2011 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病と酸化ストレス及びアディポカイン分泌異常に関する疫学研究
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23590820
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
鈴木 康司 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 講師 (60288470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市野 直浩 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 講師 (50278280)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 酸化ストレス / アディポカイン |
Research Abstract |
近年、メタボリックシンドロームが慢性腎臓病の発症に関与していることが示され、その機序の1つとして、酸化ストレスとアディポカイン分泌異常の関与が示唆されている。ある住民検診受診者を対象として、食習慣、喫煙・飲酒習慣等の生活習慣のアンケート調査、血清採取および頸動脈エコー検査を実施した。頸動脈エコー検査では頸動脈壁肥厚、石灰化、血管の硬さの指標であるstiffness parameter(β値)を測定した。住民検診を受診した者のうち、研究同意の得られた者を解析対象者として、収集したデータと住民検診受診結果を結合しデータベースの作成を行った。血清を用いて、アディポネクチン、チオール類、miRNA等の測定を行った。横断調査の結果、これまでの報告と同様に、推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate;eGFR)は、メタボリックシンドロームの者では、そうでない者と比較し、有意に低く、またメタボリックシンドロームの構成要素集積数が多いほどeGFRが低下している結果が得られた。メタボリックシンドロームは、アディポカインの産生・分泌異常によって、酸化ストレスが促進された状態であり、血中の抗酸化物質が低下していることが報告されている。そこで、抗酸化作用を有するカロテノイドの血清レベルと腎機能指標であるeGFRとの関連を調査した。その結果、血清中のいくつかのカロテノイドはeGFRと正相関する結果を得た。機序は明らかではないが、腎機能低下が血清中のカロテノイド濃度に影響を与えていると推察される。本調査は断面調査であるため、今後は平成24年度受診者を対象として同様のデータを得、縦断的な関連を明らかにする必要がある。その他の血清成分値と腎機能との関連については、現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究実施計画に基づき、本年度は住民検診でのアンケート調査、血清採取および頸動脈エコー検査等を行ったまた血清を用いて、チオール類、カロテノイド類のHPLC法による分画測定、アディポカインとして高分子量アディポネクチンとレジスチンの測定を行うことができた。研究協力者とともに測定を行う予定であったが、消耗品代などの予算の都合上、研究代表者1人で行うことにした。そのため、血清成分分析に費やした時間は当初の予定より長くなった。その後データベースを構築し、腎機能低下とメタボリックシンドロームおよび血清カロテノイド値との関連について解析を実施し、メタボリックシンドローム及びその構成要素の集積数多いほど、腎機能低下が明らかであり、また血清中のいくつかのカロテノイド値と腎機能は正相関を示した。これらの研究成果は学会で報告を行い、当初予定していた平成23年度の研究実施計画をほぼ成し遂げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
慢性腎臓病では血清カロテノイド値が高くなる結果を得たが、他の抗酸化物質等との関連について現在解析中であり、その解析をすすめる。また摂取栄養素量のうち、カロテン等の摂取との関連を調査し、血清カロテノイド値と腎機能との関連と相違があるか否かを分析する。さらに縦断的な解析を行うために、平成24年度も住民検診に参加し、必要なデータを得るとともに、新たな知見が見出されてきたため、予定にはなかった新たな血清バイオマーカーの分析にも取り組む。解析して得られた知見は、学会報告および学術雑誌への投稿を行う予定である。次年度使用の研究費については、当初血清成分分析のための研究協力者に係る経費として計上していたが、ELISAキット等の物品購入額が予定より超えてしまったため、研究代表者1人で血清成分分析を行ったために生じたものである。この費用については、平成24年度も平成23年度同様にELISAキット等の物品購入費が予定額より超えることが予想されるため、それらの購入のために使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は、平成23年度に測定した血清成分のうち、縦断調査が有用であると判断した項目について同様に分析をするために必要なELISAキットや試薬類の物品を購入する。また、データ収集を行うために参加する住民検診、学会発表や打ち合わせなどを行うために必要な旅費、血清成分測定の研究協力者のための経費、研究成果報告のための学会参加費および投稿料等の支出を予定している。
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