2012 Fiscal Year Research-status Report
市中感染型MRSA新興クローンの同定と伝播動態に関する分子疫学的解析
Project/Area Number |
23590746
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲見 紋子 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10363699)
漆原 範子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80396308)
ゴッシュ ソウビック 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30597175)
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Keywords | MRSA / 市中感染 / PVL / USA300 / 国際研究者交流 / バングラデシュ / ミャンマー |
Research Abstract |
本研究の目的は、わが国において分布する市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA)の分子疫学的・遺伝学的特徴を解析し、欧米やアジアに特徴的なクローンとの関連を明らかにすることである。今年度は国内2ヵ所の研究協力機関のうち、札幌臨床検査センターにおける分離株を主として解析した。研究対象となった菌株は2011年の1年間に臨床材料より分離されたMRSA422株であった。これらはすべて北海道内の医療機関において、外来患者より分離されたものであり、市中感染に由来する菌株が多く含まれると考えられる。SCCmec型ではII型が最多(74%)で、IV型(12%)、I型(6%)、V型(5%)の順に多かった。コアグラーゼ型の頻度はIIa型(69%)、IIIa型(14%)、Ia型(7%)であった。PVL(Panton Valentine leukocidin)遺伝子陽性株は8株で、うち5株がST8に属していた。アルギニン可動性遺伝子要素(ACME)は20株に検出され、そのうち5株はPVL陽性のST8株、残りの15株はST5またはST764に属していた。PVL、ACME両陽性のST8に属する5株は、他の遺伝子型や特徴とあわせ、米国を中心に分布を拡大しているUSA300クローンであると考えられた。一方ACME陽性ST5(ST764)株は日本で優勢な医療関連MRSA(HA-MRSA)と遺伝的に近く、HA-MRSAがACMEを獲得したものである可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本国内における最近のMRSAを分子疫学的に解析するため、当初予定していた2ヵ所の機関(札幌医科大学病院、札幌臨床検査センター)から臨床分離株各々約600株、400株の分与を受け、昨年度および今年度でそれらをすべて解析することができた。前者についての解析結果はすでに論文報告を終えており、後者に関する解析結果については現在論文の作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で15株検出されたACME陽性ST5(ST764)MRSAは世界的に稀であるが、ST764のMRSAは日本における新興型の市中感染型MRSA(CA-MRSA)としても報告されており、わが国特有のMRSAクローンとして今後の動向に注視してゆく必要がある。従って今後の日本国内での調査は、ACME陽性ST5(ST764)MRSAの検出を中心に取り組むこととし、札幌臨床検査センターから菌株の収集を開始する予定である。一方、アジアのCA-MRSAの調査は、ミャンマー、バングラデシュで行なわれているほか、ネパールでも協力が得られ菌株の収集が進んでいる。今後はそれらの菌株について、遺伝子型等、分子疫学的性状を解析することを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費は収集した菌株の解析に用いることとし、各種遺伝子検出のPCRのための酵素、プライマー、試薬、菌株を培養するための培地に用いる。次年度は本研究費の最終年度にあたり、これまでの研究成果を横浜で開かれる国際化学療法学会でも発表する予定であり、私のほかに大学院生、海外共同研究者1名(キューバ人)もそれぞれ研究発表を行なう。そのための旅費としても本研究費を使用する。海外共同研究者は本研究課題を含め、我々との共同研究を幾つも進めてきた経緯があり、今回短期間招聘してCA-MRSAの実験解析を集中的に行なわせ、その後に国際学会に参加し、研究発表を行なわせる予定である。
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Research Products
(4 results)