2012 Fiscal Year Research-status Report
中枢性神経障害痛モデル動物の開発と疼痛発現機序の解明
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23590731
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
本多 健治 福岡大学, 薬学部, 助教 (60140761)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 亮 福岡大学, 薬学部, 講師 (80122696)
高野 行夫 福岡大学, 薬学部, 教授 (50113246)
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Keywords | 中枢性疼痛 / GABA作動性神経 / GABA受容体 / グルタミン酸 / NMDA受容体 / コリン作動性神経 / ムスカリン受容体 / ケモカイン |
Research Abstract |
本年度は、主に薬物投与による中枢性疼痛モデルの確立と炎症性ケモカインの関与について検討した。疼痛抑制に関与する脳内GAGA作動性神経路の遮断が疼痛発現を誘導すると考え、GABA受容体遮断薬の脳室内投与を行った。その結果、脳内GABA受容体の遮断が機械刺激性アロデニアを誘導した。そのアロデニアは、GABA-B受容体遮断薬で強く現れた。さらに、脳内GABA受容体遮断による中枢性疼痛はグルタミン酸NMDA受容体遮断薬によって緩和された。これらの結果から、少なくとも脳内GABA受容体遮断による中枢性疼痛発現にはグルタミン酸遊離を介したNMDA受容体活性化の関与が示唆された(投稿準備中)。一方、すでに行動実験で脊髄投与した炎症性ケモカインCCL1がグルタミン酸NMDA受容体を介し疼痛に関与することを示唆したが、新たに電気生理実験(生理研との共同実験)でそのことを明確にした(Cell Death & Disease, in press)。 以上の結果は、炎症性ケモカインが脳出血より活性化されたグリア細胞から遊離されることは知られていることから、脳出血による中枢性疼痛の仕組みを考える上で重要な情報と意義を提供する。すなわち、①脳出血により活性化されたグリア細胞が炎症性ケモカインを遊離することでNMDA受容体を活性化し痛みを発現する、あるいは②脳出血により疼痛抑制に関与するGABA作動性神経活性(GABA作動性神経または受容体の損傷)低下がその痛み発現に寄与すると考えられる。一方、脳内ムスカリン受容体刺激が脳内疼痛促進経路を抑制すること(Brain Res. 投稿中)やアセチルコリン分解酵素阻害剤の全身投与が中枢性ムスカリン受容体を介し疼痛緩和に有効であることを明確にした(86回日本薬理学会総会報告)。これら結果は、ムスカリン作動薬が新たな鎮痛薬として期待できる可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
目標であるヒト中枢性疼痛モデルとしての脳出血モデルの確立と評価は再現性が困難であった。その理由には、出血を誘導するコラゲナーゼ酵素の作用が不安定で、一定の局所に投与しても出血の範囲が一定でないことが考えられた。そこで、技術的に容易であり出血に依存しない、薬物(GABA受容体遮断薬)の脳室内投与による中枢性疼痛モデルの作成を試みた。その結果、再現性がよい中枢性疼痛モデルを確立することが出来た。さらに、その疼痛発現にはグルタミン酸NMDA受容体が関与することも明らかになった。一方、共同実験であるが、脳出血より活性化されたグリア細胞から遊離されると推測される炎症性ケモカインCCL1が脊髄でグルタミン酸を遊離しNMDA受容体を介して機械刺激性アロデニア発現に関与することを電気生理学実験で明確にした(Cell Death & Disease, in press)。このように、炎症性ケモカインと抑制性GABA受容体遮断がグルタミン酸NMDA受容体興奮を介して疼痛発現に関与することを明らかにしたことは、本研究目的である炎症性ケモカインの中枢性疼痛への関与を解明するの上で貴重な情報を得ることができ、今後の研究に方向性を示してくれたことは評価できる。さらに、動物実験で神経型アセチルコリン分解阻害薬が抗がん剤や糖尿病による痛みを中枢性ムスカリン受容体を介して緩和することも明らかにした(86回日本薬理学会総会発表)。この結果は、脊髄あるいは脳内ムスカリン受容体の活性化が疼痛抑制に関与することを示唆するとともに、アセチルコリン受容体作動薬が、新たな鎮痛薬となり得ることを示唆する。このことは、研究課題の一つである痛み伝達へのコリン作動神経の関与を明確にした点とアセチルコリン受容体作動薬の痛み治療への可能性を示した点で評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
①中枢性疼痛モデルとその疼痛の仕組み: 脳出血モデルは、局所部位での出血範囲が一定でなく再現性に問題がある。そこで、中枢性疼痛の仕組みの解明するためには、再現性が良いGABA受容体遮断薬脳室内薬投与と脳出血モデルに類似すると考えられるカイニン酸による視床部位破壊による中枢性疼痛モデルを用い研究を進めていく。また、H24年度で中枢性疼痛の発現の仕組みにGABA受容体、炎症性ケモカインCCL1およびグルタミン酸作動性神経の関与が明らかになってきたので、炎症性ケモカインCCL1やグルタミン酸作動性神経が脳内疼痛伝達の中の前頭部帯状回、視床、中脳中心灰白質のいずれの部位で関与するかを調べるために、ケモカインCCL1、グルタミン酸受容体拮抗薬をそれらの部位に投与し疼痛実験の評価法で明らかにする。 ②疼痛発現に対するコリン作動神経の役割と鎮痛薬としてのアセチルコリン受容体作動薬の可能性: ①で作製した中枢性モデル動物による痛み発現へのコリン作動性神経とGABA作動性神経の関連性を調べるためにアセチルコリン受容体(ムスカリンおよびニコチン受容体)とGABA作動性神経の拮抗薬と作動薬の影響を疼痛行動で評価し検討する。薬物は主に前頭部帯状回、視床、中脳中心灰白質に局所投与する。さらに、疼痛評価と行動薬理学的実験でコリン作動性神経との関連性が明らかにされたら、疼痛発現に伴う脳内ムスカリン受容体,ニコチン受容体、GABA受容体量の変化を、特異抗体を用いたWestern blot法と免疫組織化学的手法で検討する。また、H24年度での研究成果で認知症薬として使用されているアセルコリン分解阻害剤ドネペジルとガランタミンの全身投与が末梢性神経障害疼痛に有効であることから、①で作製した中枢性疼痛にも有効であるかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は最終年度で使用予算が少ない。研究費の多くは実験動物費用を主とした消耗費に使用する。しかし、次年度は最終年度であることから本課題の研究成果成をまとめて論文作成・投稿および学会発表(国際学会発表)したい。そのような背景から、本年度の予算の残高を次年度使用額として計上した。
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[Journal Article] CCL-1 in the spinal cord contributes to neuropathic pain induced by nerve injury.2013
Author(s)
Akimoto, N., Honda, K., Uta, D., Beppu, K., Ushijima, Y., Matsuzaki, Y., Nakashima, S., Kido, M.A., Imoto, K., Takano, Y., Noda, M.,
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Journal Title
Cell Death & Disease
Volume: 4: e679;
Pages: 1038/2013.198
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] The relationship between CCL-1 and neuron/glia in the neuropathic pain model.2012
Author(s)
Akimoto, N., Honda, K., Uta, D., Furue, H., Imoto, K., Takano, Y., Noda, M.
Organizer
42nd Annual Meeting of Neuroscience
Place of Presentation
New Oleans, USA
Year and Date
20121013-20121017
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