2011 Fiscal Year Research-status Report
市中感染型MRSA新興クローンの同定と伝播動態に関する分子疫学的解析
Project/Area Number |
23590746
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲見 紋子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10363699)
漆原 範子 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80396308)
ゴッシュ ソウビック 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30597175)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | MRSA / 市中感染 / PVL / USA300 / 国際研究者交流 / ミャンマー |
Research Abstract |
本研究の目的は、わが国において分布する市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA)の分子疫学的・遺伝学的特徴を解析し、欧米やアジアに特徴的なクローンとの関連を明らかにすることである。今年度は国内2ヵ所の機関(札幌医科大学附属病院、札幌臨床検査センター)より得られた最近のMRSA臨床分離株をおもな研究対象とした。札幌医科大学附属病院から得られたのはMRSA601株で多くが入院患者由来株であった。CA-MRSAに特徴的なIVまたはV型SCCmecを有する株は26株(4.3%)、PVL遺伝子が検出されたのは3株(0.5%)、米国で優勢なCA-MRSAであるUSA300クローンに特徴的なACME(アルギニン代謝系可動性遺伝子要素)を有する株が9株(1.5%)検出された。PVL陽性の3株はST8に属しIV型SCCmecを保有、うち2株はACMEも合わせ持っており、USA300クローンに酷似していた。それらPVL-ACME保有MRSA株は比較的重篤な膿瘍から分離されており、いずれの患者も最近の海外渡航歴はなかった。このことは、USA300クローンが日本国内において市中に分布していることを示唆する。米国からの輸入例およびその接触者における国内でのUSA300クローン検出は最近数件報告されているが、市中からの散発例における分離は今回の我々の発見が初めてである。札幌臨床検査センターからは400株を越える外来患者由来のMRSA臨床分離株が収集され、現在その性状を解析中である。またアジアにおけるCA-MRSA分布の調査として、ミャンマー国立保健研究所との共同でミャンマーでのPVL陽性および陰性黄色ブドウ球菌の病原因子の解析を行ない興味深い知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本国内における最近の臨床分離株は2ヵ所の協力機関より集められ、それぞれ600および400株以上のMRSAを収集、保存した。両者とも解析が進行中であり、一方(札幌医科大学附属病院分離株)については解析を終了した。海外との共同研究も進めており、ミャンマーでの分離株については一部を詳細に解析し、すでに論文発表した。バングラデシュの分離株も解析が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
日本国内分離株の解析のうち、札幌医大分離株の解析結果は今年度中に論文発表する。臨床検査センター分離株の解析を進め、特にACMEの構造および配列についての解析を行う。ミャンマーでの病院および市中分離株についてMRSA、PVLの検出、遺伝子型別を行なう。バングラデシュの分離株については病原因子の分布とその性状に関する解析を中心に行う。またネパールとの共同研究の実施が見込まれ、おもに病院分離株を対象にMRSAの検出、型別から研究を開始する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は研究開始の年に当たっていたため検体収集の準備などに時間を要し、菌株の解析が予定より少し遅れることとなった。そのため研究費に残余が生じたが、その部分は次年度の研究費とあわせ、次年度における菌株の解析に用いる予定である。物品費は、各種遺伝子の検出に必要なPCRのための酵素、プライマーおよび試薬、遺伝子配列決定に必要なシークエンスキット、菌株を培養する培地、菌株保存バイアルなどに用いる。旅費は国際学会参加費、海外の研究者(ミャンマー)の招聘に用いる予定である。その他の費用は、文献複写代、検体輸送費用などにあてる。
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