2012 Fiscal Year Research-status Report
新奇アジュバントを用いたCTL誘導性ウエストナイルウイルスワクチンの開発
Project/Area Number |
23590761
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
正木 秀幸 近畿大学, 医学部, 講師 (90247982)
|
Keywords | ウエストナイルウイルス / E蛋白質 / 組換え蛋白 / 成分ワクチン / cross-presentation / CTL / 中和抗体 / 感染防御 |
Research Abstract |
昆虫細胞発現系により発現させた組換えウエストナイルウイルスE(WNVE)蛋白質を用いる、中和抗体のみならずcross-presentationによりCTLも誘導する組換え成分ワクチンの基礎的研究を行うために、本年度においては主に以下の3点を行った。 1.組換えWNVE蛋白質精製法の効率化およびプロトコールの確立 Drosophila発現系およびバキュロウイルス発現系で発現させる組換えWNVE蛋白は共にHis tagを有しているため、Niキレートクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびゲル濾過法により精製は可能であるが、従来のNiキレートクロマトグラフィーは、培地内に分泌させた組換え蛋白質を含む無血清培地を、そのままクロマトグラフィーにかけることが出来ずに、数100mlから数リットルにおよぶ開始サンプルの脱塩操作を要し、この段階が最大のボトルネックであった。昨年6月に新発売されたGE Healthcare社のHisTrap excelは、Niがメディアに強固に固着されており、無血清培地をそのままクロマトグラフィーにかけることが可能である。従来のNiキレートクロマトグラフィーを、これに替えることにより、著しい効率化が達成され、Drosophila発現系による組換えWNVE蛋白の精製プロトコールを確立した。 2.コントロール蛋白の精製プロトコールの確立 同様にHisTrap excelを用いることにより、WNVE部分をGFPに入れ替えた組換え蛋白の精製プロトコールを確立した。 3.BEI(binary ethylenimine)によるバキュロウイルスの不活化 バキュロウイルス発現系においては、組換え蛋白質精製前のバキュロウイルス除去もしくは不活化が必須である。BEI(0.1M)、28℃24時間の処理により、ぼぼ完全にバキュロウイルスが不活化出来ることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
組換え蛋白質の大量発現・精製の予想外の困難さ、また、研究計画当初想定外の9月から1月にかけての学生教育担当の負担(1学年の学外施設実習および医学概論II)などによる。
|
Strategy for Future Research Activity |
組換えWNVE蛋白を用いて以下の6点について検討を行う。1.γ-PGA nano particleの作製と免疫 精製した組換えWNVE蛋白をcrosspresentationを誘導するアジュバントであるγ-polygluthamic acid(γ-PGA)でencapsulateすることにより、組換えWNVE蛋白質を含んだnano particleを作製する。作成したnano particleをC57/BL6マウスに免疫し、経時的に血清と脾細胞を採取する。2.液性免疫誘導の検討 血清については、ELISA法により抗WNVE抗体の誘導やその抗体価を測定する。中和抗体価は、Vero細胞を用いたプラーク減少法により測定する。3.細胞性免疫誘導の検討 脾細胞については、組換えWNVE蛋白に対する特異的増殖反応やIFN-γ等のサイトカイン産生により細胞性免疫反応の誘導を評価する。さらに、脾細胞をCD4T細胞とCD8T細胞に精製し、それぞれについて同様の評価を行う。4.WNVE蛋白特異的CD8T細胞のエピトープマッピング CD8T細胞については、WNVE蛋白質全長にわたるoverlappingペプチドlibraryを作成し、それぞれに対する特異的サイトカイン産生をELISPOT法で測定することによりエピトープマッピングを行う。5.細胞傷害活性およびtetramerアッセイ 上記により決定されたエピトープペプチドを用い、nano particle免疫によるtetramer結合性CD8T細胞の誘導や、エピトープペプチドパルスやWNVE遺伝子導入EL-4細胞に対する細胞傷害性CD8T細胞の誘導を検討する。6.ワクチン効果の検討 nano particleで免疫されたマウスに、致死量のWNVを接種して、morbidityやsurvivalをモニターすることによりワクチン効果を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の使用額は、支払請求額2,900,000円および23年度未使用額373円を合わせて2,900,373円であったが、組換え蛋白質の大量発現・精製の予想外の困難さ等により、研究の進捗が大幅に遅れてしまい、研究計画当初に本年度に予定していた研究が出来ず、本年度に使用した培地や精製用メディアなどに支出した280,875円を除いた2,619,498円を次年度使用額とした。本年度において、組換え蛋白質の精製プロトコールがほぼ確立されたので、次年度は、遅れている研究を進捗させるために、(1)組換え蛋白質の外部受託による発現・精製を行い、さらに(2)γ-PGA nano particleの作製と免疫、(3)液性免疫誘導の検討、(4)細胞性免疫誘導の検討、および(5)WNVE蛋白特異的CD8T細胞のエピトープマッピングを計画している。そのため次年度持越残額と合わせて、(1)組換え蛋白質の発現・精製の外部受託費への支出を、さらに(2)については、組換えWNV E蛋白γ-PGA nano particleをC57BL/6マウスに免疫して(3)と(4)を行うために、マウスとその飼料の、免疫マウスより血清を分離して(3)を行うために、ELISA用試薬・プレート・キットの、脾細胞を採取して(4)を行うために、マウスリンパ球用の培地・培養用器具、増殖反応測定用のRI(3H-チミジン)やサイトカイン測定用のELISA用試薬・キットの、脾細胞をCD4T細胞とCD8T細胞とに分けて解析するためにMACS CD4T cell分離キット・CD8T cell分離キットの、さらに(5)を行うために、合成ペプチド(overlappingペプチドlibrary)、マウス用ELISPOTキットなどの購入費用、およびELISPOT解析の外部委託費への使用を計画している。
|