2011 Fiscal Year Research-status Report
イムノクロマト法によるシトリン欠損症迅速簡便診断法の開発と臨床応用
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23590680
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
飯島 幹雄 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00305111)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イムノクロマト法 / アスパラギン酸・グルタミン酸輸送体 |
Research Abstract |
ヒトの高アンモニア血症の一つである成人発症II型シトルリン血症の原因遺伝子産物シトリンの欠損は、新生児期において特異な新生児肝炎を引き起こす。新生児期のシトリン欠損症の診断には、濾紙血からの遺伝子診断が重要であるが、約10%の患者を補足することができない。遺伝子診断を補完するものとして、シトリンタンパク質の検出も、生検肝、末梢血、初代培養線維芽細胞を対象におこなってきた。しかし、患者への負担や、検出までに多くの時間と手間がかかるため、その利用はあまり進んでいない。そこで、シトリンタンパク質を検出する迅速簡易診断法を確立し、診断や遺伝学的研究に活用することを目的とする。これにより、通常の高アンモニア血症の治療戦略である低タンパク質高糖質食摂取やグリセオール投与が、シトリン欠損症においては症状が改善せず、かえって悪化させ死に至る場合があるという問題に、簡便で迅速な診断手段を提供することができ、近年明らかになったシトリン欠損症に対する治療戦略を患者が明確に受けることができるという、患者にとって大きな利点を提供することができる。 本年度は、1)口腔粘膜でのシトリンタンパク質の検出法の検討と2)組換シトリンタンパク質発現ベクターの構築をおこなった。1)口腔粘膜を検出材料として、シトリンタンパク質の発現量をWestern blot法により検討した。また、イムノクロマト法による検出のため、ミトコンドリア膜蛋白質であるシトリンタンパク質の可溶化方法を検討した。各種界面活性剤によるシトリンタンパク質の可溶化法を比較検討した結果、可溶化の程度が良好な界面活性剤が選定できた。2)抗体作製と抗体精製のための組換シトリンタンパク質を分取精製するため、組換シトリンタンパク質を大腸菌で発現するベクターの構築を行った。現在、組換シトリンタンパク質の分取精製をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、1)口腔粘膜でのシトリンタンパク質の検出法の検討と2)組換シトリンタンパク質の作製について、おおむね順調に進展している。 1)では、生検肝、末梢血、初代培養線維芽細胞を対象におこなってきたWestern blot法によるシトリンタンパク質の検出感度と同等以上の感度にて、口腔粘膜を用いて検出できることが確認できた。また、ミトコンドリア膜タンパクであるシトリンタンパク質の可溶化法についても、各種界面活性剤を用いた比較検討により、可溶化の程度が良好な界面活性剤が選定できた。 2)については、当初計画していた研究協力者が死去したことに伴い、組換シトリンタンパク質を大腸菌で発現する発現ベクターを作製し直すこととなった。そのため、組換シトリンタンパク質の分取精製に遅れが多少生じているが、現在順調に分取精製をおこなっており、次年度における抗体作製と抗体精製に供することが可能である。 以上より、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究期間で、シトリンタンパク質検出のための、生体材料として口腔粘膜が利用可能であることが確立できたので、次年度では、1)研究の趣旨を理解した自発的参加者からの検体を用いて、従来のWestern blot法によるシトリンタンパク質の検出をおこなう。これにより、シトリンタンパク質検出のための低侵襲で容易に得られる検体として、口腔粘膜が有用であることを確立する。また、同時に、イムノクロマト法によるシトリンタンパク質検出のための検体として、可溶化処理後保存する。2)本年度分取精製している組換シトリンタンパク質を用いて、抗体作製と抗体精製を進める。抗シトリン抗体は、三種類のポリクローナル抗体と五種類のモノクローナル抗体を作製する。三種類のポリクローナル抗体から、イムノクロマト法の発色粒子である金コロイドで標識する抗体として高感度が期待されるポリクローナル抗体一種を選定する。さらに、五種類のモノクローナル抗体から、メンブレン上に固定化する固相抗体として反応特異性が高いモノクローナル抗体一種を選定する。これらを用いて、イムノクロマト測定系を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の達成のためには、イムノクロマト法に利用できるモノクロナール抗体が重要である。モノクロナール抗体作製は、外部業者に委託する計画で、当初の作製費用を80万円と見積もっていた。その後の情報収集により、一回のモノクロナール抗体作製で五種類の抗体が得られる場合、当初予定の倍程度の費用で、確実な五種類を提供する業者があることが分かった。そこで、モノクロナール抗体作製の受託業者選定の自由度を上げるため、本年度使用予定であった試薬費用の一部、臨床情報等を解析する為のコンピューター購入費や研究打ち合わせのための旅費をモノクロナール抗体作製の費用に充当することができるように、次年度に繰り越した。次年度では、繰り越した研究費ならびに次年度の研究費の中から、抗体作製費用として170万円程度までを充当できるようにし、研究目的に合致したモノクロナール抗体一種を必ず確保する。生化学関連試薬とイムノクロマト部材購入費用、研究打ち合わせのための国内出張一件とプラスチック器具等の消耗品として、それぞれ30万円、35万円、9万円と10万円を予定している。
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