2012 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性緑膿菌の耐性獲得機構の解明と簡易検査、感染制御への応用
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23590691
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
浅井 さとみ 東海大学, 医学部, 講師 (60365989)
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Keywords | MDRP / 耐性獲得機構 / Mex pump / 迅速診断検査 |
Research Abstract |
多剤耐性緑膿菌(multi-drug resistant Pseudomonas aeruginosa: MDRP)の耐性獲得機構を知るために、MDRPを含む臨床分離緑膿菌97株について、耐性に関与する遺伝子発現や変異を調査した。H23年度に引き続きMDRPに特徴的な薬剤耐性遺伝子について検討し、いずれの遺伝子が多剤耐性を示す指標として最も適切か検索した。 遺伝子型の相同性(Diversi Lab遺伝子解析装置使用)、メタロβラクタマーゼ(MBL)、oprD欠損の有無やアミノグルコシドアセチル化酵素の発現はPCR法またはRT-PCR法にて検出、流出ポンプ(Efflux pumps)発現は、mRNAを定量的real time PCR法にて調べた。また、multilocus sequence typing(MLST)法によりアリルプロファイリングでsequence type (ST)を同定・分類した。これまでの研究成果から、MBL、oprD欠損、アミノグルコシドアセチル化酵素、mexCDは、全ての緑膿菌耐性化に共通する項目ではないことが確認されたため、H24年度はその他の流出ポンプの発現を中心に解析した。これらの発現について、菌の遺伝子相同性、ST、抗菌薬感受性を含め総合的に検討した。 Enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA法)は、緑膿菌約1000個以上では良好な結果を得られるが、それより低い濃度での精度の確立が困難であった。確実に陽性となる濃度を得るためにはコロニー分離より約12時間が必要であったため、迅速診断検査とは言い難いことが判明した。 MDRP共通耐性遺伝子として、mexEFのみならずmexXYに注目した。本遺伝子の検出とモニタリングは、多剤耐性化の動向の把握および感染制御の指標として有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗菌薬感受性緑膿菌および耐性~多剤耐性緑膿菌(MDRP)の臨床分離株計97株で、抗菌薬耐性と耐性遺伝子の発現について、流出ポンプ(Efflux pumps)関連遺伝子を中心に、既存の遺伝子発現の状態を臨床分離株を用いて詳細に調査したところ、簡易迅速診断検査に用いるためにより適した耐性遺伝子の有力な候補がみつかった。薬剤排出ポンプ機能の亢進に関与するMexEF-OprNとMexXY-OprM同時発現臨床菌株を用いて、それぞれのプロモーター遺伝子に蛍光タンパク質遺伝子(GFPまたはDsRed)をエレクトロポレーションにて導入し、各遺伝子発現の有無を可視的に観察するシステムの開発を試みた。しかしながら、 MDRPは、生育が比較的遅く、同様にエレクトロポレーション後の増菌にも時間を要した。また、エレクトロポレーションの手技は複雑で、日常の検査室業務としては汎用性がない。簡便かつ迅速なMDRPの診断を目標にELISA法による耐性遺伝子の発現検出法の開発を新たに試みた。非選択性液体培地を用いて菌の成長を促し、薬剤排出ポンプ機能の亢進に関与するMexEF-OprNに対して、遺伝子産物の特定部位に相同なペプチドを作製、これを抗原としてポリクローナル抗体(ウサギ)を作製した。ポリクローナル抗体は多剤耐性緑膿菌の耐性遺伝子を抗原として認識することがウエスタンブロット法で確認されたが、103個未満での陽性率が安定せず、しかも安定した結果を得るためには、結果報告までに12時間以上を要することが判明した。 そこで、現在より簡便な核酸増幅法を模索し、MDRPの耐性遺伝子を検出する方法を検討している。今後、一般的な検査室レベルでのMDRPの迅速な検出が可能となるような核酸増幅法の導入を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、緑膿菌臨床分離株における抗菌薬耐性と耐性遺伝子の発現についての調査が概ね終了するため、それらのデータを統計学的手法も交えて解析する。解析が進んだことにより、今まで最適と考えられていたmexEFの他、mexXYがさらにMDRP検出のための検査に適する耐性遺伝子であることがわかった。 そこで、H25年度は、3年間の集大成として、ELISA法よりも高感度の核酸増幅法を用いて、これらの耐性遺伝子検出条件を詳細に検討する。環境や患者から採取した検体を直接検出でき、かつ、煩雑な手技がなく、比較的迅速に耐性遺伝子を検出できるような方法を検討する。様々な条件設定下で、耐性遺伝子発現の検出限界を検討する。条件設定がなされた後、より短時間で検出できるようさらなる工夫を施す。 また、耐性遺伝子の検出と並行して、耐性進展メカニズムにおける菌体発育環境条件に基づく、緑膿菌の耐性化を検討し、MDRPへの進展を回避するための手法を検討する。 実際の重症熱傷症例で耐性緑膿菌が出現した際、本システムを用いた耐性進展化のモニタリングが可能か検討する。同時に菌体発育環境の変化による耐性進展化の回避が可能か検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Clinical and pathological features of B-cell non-Hodgkin lymphomas lacking the surface expression of immunoglobulin light chains.2012
Author(s)
Matsushita H, Nakamura N, Tanaka Y, Ohgiya D, Tanaka Y, Damdinsuren A, Asai S, Yabe M, Kawada H, Ogawa Y, Ando K, Miyachi H.
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Journal Title
Clin Chem Lab Med
Volume: 50
Pages: 1665-1670
DOI
Peer Reviewed
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