2011 Fiscal Year Research-status Report
新奇アジュバントを用いたCTL誘導性ウエストナイルウイルスワクチンの開発
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23590761
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
正木 秀幸 近畿大学, 医学部, 講師 (90247982)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | ウエストナイルウイルス / E蛋白質 / 組換え蛋白 / 成分ワクチン / cross-presentation / CTL / 中和抗体 / 感染防護 |
Research Abstract |
昆虫細胞発現系により発現させた組換えウエストナイルウイルスE(WNVE)蛋白質を用い、中和抗体のみならずcross-presentationによりCTLも誘導する組換え成分ワクチンの基礎的研究を行うために、本年度においては主に以下の3点を行った。1.組換えWNVE蛋白質精製法の効率化 Drosophila発現系およびバキュロウイルス発現系で発現させる組換えWNVE蛋白は共にHis tagを有しているため、Niキレートクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、引き続いてゲル濾過を用いた従来法により精製は可能であるが、各段階におけるロスの減少および精製の効率化をはかるために、抗フラビウイルスモノクローナル抗体4G2を用いた免疫吸着体を作成し、Drosophila発現系により発現させた組換えWNVE蛋白の精製を試みた。しかしながら、組換えWNVE蛋白の免疫吸着体に対する親和性および抗体の漏出が予想以上に強いため、従来法に比べ期待した程の効率化は得られなかった。一方、各段階における脱塩カラムを、HiPrep 26/10 Desaltingに変更することにより、ロスの減少と精製の効率化が得られた。バキュロウイルス発現系による組換えWNVE蛋白の精製については、30%sucrose上にて14,000g,180分の超遠心により、バキュロウイルスが除去できることを確認し、また発現時のMOIを1から10に上げることにより発現量の増強を図った。2.コントロール蛋白の精製 組換えWNVE蛋白の対照として用いるために、WNVE部分をGFPに入れ替えた組換え蛋白を作成し、Niキレートクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーにより精製を行った。3.EL-4/WNVEのクローニング CTLの標的細胞として用いるため、WNVE遺伝子導入EL-4細胞のクローニングを限界希釈法により行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
9月から1月にかけての予定外の学生教育担当の負担(1学年の学外施設実習および医学概論II)、および研究協力者の退職決定による、研究遂行のために借用していた研究施設・機器の撤収に伴う研究の一時中断、さらには作成した免疫吸着体が想定外の高親和性を示したことによる精製条件検討の手間取りなどによる。これらはいずれも、研究計画当初には想定外であった。
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Strategy for Future Research Activity |
組換えWNVE蛋白を用いて以下の6点について検討を行う。1.γ-PGA nano particleの作製と免疫 精製した組換えWNVE蛋白をcross-presentationを誘導するアジュバントであるγ-polygluthamic acid(γ-PGA)でencapsulateすることにより、組換えWNVE蛋白質を含んだnano particleを作製する。作成したnano particleをC57/BL6マウスに免疫し、経時的に血清と脾細胞を採取する。2.液性免疫誘導の検討 血清については、ELISA法により抗WNVE抗体の誘導やその抗体価を測定する。中和抗体価は、Vero細胞を用いたプラーク減少法により測定する。3.細胞性免疫誘導の検討 脾細胞については、組換えWNVE蛋白に対する特異的増殖反応やIFN-γ等のサイトカイン産生により細胞性免疫反応の誘導を評価する。さらに、脾細胞をCD4T細胞とCD8T細胞に精製し、それぞれについて同様の評価を行う。4.WNVE蛋白特異的CD8T細胞のエピトープマッピング CD8T細胞については、WNVE蛋白質全長にわたるoverlappingペプチドlibraryを作成し、それぞれに対する特異的サイトカイン産生をELISPOT法で測定することによりエピトープマッピングを行う。5.細胞傷害活性およびtetramerアッセイ 上記により決定されたエピトープペプチドを用い、nano particle免疫によるtetramer結合性CD8T細胞の誘導や、エピトープペプチドパルスやWNVE遺伝子導入EL-4細胞に対する細胞傷害性CD8T細胞の誘導を検討する。6.ワクチン効果の検討 nano particleで免疫されたマウスに、致死量のWNVを接種して、morbidityやsurvivalをモニターすることによりワクチン効果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の支払請求額600,000円の内、本年度内に退職した研究協力者から借用していた機器で継続使用が不可能になった物の同等品などの購入により、12月時点で実支出累計額599,627円に達してしまい、残額373円は単独で使用するには半端な金額であり、基金助成金であることを考案すれば次年度に持越しが可能で、その方が有効活用できると考えたため、残額373円は次年度使用額とした。次年度は、(1)γ-PGA nano particleの作製と免疫、(2)液性免疫誘導の検討、(3)細胞性免疫誘導の検討、および(4)WNVE蛋白特異的CD8T細胞のエピトープマッピングを計画している。そのため次年度持越残額と合わせて、(1)については、組換えWNVE蛋白質大量発現用の大腸菌・High Five細胞・S2細胞用の培地・培養用器具の、組換えWNV E蛋白γ-PGA nano particleをC57BL/6マウスに免疫して(2)と(3)を行うために、マウスとその飼料の、免疫マウスより血清を分離して(2)を行うために、ELISA用試薬・プレート・キットの、脾細胞を採取して(3)を行うために、マウスリンパ球用の培地・培養用器具、増殖反応測定用のRI(3H-チミジン)やサイトカイン測定用のELISA用試薬・キットの、脾細胞をCD4T細胞とCD8T細胞とに分けて解析するためにMACS CD4T cell分離キット・CD8T cell分離キットの、さらに(4)を行うためにELISPOTアナライザー、合成ペプチド(overlappingペプチドlibrary)、マウス用ELISPOTキット等の購入への使用を計画している。
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