2011 Fiscal Year Research-status Report
小児のインスリン抵抗性と関連する肥満以外の因子の検討
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23590815
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
西村 理明 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (20343535)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | インスリン抵抗性 / 危険因子 / インスリン分泌不全 / 肥満 |
Research Abstract |
新潟県津南町(人口約12000人)の中学3年生を対象とした学童健診において、インスリン抵抗性とインスリン分泌能並びに肥満の頻度の関連について検討した。本研究では、同町における平成21-23年度の中学3年生の健診参加者(参加率98.3%)のうち、本人・保護者から同意を得た児童238人(男児: 132人、女児: 106人)を対象に、空腹時採血を行った。空腹時インスリン値ならびに血糖値求めた、HOMA-R 2.5以上をインスリン抵抗性あり、HOMA-β40未満をインスリン分泌不全とした。肥満の診断は、国際的に標準化された成人のBMI(kg/m2)25に相当する値(男児:22.96、女児:23.66)以上とした。男女間の値の比較には、t検定もしくはχ2乗検定を用いた。 男児の空HOMA-R指数、HOMA-β指数およびBMIの平均値±SDは、それぞれ, 1.37±0.95、80.4±44.7、19.3±1.6で、女児ではそれぞれ1.55±0.87、103.5±51.4、20.1 ±1.8であった。男女間で比較すると、HOMA-β指数およびBMIが女性で有意に高値であった(p=0.002, P=0.002)。 インスリン抵抗性有りとされた児童の人数(%)は、男児/女児で13(9.8%)/16(15.1%)人で、その頻度に有意を認めなかった。肥満とされた児童の人数(%)は、男児/女児で14(10.6%)/10(9.6%)人であった。肥満で、かつインスリン抵抗性有りとされた児童の数は男児/女児3(2.3%)/5(4.9%)人のみであった。一方、インスリン分泌不全有りとされた児童の人数(%)は、男児/女児で16(12.1)/3(2.9%)人で、女児の頻度が有意に低かった(p=0.014)。肥満で、かつインスリン分泌不全有りとされた児童の数は男女とも皆無であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象とした地区において、中学3年生のみを対象として、インスリン抵抗性指数、インスリン分泌不全指数の測定を行える環境を構築した。 本研究では小学校4年生~中学3年生を対象にすることを目的にしているが、空腹時採血に対する、町、保健師、保護者の同意がなかなか得られず、小学校4年生~中学2年生においては、随時採血において、血糖値、HbA1c値を測定しているのが、現状である。すべての学年において、空腹時採血が行えるよう、今後とも、町、保健師、保護者を対象に、講演会等を頻繁に行い、本研究に関する理解を得る機会を増やす。 また、インスリン抵抗性と関連する、肥満以外の因子の検討を行うべく、アンケート調査用紙を作成したが、本件に関しても中学3年生でのみ施行を許可された。しかし、匿名で行うことを町から強く要請されたため、連結不可能匿名での施行にとどまった。今年度から、連結可能匿名化に関する理解を得られるよう、繰り返し、町と交渉し、小児のインスリン抵抗性と関連する因子を明らかにして、将来の生活習慣病予防に役立つ方策樹立への足がかりとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、中学3年生のみではなく、小学校4年生~中学2年生においても、空腹時採血を実施し、インスリン抵抗性指数、インスリン分泌不全指数の測定を行える環境を構築するよう、町、保健師、教育委員会、保護者と話し合いを続けていく。 その上で、本研究の目的である、肥満以外のインスリン抵抗性を予知できる因子を明らかにすべく、現在、匿名かつ連結不可能匿名化の状態で行われている生活習慣に関するアンケートに関しても、連結可能匿名化で行えるよう、町、保健師、教育委員会、保護者と話し合いを続けていく。 そして、肥満以外の小児のインスリン抵抗性と関連する因子を明らかにして、将来の生活習慣病予防につながる知見を示すことができるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は、中学3年生のみ空腹時採血が許可された。従って、食後採血を行った、小学校4年生~中学2年生においては、インスリン抵抗性指数、インスリン分泌不全指数を求めるためのインスリン測定を行わなかったため、その分の予算の余剰を生じた。 今年度は、中学3年生のみではなく、小学校4年生~中学2年生においても、空腹時採血を実施し、インスリン抵抗性指数、インスリン分泌不全指数の測定を行える環境を構築するよう、町、保健師、教育委員会、保護者と話し合いを続けていく。そして、可能な範囲で空腹時採血+インスリン測定が行える環境を整えるよう鋭意努力する。 また、中学3年生においてのみ、採血が行われているのが現状のため、統計解析に値する十分なデータが集まっていない。今後、十分なデータがそろった段階で、PCならびに、統計ソフトを購入し、データ解析を行い、学会に発表、さらには論文化するために、予算を使用する。
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