2012 Fiscal Year Research-status Report
子どもの喘息・アトピー、感染症罹患への妊娠期の化学物質曝露影響の解明
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23590769
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金澤 文子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 客員研究員 (90201425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半田 康 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 客員研究員 (70571785)
宮下 ちひろ 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 学術研究員 (70632389)
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Keywords | 母子保健 / ヒト次世代影響 / 難分解性有機塩素系農薬 / 喘息 / アトピー / 感染症 |
Research Abstract |
難分解性の有機塩素系農薬は内分泌撹乱作用を持つと懸念されている。難分解性有機塩素系農薬は臍帯血中の免疫グロブリンやIgEを増加させることが報告されているが,小児アレルギー発症リスクへの影響は一致した結果が得られていない。このような背景から,本研究は日本人への難分解性有機塩素系農薬の胎児期曝露が次世代の小児アレルギーリスクに与える影響を明らかにすることを目的とした。 本研究の対象者は,2002年から2005年にかけて札幌市の一産院を受診した妊婦514名のうち231名である(環境と子どもの健康に関する北海道スタディ)。娠中期から後期に母親から採血し,医療記録から年齢,身長,体重,出産歴についての情報を得た。また生後18か月の追跡調査票から受動喫煙,母乳期間,アレルギー・感染症発症などの情報を収集した。母親の年齢は30.7±4.7歳,非妊娠時体重53.5±9.3kg,身長158.2±5.3cm,初産婦47%であった。児の性別は男児46%,18か月のアレルギー有病率は食物アレルギー18%,アトピー性皮膚炎17%,喘息16%であった。児の18か月のアレルギー発症有無による難分解性有機塩素系農薬 (pg/g-wet) の濃度差を,全体および男女別に層別化してMann-Whitney検定で解析した。全体では児の18か月のアレルギー発症の有無と有機塩素系農薬濃度に有意な差は認められなかった。男女別に解析すると,男児のアトピー性皮膚炎発症群でα-HCHが有意に高く(発症群:1.3,健常群:1.0 (中央値)),男児の喘息発症群でp,p'-DDEが有意に低かった(発症群:428,健常群:739 (中央値))。女児の食物アレルギー発症群でγ-HCHが有意に高かった(発症群:1.8,健常群:1.1 (中央値))。今後,追加で血中有機塩素系農薬29種類を測定し,交絡要因を調整した多変量解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度まで母体血中の難分解性の有機塩素系農薬29種類を231名で測定した。測定した29種類のうち,検出率が70%以上であった19種類の有機塩素系農薬を解析に用いた。男女別の解析では,有機塩素系農薬はアレルギー発症の有無によりα-HCH, p,p'-DDE,およびγ-HCHで有意差が認められた。平成25年度は残り89検体を全て測定し小児アレルギーリスクとの関連について,交絡要因を調整した多変量解析を用いて検討する。平成24年度までに本研究の対象者において出産時情報として医療記録から母親の年齢,非妊娠時体重,身長,出産歴,児の出生体重・身長についての情報を得た。また生後18か月の追跡調査票から受動喫煙,母乳期間,感染症発症などの情報を収集した。さらに国際的に使用され,先行研究と調査結果が比較可能であるISSAC質問票(The International Study of Asthma and Allergies in Childhood )を用いて生後18か月の食物アレルギー,アトピー性皮膚炎,喘息の発症リスクの検討を行った。このように難分解性の有機塩素系農薬29種類の測定で曝露評価を行い,アウトカムの小児アレルギー発症リスク評価が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は曝露評価として,残り全ての89検体の母体血中の難分解性の有機塩素系農薬29種類を測定する。小児のアレルギー・感染症への影響を,生後の受動喫煙,母乳栄養期間,両親のアレルギー歴などの交絡要因で調整した多変量解析を用いて検討する。 研究成果について学会発表ならびに学術専門雑誌に発表する。さらに学術的発表にとどまらず,公開セミナーや講演会,ホームページを通じて,広く市民に研究成果を公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
母体血中の難分解性の有機塩素系農薬29種類を89検体で測定する。 研究成果について学会発表ならびに学術専門雑誌に発表する。
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Research Products
(2 results)