2012 Fiscal Year Research-status Report
ノシスタチン結合タンパク質標的分子TRPV6の品質管理に基づく疼痛制御の解明
Project/Area Number |
23590726
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
芦高 恵美子 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50291802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 誠二 関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
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Keywords | ノシスタチン / 痛覚 / ノシスタチン結合タンパク質 / TRPV6 / HSP60 |
Research Abstract |
申請者らは、痛覚制御ペプチドとしてノシスタチンを発見し、その結合分子としてノシスタチン結合タンパク質(Nocistatin binding protein 1, NSP1)を同定した。NSP1遺伝子欠損マウスの作製により、NSP1の疼痛制御への関与を認めた。一方、NSP1はTransient receptor potential V6 (TRPV6)と複合体を形成し、その細胞内へのCa2+透過性を抑制した。さらに、NSP1結合分子として分子シャペロンHSP60を同定した。本研究では、TRPV6、NSP1、HSP60 による機能的相互作用、TRPV6タンパク質の品質管理、疼痛制御への関与に焦点をあて、膜タンパク質の品質管理に基づく疼痛制御機構を解明する。本年度は、脊髄や脳の疼痛伝導路に発現する中枢型TRPV6の解析およびTRPV6とNSP1の相互作用とTRPV6の細胞膜への移行に焦点を絞り解析を行い以下の知見を得た。 1.前年度、腎臓や小腸に発現する末梢型TRPV6の他に、脳や脊髄に特異的に発現するTRPV6スプライスバリアント(中枢型TRPV6)の存在を明らかにした。今年度、中枢型TRPV6の全長cDNAの解析により、少なくとも4種類のスプライスバリアントを見いだした。末梢型TRPV6は6回膜貫通領域を有するのに対し、これらのスプライスバリアントはC末端が欠損し、1番目から4番目の膜貫通領域しかもたず、チャネル構造を保持していなかった。 2.TRPV6の細胞膜への移行を細胞表面ビオチン標識法によって検討した結果、NSP1共発現細胞においてTRPV6の膜移行は抑制された。また、Cos7細胞にて部位欠損型のTRPV6とNSP1変異体よる相互作用を免疫沈降で検討した結果、TRPV6のN末端細胞内領域とNSP1のN末端領域が相互作用を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1) NSP1の膜型コシャペロンとしての機能、(2) TRPV6の疼痛への関与、(3) NSP1-HSP60の相互作用によるTRPV6の品質管理について実験を計画していた。(1)に関しては、遅れているが、(2)には新しい展開があり、(3)に関してはおおむね順調に進展している。以下に、それぞれの達成度を記す。 (1)天然構造のみで蛍光を発する緑色蛍光タンパク質GFPを酸変性したのち希釈し、NSP1およびHSP60タンパク質を添加することによりフォールディングに伴うGFPの発光を蛍光分光光度計で測定する予定であった。しかし、NSP1が大腸菌でのタンパク質発現系において凝集体となったため、可溶化の条件およびリフォールディングの条件を検討したが、NSP1は量的および質的にGFPを用いたシャペロン活性測定に用いるには不十分であった。 (2)疼痛制御にかかわる脳、脊髄には中枢型TRPV6が特異的に発現していることから、マウス脊髄cDNAライブラリーより中枢型TRPV6の全長cDNAの解析を行った。4種類のcDNAを単離し、DNA配列の決定、構造解析を行った。また、TRPV6の部位特異的抗体を作製し、中枢型TRPV6のタンパク質の発現を確認している。 (3)細胞表面標識ビオチン法によるTRPV6の膜移行の検出系を確立し、NSP1によるTRPV6の膜移行制御について明らかにした。また、部位欠損型変異体を作製しNSP1とTRPV6の相互作用に必要なドメインを決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、細胞培養発現系におけるTRPV6の品質管理に対するNSP1とHSP60の相互作用による解析と中枢神経系におけるTRPV6の機能解析に焦点を絞る。 1.NSP1-HSP60の相互作用によるTRPV6の品質管理:細胞膜でCa2+透過性を有するTRPV6を成熟型とし、TRPV6の多量体形成、細胞膜への移行とCa2+透過性を測定することによりTRPV6-NSP1-HSP60の相互作用によるTRPV6のタンパク質の品質管理について解析する。 2.NSP1会合分子としてのTRPVとHSPの特異性と多様性:TRPVやHSPには多くのファミリー分子が存在することより、NSP1との会合の特異性と多様性について明らかにする。NSP1とTRPVファミリーとの相互作用を、細胞発現系を用いた免疫沈降実験にて解析する。また、相互作用が認められたTRPVのCa2+透過性に対するNSP1やHSP60の影響について検討する。 3.中枢神経系におけるTRPV6の機能解析:神経因性疼痛や炎症性疼痛に伴い発現変化を示した中枢型TRPV6とNSP1やHSP60との相互作用について発現細胞系や疼痛モデルマウスの脊髄や脳において解析を行う。TRPV6のアンチセンスRNAの投与によりTRPV6の疼痛制御への関与を明らかにする。また、NSP1の結合分子であるノシスタチンや分子シャペロンHSP60阻害剤をマウス疼痛モデルに投与し疼痛評価を行い、疼痛発症や持続における役割について解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.消耗品(一般試薬、細胞培養試薬・器具)70万円:TRPV6、NSP1、HSP60やファミリー分子の共発現細胞系において、Blue-native PAGEによる多量体形成、細胞表面ビオチン標識法による膜移行や、電気生理学的解析によるCa2+透過性を解析する。細胞培養の培地や培養プラスチック器具、遺伝子導入試薬、Blue-native PAGEゲル、ビオチン標識試薬などを購入する。 2.消耗品(実験動物)25万円:疼痛モデルマウスの組織における免疫沈降実験や、アンチセンスRNAや薬剤投与による疼痛評価を行うため、50匹のマウスを購入する。 3.旅費(研究打ち合わせ、研究成果発表)25万円:連携研究者との研究打ち合わせ(1回)や、学会発表(国内1回:日本生化学会 横浜 、国際会議1回:北米神経科学会 米国)を予定している。
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