2014 Fiscal Year Research-status Report
ポンペ病新生児スクリーニングにおけるアジア人固有の遺伝子多型の影響とその回避策
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23590679
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
奥宮 敏可 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (50284435)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | リソソーム病 / ポンペ病 / Ⅱ型糖原病 / 新生児スクリーニング / 遺伝子多型 / 血液濾紙 / 酸性α-グルコシダーゼ / 酸性マルターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
ポンペ病は、酸性α-グルコシダーゼ(AαGlu)の遺伝的欠損に起因する遺伝性代謝病であり、心筋や骨格筋、肝を中心とした全身臓器にグリコーゲンが蓄積し、様々な症状を呈する。我々は、アジア系人種固有の遺伝子多型(c.1726G>Aとc.2065G>Aが同一アリールに存在する多型:AA)のホモ接合体が日本人の中に約4%存在し、本症の新生児スクリーニングに影響し、診断精度を著しく低下させることを報告してきた。また、このAAホモ接合体による影響を受けない高感度測定法(Ba/Zn法)を開発し、本症のための新生児マススクリーニングシステムを構築した。この方法を用いて、本学小児科との共同研究で、2013年4月より、日本で初めてのポンペ病の新生児マススクリーニングを本格的に開始した。現在、約4万例の新生児のスクリーニングを行っており、既に8例の遅発型ポンペ病を見出している。この発症頻度は既報の頻度の約10倍である。この研究成果により、原因不明の神経筋疾患(主に成人)の中に、多くのポンペ病が潜在していることが強く示唆された。そこで、今後はハイリスクスクリーニングが急務と考え、皮膚生検材料をもとに病理組織染色用に作製されたスライドグラス上の凍結組織切片を用いて、酵素診断できる方法を確立した。現在、他の研究施設との共同で、凍結組織切片を用いたハイリスクスクリーニングの準備を進めている。このハイリスクスクリーニングで、筋症状がありながらも確定診断されていない遅発型ポンペ病患者を掘り起こせるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年4月から開始した日本人を対象としたポンペ病の新生児マススクリーニングにより、現時点で約4万人の新生児をマススクリーニングし、8例の遅発型ポンペ病を同定した。今回確定診断された8例の遅発型ポンペ病のうち、現時点で最初の1症例に関しては詳しく遺伝子レベルでの解析を行うことができた。症例1(GGアリールとAAアリールを持つGG/AAヘテロ接合体)では、GGアリール側のコーディング領域およびスプライシングに関与するエクソン/イントロン接合領域に酵素活性に影響を与える塩基置換は認められなかったが、発現産物(mRNA)を定量し、GGアリール由来のトランスクリプト量を算定したところ、正常コントロール(GG/GGホモ接合体)の100分の1まで低下していることが明らかとなり、GGアリールでは転写調節領域の異常が示唆された。また、AAアリールからはスプライスバリアントが発現していることが示され、スプライス異常が示唆された。現在、第2症例に関する遺伝子レベルでの解析を進めている。我々が確立したマススクリーニングシステムにより日本人を対象にポンペ病の新生児スクリーニングを行い、当初予想された発症頻度を遥かに超える患者が同定されたため、確定診断された患者の遺伝子解析はやや遅れている。しかし、今回の成果は、これまで考えられてきた発症頻度を覆すものであり、特に我が国には多くの遅発型ポンペ病が潜在していることを明らかにしたことは、患児の早期発見・早期治療開始に大きく貢献するのみならず、ハイリスクスクリーニング実施の重要性を強く示唆するものである。以上の研究成果は、当初計画していた平成26年度の実験計画に充分対応するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から本格的に開始したポンペ病の新生児スクリーニングは順調に進んでおり、既に遅発型ポンペ病患者を8例も発見している。今後、このスクリーニングは5年以上継続することを想定しており、最終的には10万例以上の新生児をスクリーニングすることとなると予想される。また、現在は本マススクリーニングシステムを国内の他の施設への技術移転を積極的に進めており、今後は、本法がポンペ病新生児マススクリーニングの標準測定法として国内外(特にアジア系諸国)へ普及することが予想される。そのためにも、より多くのデータを取集して、効率的で正確なカットオフ値を設定していくことが必要と考えている。また、筋生検材料から作製された病理組織染色用の凍結切片を測定試料とする酵素診断法は、神経筋疾患を対象としたハイリスクスクリーニングを実施する際に非常に重要な技術となるものと確信している。現在、この方法を用いたハイリスクスクリーニングの準備を進めており、それにより筋症状がありながら確定診断されていない遅発型ポンペ病を掘り起すことができ、早期治療介入することが可能となるものと考えている。これらの作業は、全て我々の研究室で実施することとなっており、今後も大量検体の処理が必要と思われる。それにともない、収支状況報告書の次年度使用額に記した額に相当する、酵素活性測定のために試薬類や遺伝子多型解析に費やされる諸経費が必要である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では平成26年度が最終研究年度であったが、既述のごとく当初予想した患者の発症頻度を遥かに超える遅発型ポンペ病患者が同定されたために、ハイリスクスクリーニングのための分析技術の開発等に時間を要し、同定された患者の遺伝子解析が遅れた。そこで、補助事業の延期手続きを行い次年度も研究を継続することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はハイリスクスクリーニングを実施するともに、確定診断された患者の遺伝子レベルでの病因解明を同時に行いたいと考えている。それを進めるためには、酵素活性測定のための種々試薬類や酵素反応に用いる器具類、細胞培養に必要な培養液等の消耗品の購入が必要である。また、遺伝子解析や発現実験を実施するにあたっては、国内外の研究施設と共同で研究を進めることとなるので、研究試料の輸送費等にも研究費を充当することが必要である。
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Research Products
(8 results)