2013 Fiscal Year Annual Research Report
アポトーシス並びに細胞増殖因子と出血性脳血管疾患に関する前向き疫学研究
Project/Area Number |
23590776
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山海 知子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10241829)
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Keywords | 出血性脳卒中 / 脳内出血 / くも膜下出血 / アポトーシス / 細胞増殖因子 / コホート内症例対照研究 |
Research Abstract |
日本人の脳卒中は欧米人と比較して、動脈硬化を伴わない症例が多く、脳内出血やくも膜下出血の発症に血管平滑筋のアポトーシスが関連している可能性が指摘されている。そこで、本研究は出血性脳卒中の発症とアポトーシス関連因子可溶性Fas(sFas)、細胞増殖因子IGF-1との関連を分析した。日本でも数少ない長期継続的にコホート研究を継続している秋田、茨城、高知の地域集団(対象者数約9千人)における1984年以降の出血性脳卒中(脳内出血、くも膜下出血)発症者に対して、地域・性・年齢を1:2マッチさせた非発症者とで、コホート内症例対照研究の手法を用い、発症前に住民健康診査の際採取され凍結保存された血清中のsFas、IGF-1を測定し比較した。その結果、本研究期間において、発症年齢69歳以下の出血性脳卒中症例群54例(脳内出血30例、くも膜下出血24例)とその対照群108例の凍結保存血清を得た。sFas(平均値(標準偏差))は、全出血性脳卒中で症例群8.8(1.9)、対照群8.7(2.1)、脳内出血で症例群8.8(2.2)、対照群8.8(2.5)、くも膜下出血で症例群8.5(1.5)、対照群8.9(1.6)であった。IGF-1(平均値(標準偏差))は、全出血性脳卒中で症例群106.5(39.6)、対照群123.9(41.5)、脳内出血で症例群107.7(43.5)、対照群119.7(45.5)、くも膜下出血で症例群105.0(35.8)、対照群131.1(35.9)であった。(単位:ng/ml)アポトーシス関連因子のsFasは全出血性脳卒中、脳内出血、くも膜下出血何れにおいても統計学的な有意差を認めず、細胞増殖因子IGF-1は全出血性脳卒中とくも膜下出血において症例群は対照群より有意に低かった。くも膜下出血の発症機序として、細胞増殖因子の欠乏が動脈瘤壁の脆弱性を高めている可能性が考示唆された。
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