2012 Fiscal Year Research-status Report
久山町一般住民における生活習慣等の胃癌発症に及ぼす影響
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23590797
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池田 文恵 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80596825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80161602)
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Keywords | 疫学 / 胃癌 / コホート研究 / 久山町研究 |
Research Abstract |
平成24年度は、食事中ビタミンA摂取量と胃癌発症との関係について検討した。昭和63年に福岡県久山町で行われた生活習慣病予防健診を受診した40歳以上の久山町住民2,742名(久山町第3集団、受診率80.9%)のうち、胃癌の既往もしくは胃切除歴のある者、食事調査を行わなかった者、追跡開始までに死亡した者を除いた2,467名を前向きに14年間追跡した。追跡開始時のビタミンA摂取量は半定量食事頻度調査法で算出した。追跡期間中に93例の胃癌罹患例を認めた。初めに対象者をビタミンA摂取量の4分位により、<639、639-837、831-1,061、>1061μレチノール当量(RE)/日の4群に分け、胃癌罹患率(対1000人年)を検討したところ、年齢・性調整後の胃癌罹患率はビタミンA摂取レベルが増加するにしたがい有意に上昇した(傾向性P<0.01)。多変量解析により年齢、性、H.pylori感染、body mass index、糖尿病、血清総コレステロール値、喫煙習慣、飲酒習慣、定期的運動、ビタミンA以外の食事性因子で調整しても、第4分位における胃癌罹患のリスクは第1分位と比べて約1.5倍、有意に高かった。また、ビタミンA摂取量と胃癌発症の関係は胃癌の部位および組織型で違いはなかった。さらに、高ビタミンA摂取量(第4分位、>1,061μgRE/日)とH.pylori感染を併せ持つ群でのみ、胃癌発症のリスクが有意に高かった。以上より、ビタミンA摂取量の増加は胃癌のリスクを上昇することが示唆された。 さらに本研究では、昨年度に引き続き、上述の久山町第3集団同様、平成14年設定の第4集団に対しても追跡調査を継続した。追跡調査では、健診での問診、健診未受診者および転出者に対するアンケート調査、胃検診記録の精査、周辺基幹病院での臨床記録の収集、剖検を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、24年度も福岡県久山町で大規模な生活習慣病予防健診を行い、胃癌発症例の情報収集を行った。また、周辺病院への調査も遂行し、より精度の高い情報を得ことができた。これによりデータ整備が確実に行えている。解析を行い、論文化へ準備を進めており、研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
生活習慣病予防健診、および胃癌発症の追跡調査を継続し、臨床情報からのデータ整備を続行、また解析のためのデータセットを確定させる。追跡期間を延長して胃癌の発症数を増やし確定することで、追跡対象者の栄養摂取状況や食事パターン、身体活動度、血液検査データが胃癌の危険因子もしくは予防因子となり得るか詳細な検討を行うことが可能になる。また、追跡開始時の血清ペプシノゲンレベルとその後の胃癌発症率との関係、H.pylori感染とペプシノゲン法の組み合わせによる胃癌発症のリスクについての検討、将来の胃癌発症予測のためのリスクスコアを検討することが可能になる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)胃癌の発症情報を得るため、引き続き追跡調査を行う。その一環として、平成25年度も生活習慣病予防健診を行い、臨床情報を得る。生活習慣病予防健診では、医師や訓練されたスタッフによる問診(悪性腫瘍、心血管病を含めた生活習慣病の発症に関する情報やその他の疾患の既往歴、家族歴、飲酒・喫煙・運動習慣などの生活習慣)、医師による診察、身体計測(身長、体重、皮脂厚比、腹囲/腰囲、体脂肪率)、血圧測定、心電図、胸部X線検査、眼底撮影、骨密度、血液検査(血計、血液生化学、HbA1cなど)、検尿、75g経口糖負荷試験を行う。前年度までと同様に未受診者、転出者へのアンケートの郵送や、久山町周辺の基幹病院への定期的な訪問を行い、胃癌発症に関する情報を収集し、情報の漏れがないよう努める。また、死亡例については、病理解剖の承諾を得て、死因を精査、潜在胃癌の発見に努める。 2)前年度までに得られたデータを基にして、胃癌発症のデータセットを確定させる。胃癌発症の予後予測因子となり得る危険因子についての解析を継続する。H.pylori感染とペプシノゲン法の組み合わせによる胃癌発症リスクの検討や胃癌のリスクスコアに関する解析をする。以上の解析には、九州大学大型電算機センターのSAS解析システムを用い、Cox比例ハザードモデルやROC曲線などの統計手法で検討を行う。 3)研究成果は、国内学会で報告するとともに、英文誌に投稿する。また、久山町住民はもとより、わが国国民に対して、所属教室発行の定期刊行物、ホームページや新聞・雑誌等のマスメディアおよび公開講座を通じて、情報を発信する。
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Research Products
(4 results)