2012 Fiscal Year Research-status Report
バイオ燃料ETBEの生体影響および代謝酵素遺伝子多型の修飾作用について
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23590766
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
王 瑞生 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 健康障害予防研究グループ, 上席研究員 (10321895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 恵 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 健康障害予防研究グループ, 主任研究員 (90415969)
翁 祖銓 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 健康障害予防研究グループ, 研究員 (10541170)
柳場 由絵 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 健康障害予防研究グループ, 研究員 (90467283)
佐治 哲矢(鈴木哲矢) 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 健康障害予防研究グループ, 研究員 (20573950)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
前年度のETBE低濃度領域吸入曝露実験から採集した一部の試料について解析を行った。ETBE曝露による精巣(殆どは生殖系細胞)におけるDNA障害性についてコメットアッセイ法で解析した。その結果、ETBEは野生マウスでは3つの濃度(50、200、500 pmm)のいずれにおいても、影響が検出されなかったが、ALDH2遺伝子ノックアウト(ヘテロ型およびホモ型ノックアウト)マウスでは200 ppm以上の曝露によってDNA損傷が有意に上昇した。また、DNA上の酸化損傷を特異的に認識し除去する酵素(hOGG1)で試料を処理した後のコメット解析では、ETBE曝露後、DNA上の酸化損傷は上昇傾向が観察されたが、統計的有意に上昇したのがALDH2ノックアウトマウスの500 ppmばく露群であった。これらの結果からも、ETBEの最大無毒性濃度はALDH2活性の欠損マウスでは、通常マウスの500 ppmより低く、またそのDNA障害は酸化損傷が関与していることが判明した。 今年度はETBEの体内代謝と毒性との関係についても検討した。マウスを500 ppmのETBEに曝露させ、定時的に血液や肝組織を採集し、代謝物(一次代謝産物であるアセトアルデヒドとターシャリーブチルアルコール(TBA)およびTBAの代謝物である2-メチル-1,2-プロパンジオール)の定量を解析し、野生型とALDH2遺伝子ノックアウトマウスとの差異を比較した。3つの代謝物の血中濃度は曝露終了後比較的に早く減少したが、ばく露期間中およびその後、ALDH2遺伝子ノックアウトマウスの方が野生型に比べて高かった。これらの結果からTBAの代謝にもALDH2が関与していることが示唆された。ETBEの遺伝毒性がALDH2活性の無いマウスでより強く示されたのは、これらの代謝物の体内保留と関係し、それにより感受性が増大されたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は節電対策で一部の実験は延期せざるを得なかったが、平成24年度はその分の実験を含めておおむね進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きETBEによる生体への障害性およびその修飾因子(遺伝的因子、性差など)、発生のメカニズムについて検討を行う。最終年度はインビボやインビトロ法で検討する。得られるデータは今までの結果と合わせて、総合的に解析・評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の節電対策で比較的に多くの研究費は平成24年度に繰越されたが、大部分は消化された。平成25年度は一連の実験を予定しており、また予想より多くの酵素類などを使用するため、約30数万円の平成25年度への繰越を計画した(酵素活性の期限などを考慮したため)。
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