2011 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける成人T細胞白血病1型の起源、進化的変遷、宿主への適応
Project/Area Number |
23590800
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
江口 克之 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (30523419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 崇之 大阪市立環境科学研究所, 微生物保健, 研究主任 (70332450)
柳井 徳磨 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (10242744)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 分子系統学 / 分子疫学 / 人畜共通感染症 / HTLV-1 / STLV-1 |
Research Abstract |
<HTLV-1 の起源> 北海道、岩手、高知、長崎(平戸、対馬)、熊本、奄美 (加計呂麻島)、沖縄本島、八重山諸島からの検体について、env(1467 塩基長)の配列決定を行った。新規データを追加し、Bayesian解析手法を改善した結果、系統分化のパターンがより明瞭に示された。日本で分離されたウイルス株のうち従来のRFLPに基づく分類ではTCと同定されるものの大半は、東アジアに限局して見られる系統群(EAS)に含まれ、残りは世界広域に分布する系統(GLB3)に含まれることが分かった。分岐年代推定の結果、EASは約6000年前頃、JPNは約4000年前頃には日本に存在していたことが分かった。<ウイルス株の歴史的変遷> 数十年前の人骨15体分の肋骨の緻密部位から200~500mgの骨を切り出し、DNA 抽出を行った。ヒト・ミトコンドリアDNAのHVR-1については14検体で増幅がみられた。また、βグロビン遺伝子についてはRealtimePCRによる定量を試みた。その結果、7検体で増幅がみられ、骨1mgあたりのコピー数は0~550となった。抽出、増幅過程でのクロスコンタミネーションの防止のための手技の改善を行なった。<宿主への適応> 2011/11/14~15に研究の進行状況と今後の方向性に関する打合せを行った。当初は近畿地方のニホンザルの野生個体群を対象とした分子疫学調査を試みる予定であったが、ニホンザルの保護活動との兼ね合いから現地の協力を得ることが困難であることが判明したことを報告し、今後の研究の進め方について協議した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<HTLV-1 の起源> 本年度が論文1本が受理となり、現在1本を投稿中である。また、長崎県対馬、島根県隠岐由来の検体の分析を進めており、日本海側に散在する集積地に見られるウイルスのサブグループが明らかになりつつある。<ウイルス株の歴史的変遷> 微量DNAサンプルを取り扱う実験系の構築がほぼ完了した。一方で、数十年前の骨断片から回収できるβグロビン遺伝子のコピー数は骨1mgあたり0~550にとどまっている。従って、ターゲットとしている中世~近世の骨からのHTLV-1のDNAの検出とシーケンスは非常に困難であると考えられる。<宿主への適応> 霊長類研究所に導入される前の権益期間中のニホンザル53個体の全血中のHTLV-1プロウイルスpX領域およびβグロビン遺伝子を定量した。今後、末梢血単位量あたりのSTLV-1 プロウイルス数を算出し、HTLV-1 の場合と比較する。この結果は、単体の論文として発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
<HTLV-1 の起源> 新たに入手した対馬、および隠岐の検体のenvの配列と、GenBank に登録されている世界各地のHTLV-1/STLV-1株の相同配列を合わせて、アラインメントを行う。得られたデータセットを元に最尤法、Bayesian法を用いて系統樹を構築する。さらに、Bayesian 分岐年代推定法により、主要なウイルス系統の分岐年代の推定を試みる。<ウイルス株の歴史的変遷> 微量DNAの抽出と増幅の実験系は確立したものの、数十年前の骨標本からのβグロビン遺伝子回収率が低いため、それより古い時代の骨断片からのHTLV-1プロウイルスDNAの回収と配列決定は困難であると考えられた。そのため、古病理標本に研究対象を対象とした、数十年というスパンでの分子疫学的な研究の方向性を模索する。<宿主への適応> 感染経路・感染媒体を確認するためには、末梢血液以外にも臍帯血、産道内分泌物、母乳、唾液中のプロウイルスDNA、ウイルス粒子の存在を確認する必要がある。京都大学霊長類研究所などニホンザルの飼育を行っている機関に協力を求め、できる限り多くの検体を集め、Real time PCRによるプロウイルスDNA,ウイルスRNA の定量を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者が平成24年度より首都大学東京へ異動することになったが、今後もラボワークの大半は長崎大学熱帯医学研究所で行う予定である。一方で、研究代表者の新しい所属部局でも小規模な分子生物学的実験を行う必要があるので、テーブルトップ型のマイクロ冷却遠心機、およびDNA抽出キット、PCR試薬類、ピペットマン、フィルター付きチップ、サンプルチューブなどの消耗品を購入する。サーマルサイクラー、シーケンサーは既存のものを利用する。本年8月から9月の間に2泊3日程度の日程で、全体打合せ、データディスカッションを行う。会場としては、首都大学東京都市教養学部、あるいは長崎大学熱帯医学研究所を予定しており、そのための旅費を計上した。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Spontaneous T/NK-cell lymphoma associated with Simian Lymphocryptovirus in a Japanese Macaque (Macaca fuscata)2012
Author(s)
Hirata,A., Tachikawa, Y., Hashimoto, K., Sakai, H., Kaneko, A., Suzuki, J., Eguchi, K., Shigematsu, K., Nikami, H., Yanai, T
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Journal Title
Journal of Comparative Pathology
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed
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