2013 Fiscal Year Research-status Report
新奇アジュバントを用いたCTL誘導性ウエストナイルウイルスワクチンの開発
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23590761
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
正木 秀幸 近畿大学, 医学部, 講師 (90247982)
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Keywords | ウエストナイルウイルス / E蛋白質 / 組換え蛋白 / 成分ワクチン / cross-presentation / CTL / 中和抗体 / 感染防御 |
Research Abstract |
昆虫細胞発現系により発現させた組換えウエストナイルウイルスE(WNVE)蛋白質を用いた、中和抗体のみならずCTLも誘導する組換え成分ワクチンの基礎的研究を行うために、本年度は主に以下の2点を行った。 1.組換えWNVE蛋白及び対照蛋白の大量精製と抗原蛋白内包γポリグルタミン酸(γ-PGA)ナノ粒子の作成 Drosophila発現系により無血清培地中に分泌させた組換えWNVE蛋白質及び対照蛋白質(組換えWNVE蛋白の同一frameにGFPを組み換えたもの)を、HisTrap excelを用いたNiキレートクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびゲル濾過法により数10 mg単位のオーダーで精製し、cross-presentation系を惹起することによりCTLを誘導する両親媒性アジュバントであるγ-PGAで内包させた抗原蛋白内包γ-PGAナノ粒子を作成して、それをマウスに免疫した。 2.バキュロウイルス発現系による組換えWNVE蛋白大量精製の条件検討 Drosophila発現系により作成した組換えWNVE蛋白は、Bipシグナル配列及びV5タグを保持するため、この蛋白の免疫により誘導された免疫応答を同一蛋白を用いて測定した場合、シグナル配列もしくは/及びV5タグに対する免疫反応もかぶって測定してしまう恐れがある。よって、先に確立されたバキュロウイルス発現系による、これらのシグナル配列及びV5タグを欠く組換えWNVE蛋白の大量精製の条件検討を行った。High Five細胞にMOI1もしくは10で感染72時間から96時間後の細胞lysateへの発現が最大となること、BEI(binary ethylenimine) 30mM、28℃48時間処理により、精製前サンプルのバキュロウイルスが完全に不活化されること、蛋白質性の分解酵素阻害剤添加により組換え蛋白の分解が抑制されること、Drosophila発現系による組換え蛋白とほぼ同一手法で精製が可能なことなどが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
組換え蛋白質の大量発現(特にバキュロウイルス発現系)・精製(大腸菌によるGSTタグを保有する組換えWNVE蛋白発現系では、封入体を形成して不溶化するため、蛋白精製前に蛋白変性剤により可溶化させた後にrefoldingを試みるも、glutathioneビーズへの結合性をしばしば喪失)の予想外の困難さ、また、研究計画当初想定外の6月から1月にかけての学生教育担当の負担(1学年の病院実習および学外施設実習)などによる。
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Strategy for Future Research Activity |
近畿大学薬学部化学療法研究室に在籍している研究協力者の助力を得て、以下の6点について検討を行う。1.組換えWNVE蛋白内包γ-PGAナノ粒子による免疫 精製した組換えWNVE蛋白を内包したγ-PGAナノ粒子をC57/BL6マウスに免疫し、経時的に血清と脾細胞を採取する。2.液性免疫誘導の検討 血清については、ELISA法により抗WNVE抗体の誘導やその抗体価を測定する。中和抗体価については、国立感染症研究所ウイルス1部に在籍する研究協力者に依頼して、Vero細胞を用いたプラーク減少法により測定する。3.細胞性免疫誘導の検討 脾細胞については、組換えWNVE蛋白に対する特異的増殖反応やIFN-γ等のサイトカイン産生により細胞性免疫反応の誘導を評価する。さらに、脾細胞をCD4T細胞とCD8T細胞に精製し、それぞれについて同様の評価を行う。4.WNVE蛋白特異的CD8T細胞のエピトープマッピング CD8T細胞については、WNVE蛋白質全長にわたるoverlappingペプチドlibraryを作成し、それぞれに対する特異的サイトカイン産生をELISPOT法で測定することによりエピトープマッピングを行う。5.細胞傷害活性およびtetramerアッセイ 上記により決定されたエピトープペプチドを用い、組換えWNVE蛋白内包ナノ粒子免疫によるtetramer結合性CD8T細胞の誘導や、エピトープペプチドパルスやWNVE遺伝子導入EL-4細胞を傷害する細胞傷害性CD8T細胞の誘導を検討する。6.ワクチン効果の検討 国立感染症研究所ウイルス1部に在籍する研究協力者に依頼して、組換えWNVE蛋白内包ナノ粒子免疫マウスに、致死量のWNVを接種して、morbidityやsurvivalをモニターすることによりワクチン効果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
組換え蛋白質の大量発現・精製の予想外の困難さ等により、研究の進捗が大幅に遅れてしまい、研究計画当初に本年度に予定していた研究の多くが出来なかったため。 次年度は、(1)組換えWNVE蛋白質の発現・精製、(2)組換えWNVE蛋白質内包γ-PGAナノ粒子の作製とマウスへの免疫、(3)液性免疫誘導の検討、(4)細胞性免疫誘導の検討、(5)WNVE蛋白特異的CD8T細胞のエピトープマッピングを計画している。そのため、マウスとその飼料、ELISA用試薬・プレート・キット、マウスリンパ球用の培地・培養用器具、増殖反応測定用のRI(3H-チミジン)やサイトカイン測定用のELISA用試薬・キット、MACS CD4T cell分離キット・CD8T cell分離キット、合成ペプチド(overlappingペプチドlibrary)、マウス用ELISPOTキットなどの購入費用、およびELISPOT解析の外部委託費への使用を計画している。
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