2011 Fiscal Year Research-status Report
脊髄における神経障害性疼痛の発症機構の解明とその特異的治療法の開発
Project/Area Number |
23590718
|
Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
渡辺 千寿子 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (90296020)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桜田 忍 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (30075816)
溝口 広一 東北薬科大学, 薬学部, 准教授 (30360069)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 神経障害性疼痛 / 脊髄 / 疼痛伝達物質 / 受容体 / マイクロダイアリシス |
Research Abstract |
難治性疼痛である神経障害性疼痛の発現には、中枢神経系の機能変化が深く関与していることが示唆されているが、詳細な発現機構については不明な点が多く、それゆえ未だ有効な治療法が確立されていない。本研究課題では、脊髄疼痛伝達機構に焦点をあて、行動薬理学的ならびに生理学的側面の双方から解明することにより、神経障害性疼痛の発現機構を明らかにし、その有効な治療法の確立を目的としている。そこで平成23年度は、神経障害性疼痛時における脊髄疼痛伝達物質の反応性の変化について、坐骨神経部分結紮モデルであるSeltzer(PSN)モデルを用いて行動薬理学的検討を重点的に行った。その結果、Seltzerモデル作成後、von Frey Filament法により経日的に疼痛閾値の変化を観察したところ、モデル作成後3日目以降において有意な疼痛閾値の低下、すなわちアロディニアの発現が認められ、7~14日後をピークとし、約2ヶ月間に渡りアロディニアの発現が確認された。さらに、モデル作成後7日目のマウスに、通常のマウスでは疼痛関連行動を発現しない極めて低用量のカプサイシンを右後肢足蹠内へ投与したところ、有意な疼痛関連行動が発現し、この反応はカプサイシン受容体であるTRPV1受容体の拮抗薬により有意に抑制された。このことから、神経障害性疼痛下では末梢性TRPV1受容体の感受性が亢進し、疼痛関連行動の発現増加が引き起こされることが強く示唆された。これまでの報告によると、神経障害性疼痛下において中枢におけるTRPV1受容体の発現増加について報告されているが、末梢におけるTRPV1受容体の役割については明らかとなっていない。今回の結果から、中枢性および末梢性におけるTRPV1受容体の役割が解明されつつあることから、今後の研究計画に大きな意義を持つものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神経障害性疼痛下における末梢性TRPV1受容体の役割について行動薬理学的側面から検討を行った結果、神経障害性疼痛下においてTRPV1受容体の感受性が亢進することが示唆された。この結果は、神経障害性疼痛の発症機序を解明する上で極めて意義のある結果であると考えられる。しかしながら、行動薬理学的手法だけではTRPV1受容体の感受性亢進機序について詳細な検討を進めることができなかった。次年度以降は、行動薬理学的手法に加え生化学的手法ならびに分子生物学的手法を取り入れながら、さらなる検討を加えていく必要があると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、行動薬理学的手法に加え生化学的ならびに分子生物学的手法を取り入れながら、神経障害性疼痛下における脊髄疼痛伝達機構の機能的変化および脊髄疼痛伝達物質の遊離量の変化について検討を行う。脊髄疼痛伝達物質(グルタミン酸、Substnace P、Hemokinin-1)の発現量は、RT-PCR法を用いて定量化を行い、脊髄疼痛伝達物質の作用する受容体(NMDA受容体、NK1受容体)の発現量は、RT-PCR法およびウェスタンブロット法を用いて受容体タンパク質量を定量化することにより測定する。一方、脊髄疼痛伝達物質ならびにその受容体の分布変動は、免疫学的組織化学染色法により検討を行う。また、神経障害性疼痛下における脊髄疼痛伝達物質の遊離量の変化については、マウス脊髄マイクロダイアリシス法を用いて検討を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降は、主に生化学的ならびに分子生物学的手法を用いて検討を進めて行くことから、実験動物(マウス)、各種試薬、各種抗体、RNAキット、RT-PCRキット、ウェスタンブロット検出試薬、HPLC用カラム等に研究費を使用する予定である。
|