2013 Fiscal Year Research-status Report
小児のインスリン抵抗性と関連する肥満以外の因子の検討
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23590815
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
西村 理明 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (20343535)
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Keywords | インスリン抵抗性 / 肥満 / 予知因子 / インスリン分泌不全 |
Research Abstract |
本研究では、新潟県津南町(人口約12000人)における平成21-25年度の中学3年生のうち、本人・保護者から同意を得た児童388人(男児:225人、女児:163人、参加率97.5%)を対象に、空腹時採血を行ってきた。 本年度は、対象を男女に分け、空腹時インスリン値ならびに血糖値よりインスリン抵抗性指数であるHOMA-R指数を求め、HOMA-R2.5以上をインスリン抵抗性ありとし、その関連する因子に焦点を当てた。またHOMA-Rと関連することが予想される因子(BMI, HDL TG, 収縮期血圧)に関してロジスティック回帰分析を用いて検討した。値の比較には、t検定もしくはχ2乗検定を用いた。本研究は東京慈恵会医科大学の倫理委員会の許可を得て行った。 男児のHOMA-R、およびBMIの平均値±SDは、それぞれ,1.4±1.1、19.7±2.5で、女児ではそれぞれ1.5±0.9, 20.5±2.7であった。男女間で比較するとBMIのみ女性で有意に高値であったが(P<0.001)、HOMA-R指数には有意差はなかった。 インスリン抵抗性ありとされた児童の人数(%)は、男児/女児で19(8.4)/22(13.1%)人で、女児が多い傾向を認めたが有意差を認めなかった。 インスリン抵抗性ありを従属変数としたロジスティック回帰分析を男女別に行ったところ、男性ではBMI高値(オッズ比1.38,p<0.001)とTG高値(オッズ比1.026,p<0.001)が有意に関連していたが、女性ではBMI高値(オッズ比1.24,p=0.012)のみが有意に関連していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象とした、地区において、中学3年生のみを対象として、インスリン抵抗性指数、インスリン分泌不全指数の測定を行える環境を構築し得た。しかし、中学3年生においても、本研究において、解析対象となったのは実に388人にまで至った。 しかしながら、本研究では小学校4年生~中学3年生を対象にすることを目的にしていた。繰り返し、本事業の趣旨を、町の行政、関係部署、保護者に説明してきた。しかし、空腹時採血に対する、同意がなかなか得られず、小学校4年生~中学2年生においては、随時採血において、血糖値、HbA1c値を測定しているのが、現状である。 対象とした学年すべてにおいて、空腹時採血が行えるよう、今後とも、町、保健師、保護者を対象に、講演会を頻繁に行って、理解を深めていただく機会を増やす予定であるが、本年度は、人員不足・配置転換を理由に現状維持となってしまっている。 また、インスリン抵抗性と関連する、肥満以外の因子の検討を行うべく、アンケート用紙を配布し、これも中学3年生でのみ施行を許可されたため行うことができた。しかしながら、連結可能匿名化で行うことを強く依頼したが、人員不足、ならびに、町・学校の賛同が得られないことを理由に連結不可能匿名化で施行せざるをえず、データとの関連を見ることができなかった。 現時点では、インスリン抵抗性ありとされた児童を病院に呼び出し、その際、対面で聞き取り調査を行っており、清涼飲料水、アイスクリーム等の精製した糖の過剰摂取がインスリン抵抗性と関連している可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、中学3年生のみではなく、小学校4年生~中学2年生においても、空腹時採血を実施し、インスリン抵抗性指数、インスリン分泌不全指数の測定を行える環境を構築するよう、町、保健師、教育委員会と繰り返し話し合いを続け、講演会により保護者の理解を得るよう努力する。場合によっては、研究費で現地の補助員を雇い、空腹時採血に伴う負担軽減案を示す。 その上で、本研究の目的である、肥満以外のインスリン抵抗性を予知できる因子を明らかにすべく、現在、連結不可能匿名化の状態で行われている生活習慣に関するアンケートを、連結可能匿名化で行えるよう、この点に関しても、町、保健師、教育委員会、保護者と話し合いを続けていく。この実施においてもマンパワーの不足が問題になる場合は、研究費で現地での協力者を募集することを考慮する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究開始から丸3年が経過したが、この3年間において、中学3年生のみ空腹時採血が許可された。したがって、食後採血を行った小学校4年生~中学2年生においては、インスリン抵抗性指数を求めるためのインスリン測定は意味が無いと考え、インスリン測定を行わなかったため、その分の予算の余剰を生じた。無理に、空腹時採血を実施しようとすると、研究の遂行自体に支障が生じるため、中学3年生のみの空腹時採血は現時点ではやむを得ない選択であると考える。 今年度には、中学3年生のみではなく、小学校4年生~中学2年生においても、空腹時採血を実施し、インスリンの測定を行える環境を構築するよう、町、保健師、教育委員会、保護者と話し合いを続け、鋭意努力する。 また、中学3年生においてのみ、空腹時採血が行われているのが現状であるが、今年度には、統計解析に値する十分なデータである400例以上のデータが集まる予定であり、そのデータ解析を詳細に行い、かつ論文化し結果を世に公表するために、予算を使用する。
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