2011 Fiscal Year Research-status Report
虐待予防の家庭訪問支援におけるアメリカの両親調査の活用に関する研究
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23590822
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
白石 淑江 愛知淑徳大学, 福祉貢献学部, 教授 (10154361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
棚橋 昌子 愛知淑徳大学, 福祉貢献学部, 教授 (50149499)
坂 鏡子 名古屋学芸大学, 健康科学部, 准教授 (70434636)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Healthy Families America |
Research Abstract |
本研究は、妊娠・出産期に虐待ハイリスク家庭を把握するアセスメント・ツールとして米国のHealthy Families America(HFA)の家庭訪問プログラムで採用されているParents Survey(以下、両親調査と言う)の日本語版を作成し、わが国で活用する意義と課題を明らかにすることを目的としている。 平成23年度の研究計画では、前半期に「両親調査(日本語版)」の予備調査を行い、後半期に本格的な調査を実施する予定であった。しかし、予備調査の段階で、「両親調査(日本語版)」を愛知県内の家庭訪問事業で実施する上で、二つの課題があることが明らかになった。一つ目の課題は、調査項目が多く調査時間がかかるため、調査項目を減らすか、時間を短縮する工夫が求められた。二つ目は、記録用紙が記述式であるため、記録にも多くの時間と労力を割かなければならないということであった。 そこで、協力を依頼した愛知県内3市担当課の職員、及び家庭訪問員、研究協力者、研究分担者らと研究会を重ねた結果、一つ目の課題については、調査項目を減らす方法ではアセスメント・ツール機能が損なわれるため、家庭訪問員がツールに習熟するまでは必要な時間を確保することになった。そして、ツールの習熟に要する時間やプロセスを調べるという新たな研究課題も得られた。また、二つ目の課題については、記録用紙の簡易化を検討し実現することができた。 平成23年度の研究実績としては、両親調査の実施方法の調整と記録用紙の簡易化を行うことができ、予備調査の目的をほぼ達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の研究計画では、前半期に「両親調査(日本語版)」の予備調査を行い、後半期に本格的な実施を開始する予定であった。しかし、予備調査の段階で「両親調査」を愛知県内市町村の家庭訪問事業で実施するには、2つの課題があることが明らかになった。1つ目は、調査項目が多く予想以上に調査時間がかかること、2つ目は、記録用紙が記述式であるため、記録にも多くの時間と労力を要することであった。 そこで研究会を重ねて検討した結果、家庭訪問員がツールに習熟するまで調査に時間をかけ、必要な時間数の実態を把握をすることになった。また、記録時間の問題を解決するために記録用紙を簡易化することができた。 したがって、達成度としては、本調査を計画通りに実施することができなかった点では遅れてしまったが、「両親調査(日本語版)」の質を改善することができたため、予備調査の目的は十分達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の血球計画の実施がやや遅れたが、平成24年4月から愛知県の妊娠届出書の標準様式が使用され、虐待予防を目的とした、妊娠・出産期からの家庭訪問事業が積極的に推進される計画である。その動向に合わせて、今後(平成24・25年度)は次のように研究を進める予定である。 【両親調査(日本語版)の実施】 予備調査に協力していただいた3市において、家庭訪問員8名により本調査を実施する。訪問員8~10例ずつとして、平成24年度に60~80事例、平成25年9月までに20~40事例、合計100事例を目指す。また、調査データーを集計し、平成24年度から愛知県全市で導入されることになった「虐待ハイリスク家族のスクリーニング項目」との相関、及び、両親調査の10項目のスコア分布の特徴、リスクレベルの実態を分析する。 【家庭訪問員の聞き取り調査】両親調査(日本版)の実施後は、家庭訪問員へのスーパービジョンを行い、スコアリングの確認と家族のストレングスと課題の整理、援助計画の立案につなげる。同時に、調査を実施した家庭訪問員より、調査時間数、「聞きにくい、答えにくい質問項目」「質問の意図が伝わりにくい、日本の社会や文化とのずれを感じる質問項目」の有無を聞き取る。また、家庭訪問員の聞き取り調査は、同一人物に対して2年間で3回実施し、両親調査に要する時間や習熟度を検討する。 【両親調査(日本語版)の修正と実施マニュアルの作成】本研究の調査結果に基づいて、両親調査(日本語版)の内容や文章表現の修正案、及び予備調査段階で作成した簡易版記録用紙について、「両親調査Parents Survey」の著作権を持つ米国Great Kids社のBetsy Dew氏と協議して承認を得る。そして、平成25年度に両親調査(日本語版)の実施マニュアルを完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究計画では、後半期において本調査を実施する予定であったが、予備調査段階で検討事項があり、本調査が実施できなかった。そのため、平成23年度予算に残金が生じ、平成24年度に繰り越すことにした。 平成24年度は、愛知県内において虐待予防を目的とした妊娠・出産期からの家庭訪問事業が積極的に推進される見通しである。それゆえ、その家庭訪問事業においてアセスメント・ツールである「両親調査(日本語版)」を活用する機会を増やす計画である。 そこで、平成24年度は、予備調査に協力いただいた3市の家庭訪問事業において「両親調査(日本語版)」を実施し、合計60~80事例のデーターの収集を目指す予定である。ただし、「両親調査」の実施については、1事例につき家庭訪問で平均1時間半~2時間を要し、実施後はスコアリングやスーパービジョン、家庭訪問員からの聞き取り調査を行う必要がある。それゆえ、調査に協力する家族や家庭訪問員への謝礼、担当する研究分担者、研究協力者の人件費や旅費などに研究費を支出する予定である。 また、平成24年度1月までに、収集した調査データーの単純集計(中間報告)をまとめ、分担研究者とともに「両親調査」の著作権を持つ米国Great Kids社のBetsy Dew氏を訪問する。そして、中間報告の結果に基づき、責任者と調査項目の日本語訳の修正と記録用紙の簡易化について協議し、日本での普及の許可を得る計画である。したがって、分担研究者と筆者の2名の海外渡航費、滞在費を支出する予定である。
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