2013 Fiscal Year Annual Research Report
分子疫学における環境発がん物質曝露および健康影響評価法の開発
Project/Area Number |
23590754
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
山野 優子 昭和大学, 医学部, 准教授 (30167580)
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Keywords | 環境疫学 / 環境発がん物質 / 生物学的モニタリング / 多環芳香族炭化水素類 |
Research Abstract |
環境化学物質による発がんは、予防医学の重要なターゲットの一つであり、有効なバイオマーカーの開発が急務である。そこで、特に多種類の発がん物質に曝露されている職域を対象とし、曝露の程度と複数の曝露関連因子と思われる要因との関係を網羅的に解析しマーカーを抽出することで、発がんとの関連性の基礎データを示すことを目的とした。今回対象としたのは製鉄所作業者であり、この作業者は多くの発がん性を示す多環芳香族炭化水素類(以下、PAHs)に長期間高濃度に曝露されている。 我々は、すでにこの作業者からサンプリングした尿試料について、複数のPAHs代謝物の分析を実施し、いくつかの個人曝露とPAHs代謝物との関連を報告してきた。しかし、分析したサンプルで未知のPAHs代謝物と思われるピークが5つ検出され、それらが高濃度である可能性もあるので定性を開始した。 その結果、未知物質が1-ヒドロキシフェナンスレン、2-ヒドロキシフェナンスレンであることが明らかとなった。他の3ピークは解明できなかった。そこで、分析し得た尿中11代謝物について、どの代謝物が最もPAHsの発がん性を反映した曝露マーカーであるかを検討した。 まず、15種のPAHs個人曝露濃度の各々に、 米国EPAが示しているBaP換算係数を乗じてその総和を“Σ発がん強度PAHs”とし、11種の尿中代謝物との関係をみた。その結果、最もよい正の相関関係を示したのが1-Hydroxypyreneであった(r=0.630, p<0.01)。15種のPAHs個人曝露濃度の総和と尿中代謝物の関係では、1-Hydroxynaphthaleneが最もよく相関しており曝露のマーカーとなりうるという結果を得ていたが、発がん強度を考慮した結果、1-Hydroxypyreneが発がん性を反映した包括的な曝露のバイオマーカーとなりうることを明らかにした。
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Research Products
(4 results)