2012 Fiscal Year Research-status Report
小児のインスリン抵抗性と関連する肥満以外の因子の検討
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23590815
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
西村 理明 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (20343535)
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Keywords | インスリン抵抗性 / 小児 / 肥満 / インスリン分泌不全 / 疫学 |
Research Abstract |
本研究では、新潟県津南町(人口約12000人)における平成21-24年度の中学3年生の338名のうち、本人・保護者から同意を得た児童331人(男児:191人、女児:140人、参加率97.9%)を対象に、空腹時採血を行ってきた。 本年度は、空腹時インスリン値ならびに血糖値よりHOMA-β指数を求め、HOMA-β40未満をインスリン分泌不全ありとして、インスリン分泌不全に焦点を当てた。またインスリン分泌不全を関連することが予想される因子(BMI, HDL TG, 収縮期血圧)に関してロジスティック回帰分析を用いて検討した。値の比較には、t検定もしくはχ2乗検定を用いた。本研究は東京慈恵会医科大学の倫理委員会の許可を得て行った。 男児のHOMA-β指数およびBMIの平均値±SDは、それぞれ, 74.1±43.2、19.7±2.5で、女児ではそれぞれ101.1±63.1、20.5±2.7であった。男女間で比較すると、HOMA-β指数およびBMI共に女性で有意に高値であった(p=0.007, P<0.001)。 インスリン分泌不全有りとされた児童の人数(%)は、男児/女児で38(19.9)/10(7.1%)人で、女児の頻度が有意に低かった(p=0.001)。インスリン分泌不全ありを従属変数としたロジスティック回帰分析を男女別に行ったところ、男性ではBMI低値(オッズ比1.32(95% 信頼区間:1.06-1.65,p=0.014)とTG低値(オッズ比1.022(95% 信頼区間:1.004-1.04,p=0.015)が有意に関連していたが、女性では有意なインスリン分泌低下の予知因子は示されなかった。 今後、インスリン分泌不全ありとされた児童(特に男児)を長期にわたり追跡し、生活習慣病の発症との関連を検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象とした、地区において、中学3年生のみを対象として、インスリン抵抗性指数、インスリン分泌不全指数の測定を行える環境を構築し得た。 本研究では小学校4年生~中学3年生を対象にすることを目的にしているが、空腹時採血に対する、町、保健師、保護者の同意がなかなか得られず、小学校4年生~中学2年生においては、随時採血において、血糖値、HbA1c値を測定しているのが、現状である。 対象とした学年すべてにおいて、空腹時採血が行えるよう、今後とも、町、保健師、保護者を対象に、講演会を頻繁に行って、理解を深めていただく機会を増やしてきたが、本年度は、保健師の交代、人員不足を理由に現状維持となってしまっている。 また、インスリン抵抗性と関連する、肥満以外の因子の検討を行うべく、アンケート用紙を配布し、これも中学3年生でのみ施行を許可されたため行うことができた。しかしながら、連結可能匿名化で行うことを強く依頼したが、人員不足、ならびに、町の賛同が得られないことを理由に連結不可能匿名化で施行せざるをえず、データとの関連を見ることができなかった。 本件につき、引き続き町と交渉し、小児のインスリン抵抗性と関連する因子を明らかにして、将来の生活習慣病予防に役立つ方策樹立への足がかりとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、中学3年生のみではなく、小学校4年生~中学2年生においても、空腹時採血を実施し、インスリン抵抗性指数、インスリン分泌不全指数の測定を行える環境を構築するよう、町、保健師、教育委員会、話し合いを続け、講演会により保護者の理解を得るよう努力する。場合によっては、研究費で現地の補助員を雇うことを考慮する。 その上で、本研究の目的である、肥満以外のインスリン抵抗性を予知できる因子を明らかにすべく、現在、連結不可能匿名化の状態で行われている生活習慣に関するアンケートを、連結可能匿名化で行えるよう、この点に関しても、町、保健師、教育委員会、保護者と話し合いを続けていく。この実施においてもマンパワーの不足が問題になる場合は、研究費で現地の補助員を雇うことを考慮する。 そして、肥満以外の小児のインスリン抵抗性と関連する因子を明らかにして、将来の生活習慣病予防につながる知見を示すことができるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究開始から2年が経過したが、この2年間において、中学3年生のみ空腹時採血が許可された。したがって、食後採血を行った小学校4年生~中学2年生においては、インスリン抵抗性指数、インスリン分泌不全指数を求めるためのインスリン測定は意味が無いと考え、インスリン測定を行わなかったため、その分の予算の余剰を生じた。 今年度は、中学3年生のみではなく、小学校4年生~中学2年生においても、空腹時採血を実施し、インスリンの測定を行える環境を構築するよう、町、保健師、教育委員会、保護者と話し合いを続け、鋭意努力する。 また、中学3年生においてのみ、採血が行われているのが現状であるが、来年度には、統計解析に値する十分なデータが集まる予定であり、これらのデータ解析を詳細に行い、論文化するために、予算を使用する。
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