2011 Fiscal Year Research-status Report
μオピオイドによる痒みの機序解明とガバペンチンの鎮痒効果
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23590711
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
今町 憲貴 島根大学, 医学部, 講師 (40325048)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ガバペンチン / 術後鎮痛 / 二次性痛覚過敏 |
Research Abstract |
ガバペンチンの鎮痛効果について、ラット術後痛モデルにおいて脊髄レベルでの経時的変化を明らかにするために、今年度はガバペンチンとNSAIDsであるジクロフェナックを用いて、薬剤投与後から7日間までの二次性痛覚過敏の抑制効果の検討をおこなった。薬剤投与3日前に全身麻酔下にラットの脊髄くも膜下腔にカテーテルを挿入した。ガバペンチン、ジクロフェナック、おのおのの混合液、対照群として生理食塩液、または、6%ブドウ糖液20μlを投与後、ラット術後痛モデルを作成した。鎮痛効果検討するための行動学的検討として、Von Frey filamentsを用いて機械的閾値を測定した。測定は薬剤投与前、術後2時間、1、3、5、7日目に行った。ラット術後痛モデルは全例、二次性痛覚過敏を生じた。低、中濃度ガバペンチン、ジクロフェナックは、対照群と比べ二次性痛覚過敏を抑制しなかった。高濃度ガバペンチンは、全測定期間、高濃度ジクロフェナックは、術後2時間、1、3日目で有意にこの痛覚過敏を抑制した。低濃度混合液は、術後2時間で、中濃度混合液は、術後2時間、1日目で有意に二次性痛覚過敏を抑制した。ラット術後痛モデルにおいて、おのおの単独では効果のないガバペンチン、ジクロフェナックの脊髄くも膜下腔への混合投与が二次性痛覚過敏を抑制することが明らかとなった。これらの結果からガバペンチンとジクロフェナックは脊髄レベルにおいて術後痛を軽減するのに重要な役割があること、また、ガバペンチンは脊髄レベルでジクロフェナックの二次性痛覚過敏抑制効果を増強することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究での結果からガバペンチンが脊髄レベルにおいて術後痛を軽減するのに重要な役割があること、また、ガバペンチンは脊髄レベルでジクロフェナックの二次性痛覚過敏抑制効果を増強することが示めされたため、この研究成果をまとめ、現在、国際誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究から脊髄くも膜下腔へのガバペンチン投与が術後痛に有効であることが明らかとなったので、今後の研究では同じく術後痛に用いられているオピオイドであるMORアゴニストとの相互作用を検討する予定である。 MORアゴニストは強力な鎮痛効果があるものの、副作用として呼吸抑制、悪心、嘔吐、痒みなどの副作用が問題となっている。ガバペンチンの全身投与はMORアゴニストによる痒みを軽減されることが知られているが、ガバペンチンの全身投与ではふらつきなどのガバペンチンそのものの副作用が問題となっている。そこで、今後の研究の推進方策としては、MORアゴニストにより生じる痒みが、少量のガバペンチンを脊髄くも膜下腔に投与することにより鎮痒効果が得られるかどうかを検討する。また、脊髄くも膜下腔ガバペンチンは単独でも鎮痛効果があるため、オピオイド拮抗薬ナロキソンとは異なり、MORアゴニストの鎮痛効果を拮抗せずに、むしろ、相加的、または、相乗的鎮痛効果があるかどうかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外での研究打ち合わせが、諸事情によりできなかったこと、一部、高額な実験動物を用いた研究を翌年度以降にすることにして、まずは、あまり費用をかけずにできる研究から開始したため、繰り越し研究費が生じた。 国内の学会などでこれまでの研究成果の発表をおこなう。また、これまでの研究成果を踏まえて、国際学会に参加し、今後の研究の方向性を調べに行く。これらの旅費に研究費を使う。実験動物、薬品、教科書などにも研究費を使用する予定である。研究成果がまとまれば、外国語論文の校閲依頼も行う予定とする。
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