2012 Fiscal Year Research-status Report
混合有機溶剤取扱い作業におけるリスクアセスメント・リスクマネジメント手法の開発
Project/Area Number |
23590763
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
保利 一 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (70140902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田尾 徹 産業医科大学, 産業保健学部, 講師 (90212901)
樋上 光雄 産業医科大学, 産業保健学部, 助教 (40588521)
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Keywords | 混合有機溶剤 / リアルタイムモニタリング / 気液平衡 / 物質移動速度 / VOCセンサー / 数値流体解析 |
Research Abstract |
混合有機溶剤を取り扱う作業におけるリスクアセスメントに必要なツールを開発することを目的とし,溶剤の蒸発速度および気中濃度の推定と,蒸気濃度のリアルタイムモニタリング法の開発の2つの面から検討を行った. 蒸発速度および気中濃度の検討については,恒温槽内に設置したガラス製の円筒容器に入れた混合有機溶剤を自然蒸発させ,環境気中濃度を測定した.平成23年度は容器出口の蒸気濃度をオートガスサンプラーで採取してGCで経時的に測定することにより,濃度の経時変化を調べたが,平成24年度は恒温槽内に3か所のサンプリングポートを設け,蒸気濃度の空間分布を調べた.また,気液平衡論,蒸発速度論および数値流体解析を用いて蒸気濃度の時間的,空間的分布をシミュレーションした結果,実験結果の傾向をある程度説明することができた. リアルタイムモニタリング法については,テドラーバッグ内に有機溶剤を所定量入れて気化させ,この蒸気の濃度を原理の異なる3種類のセンサー(光イオン化検出法(PID),干渉増幅反射法(IER),半導体式)を備えたモニタリング機器を用いて測定し,各種有機溶剤のセンサーに対する感度を調べた.溶剤は有機溶剤中毒予防規則で作業環境測定の対象となっている第1種,第2種有機溶剤(異性体を含め全52種)を対象とした.PIDセンサーは多くの溶剤について高い感度を示したが,イオン化電位の高い溶剤については感度が低く,全く反応しない溶剤もあった.IERセンサーはほぼすべての蒸気に反応したが,濃度と指示値の間に直線性が見られなかったものや,感度が不十分なものも見られた.半導体式センサーは,全般に感度が低く,安定した指示値が得られなかった.3種類のセンサーはそれぞれ,溶剤に対する感度が異なるため,測定対象に適したセンサーを選択する必要があることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,混合有機溶剤の蒸発速度及び気中濃度の推算法と,リアルタイムモニタリングによる混合有機溶剤の測定法の開発という2本の柱で進めている.蒸発速度の検討については,平成24年度に恒温槽に湿度調整器を設置し,蒸発速度に及ぼす湿度の影響の実験を行う予定であったが,湿度調整器の仕様に不具合があることがわかり,予定通りの納入ができなくなったため,計画を見直すこととした.これについては平成25年度のできるだけ早期に導入し,実験を進める予定である.また,発生した後の蒸気の空間内分布については数値流体解析によるシミュレーションと実験値との比較検討を行った結果,ある程度の一致が見られ,ほぼ順調に進んでいる. 一方のリアルタイム測定手法の開発については,平成23年度に予定していたPIDセンサーを有するモニター(現有)では感度や安定性に問題があり,十分な検討ができなかったので,平成24年度は,同じPIDセンサーを有する後継機種を購入し,これと干渉増幅反射方式及び半導体方式のセンサーを有する機器の3台のモニターで52種類の有機溶剤蒸気に対する併行測定を行い,センサーの種類と有機溶剤蒸気に対する特性を調べた.この結果から,それぞれのセンサーの特性と測定限界について,ある程度定量的な考察をすることができた.混合有機溶剤に対するモニターの特性についても検討する予定であったが,純物質の有機溶剤に対するモニターの特性の比較検討に時間を要したため,実施できなかった.これについては平成25年度に検討を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,蒸発速度とリアルタイムモニタリングの2つの側面からの検討を行う.まず,蒸発速度の検討については,混合有機溶剤の種類を変えて引き続きデータを収集するとともに,湿度調整が可能な機器を導入することにより,温度,湿度が発生速度に与える影響についても検討する.また,数値流体解析によるシミュレーションについても,境界条件を含め,引き続き検討する. リアルタイムモニタリングについては,前年度,有機溶剤中毒予防規則の第1種,第2種の全溶剤についてセンサーの特性を網羅的に調べたので,この結果を踏まえ,本年度は混合有機溶剤蒸気についての検討を行う.具体的には,ひとつの成分の濃度を固定し,もう一方の成分の濃度を替えて測定を行い,それぞれの成分のセンサー指示値への影響が相加的か否かについて検討する.その結果を踏まえ,リアルタイムモニタリング機器により,混合有機溶剤蒸気の濃度を評価できる方法について検討する. 以上の2つの研究成果を統合し,有機溶剤を使用する作業現場におけるリスクアセスメント手法を確立する方法について検討する.すなわち,まず,混合有機溶剤作業において,使用する有機溶剤から,蒸発速度を予測し,これから,環境濃度あるいは曝露濃度を予測する方法,さらに,それらの濃度を簡便に測定する方法,そして,測定結果から,対策を行う必要がある場合の,効果的な局所排気装置,換気装置の設計,設置手法等について検討する.さらに,これらを有機的に関連させ,混合有機溶剤作業のリスクアセスメント・リスクマネジメントに資する手法を確立するための研究を推進する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在使用している恒温槽は,室温以上であれば恒温にできるが,湿度についてはコントロールができない.このため,湿度調整器が可能な装置を導入し,温湿度の影響に関する検討を行う.これについては平成24年度に購入する予定であったが,現在までの達成度の項でも述べたとおり,装置に不具合があることがわかったため,24年度中の購入を断念し,このための費用を平成25年度に繰越すことにした.これについてはできるだけ早い時期に仕様を確定して導入し,実験を行う予定である. また,リアルタイム測定については,PIDセンサーは,原理的に溶剤のイオン化電位以上の電位をかけないと溶剤がイオン化せず,センサーに反応しない.昨年度使用したPIDを用いた機器はイオン化電位が10.6eVで固定されていたため,これよりもイオン化電位の高い溶剤はセンサーに反応せず,また,この値に近い溶剤は感度が低くなるという問題点がある.実際,本年度に検討した52物質のうち,5物質については,PIDセンサーは全く反応しなかった.ただし,本研究で購入したPIDセンサーを有するMini RAE 3000は,UVランプを交換することによりイオン化電位を変えることができるので,イオン化電位が異なるランプを購入し,検討することにしたい.また,半導体センサーを用いた機器については,現在1台所有しているが,購入当初に比べ経年劣化のためセンサーの感度が極めて低くなっており,実用性に問題があるため,センサー部分の交換または同じ仕様の機器を新規購入することを考えている.数値流体解析ソフトについては,新しいバージョンのものが販売されているが,高価であるので,導入は見送り,条件設定を工夫するなどして用いることとしたい.
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Research Products
(12 results)