度は抗MTAP抗体を用いた診断の開発のための基礎的検討を行った。MTAP蛋白の細胞内局在は細胞質および核で、細胞膜上には発現していない。従って、細胞の前処理(permeabilization)に工夫が必要であるが、従来から用いられている方法でなく市販の前処理試薬を用いた検討を行い、指摘なpermeabilization方を見つけた。次に、MTAP酵素欠損白血病細胞株をMTAP cDNA発現ベクターにより酵素陽性細胞に形質転換し、MTAP酵素タンパクを発現するtransfectomasを得た。これらの細胞のMTAP mRNAとタンパクの発現を、それぞれRT-PCR法とWestern blotting法により測定した。さらに、当研究室で作製した抗MTAPモノクローナル抗体のエピトープマッピングを行い、コドン268と269であることを特定した。この結果は、第8エクソンにエピトープが存在することを示すものである。MTAP酵素欠損癌では、プロモーター・メチル化による発現低下を示す例以外の全ての例で、第8エクソンが常に欠失していることを既に報告したが、この抗体がMTAP酵素欠損の診断に有用であることを改めて証明する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の達成度を「おおむね順調に進展している」とした。その理由として、(1)抗MTAPモノクローナル抗体のエピトープマッピングを行い、FCMによる酵素欠損診断に用いる抗体として有用であることを証明した、(2)FCMの基礎的検討で、最適なpermeabilization法を確認した、(3)MTAP陽性transfectomaを作製し、酵素欠損親株を陰性コントロールとしてFCMに用いることを可能にした、という3点を挙げる。
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Strategy for Future Research Activity |
対象となるプリン代謝酵素Methylthioadenosine phosphorylase(MTAP)は、全ての正常細胞及び正常組織では活性を認めるが、小児急性白血病、成人T細胞白血病、肺癌、脳腫瘍などで高頻度に欠損している。この酵素はプリン・サルベージ経路を介したアデニン・ヌクレオチドの供給に関与しているので、酵素欠損癌細胞では、プリン新生合成阻害剤に感受性である。一方、正常細胞は、癌患者血中に存在するMTAPの基質Methylthioadenosine (MTA)を利用してアデニン・ヌクレオチドを産生する。従って、癌細胞はプリン欠乏になり死滅するが、正常細胞は生き残る。平成24年度以降は、1)MTAP欠損親株細胞とMTAP陽性transfectomaを用いて、FCMによるMTAP酵素欠損診断法を確立すること、そして2)フローサイトメトリーによる診断法の汎用性の検討を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年は予算は150万円である。その費目別内訳は、物品費80万円、旅費50万円、人件費・謝金15万円、その他15万円である。物品費は、細胞培養用試薬類、プラスチック製品類、そしてFCM用試薬類の購入に使用する。旅費は、国内学会および国際学会での発表を計画しているので、その出張のための旅費である。人件費・謝金は、FCMの専門的知識や技術指導のための謝金とする予定である。その他は、論文作成のための費用として使用する。
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