2011 Fiscal Year Research-status Report
エクソソーム由来microRNA解析による胃癌転移予測マーカーの開発
Project/Area Number |
23590703
|
Research Institution | Shizuoka Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
大島 啓一 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (10399587)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺島 雅典 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (40197794)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | エクソソーム / microRNA / 腫瘍マーカー |
Research Abstract |
血中腫瘍マーカーの開発はその簡便性や低浸潤性により、癌の診断学に対して多大な期待を示す。循環血液や尿等の体液中における発見により、microRNAは体液中の腫瘍マーカーあるいはバイオマーカーとなる可能性がある。microRNAが体液中で安定に検出される理由は、細胞から分泌されるエクソソームに封入されることで、酵素からの分解を受けないためと言われる。 エクソソームは培養細胞の上清液にも存在することが知られ、申請者らは培養細胞のセクレトーム解析を基盤手法として上清液中のmicroRNAを網羅的解析した結果、胃癌高転移細胞株AZ-P7aにおいてlet-7 microRNA familyがエクソソームを介して特異的に細胞外に放出することを見出した。さらに細胞内外画分では異なるmicroRNAプロファイリングを認めたことは、組織分析によりマーカー候補となったmicroRNAが必ずしも血清等の体液中で検出されないことを示唆した。 本研究では、こうした知見をもとに、血液中の循環microRNAを分析対象とした新しい腫瘍マーカーの開発を行うことを目的とする。具体的には、(1)let-7 microRNA familyが胃癌の転移予測マーカーとして臨床応用への可能性について検討すること、(2)マーカー候補となる他のmicroRNAを見出すこと、という2つの側面からなる。 平成23年度では、臨床検体におけるlet-7 microRNA familyレベルの検証実験に対して、所属施設の倫理審査委員会及び施設長による実施承認を得た。その後、血清検体の収集を開始し、目標症例数100に対して約50症例の検体を収集した。一方、培養細胞エクソソーム中のmicroRNAプロファイリングに対するデータマイニングの結果、スキルス胃癌細胞株に特異的なmicroRNAを見出し、スキルス胃癌マーカーへの可能性を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1)let-7 microRNA familyが胃癌の転移予測マーカーとして臨床応用への可能性について検討すること、(2)マーカー候補となる他のmicroRNAを見出すことを大きな目標に掲げ、具体的に次の3つの研究計画を平成23年度内に実施することを予定した。1)let-7 microRNA familyの臨床検体による検証実験:臨床検体を使用した当該研究を行うにあたり、必須な過程である所属施設の倫理審査委員会ならびに施設長の承認を受けた。それにより、胃癌患者に対する血清検体の収集を開始し、23年度内に約50症例の検体を収集することができた。24年度では、当初の目標症例数である100に向けて、引き続き検体の収集を行う。一方、これら収集した血清検体におけるlet-7 microRNA familyレベルのRT-PCRによる分析は、23年度内に一部の検体から開始された。2)培養細胞上清液を用いた網羅的解析とデータマイニングによる新たなマーカー候補 microRNA探索:胃癌細胞株のみならず膵臓、大腸や肺等他の臓器由来細胞株由来のエクソソーム内のmicroRNAプロファイリングとその比較を行い、新たな腫瘍マーカー候補となるmicroRNAを見出す計画をたてた。23年度は、それらのマイクロアレイ解析とデータマイニングにより、スキルス胃癌細胞株由来のエクソソームに特異的なプロファイリングを示すmicroRNA群を発見した。3)胃癌患者及び健常人血清検体を用いた網羅的解析とデータマイニングによる新たなマーカー候補microRNA探索:培養細胞ではなく、直接、臨床検体を用いた網羅的解析によるマーカー候補探索計画である。23年度内は臨床研究の承認、検体収集、ならびにlet-7 microRNA familyの一部検体の分析に時間を費やしたため、本計画は未着手であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度では、let-7 microRNA familyについて、臨床検体での検証を目的とした当該研究を行う上で必須である倫理審査委員会ならびに施設長の承認を受けた。それにより、胃癌患者に対する血清検体の収集を開始し、23年度内に約50症例の検体を収集した。24年度では、当初の目標症例数である100に向けて、引き続き検体の収集を行う。得られた血清検体から順次、試料調製と分析を開始し、これら臨床検体を用いて以下に示す3つの目標に向かう。 今後の本研究の第一目標は、let-7 microRNA familyの臨床検体での検証である。すなわち、胃癌患者の血清中またはそのエクソソーム画分中におけるlet-7 microRNA familyの存在レベルを分析する。その後、臨床データとの突合、ならびに健常人における存在量と比較検討し、let-7 microRNA familyの転移予測マーカーとしての有用性を検証する。 第二の目標は、マイクロアレイでスキルス胃癌細胞株由来のエクソソーム中で特異的な存在プロファイリングを示したmicroRNAレベルと患者血清中での検証である。すなわち、非スキルス胃癌をはじめ他の臓器由来の細胞株と比較して、スキルス胃癌特異的microRNA群について、RT-PCRによるマイクロアレイデータの検証を行う。その後、患者血清を用いた有効性の検証を行う。さらに、複数からなる候補microRNA群に対して絞り込み、すなわち限定化が可能かどうかを検討する。 第三の目標は、臨床検体を用いた網羅的解析とデータマイニングによる新たなマーカー候補microRNA探索である。本研究の基礎は、上記2つに代表されるように培養細胞株を用いた実験データである。それに加えて、胃癌患者および健常人の血清検体を直接的にマーカー探索のスクリーニング試料として用いる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度では、マイクロアレイによるmicroRNAの網羅的解析が中心であった。一方、24年度では、マイクロアレイにより抽出されたmicroRNA群の検証を行うため、実験の主体がRT-PCRに移行する。そこで、リアルタイムRT-PCRによるmicroRNA分析用試薬が経費の中心となる。その他、採血管、エクソソーム抽出用超遠心チューブ、およびRNA抽出試薬等の臨床検体の収集ならびに試料調製に関連する消耗品を申請する。 また、学会誌への論文投稿を2年目の24年度から行うことを目標とし、論文校閲費、論文掲載費および論文別刷費を申請する。加えて、国内学会における発表に対する出張費を申請する。
|
Research Products
(1 results)