2011 Fiscal Year Research-status Report
喫煙者の禁煙と生活習慣が酸化ストレスの状態に及ぼす影響の研究
Project/Area Number |
23590832
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
大庭 志野 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (70397321)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 禁煙 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
埼玉県内の5医院および県外2医院において本研究への協力を依頼し、対象者の募集を開始した。対象者は禁煙治療のための標準手順書(日本循環器学会、日本肺がん学会、日本癌学会、日本呼吸器学会)に基づき、保険適用の禁煙治療の対象となる人とした。すなわち、1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上であり、ニコチン依存症と診断されており、直ちに禁煙しようという意思がある者である。調査の全過程を終了した対象者に薄謝を進呈することで、対象者の参加を促すようにした。 対象者には初診時に身長・体重の測定および生活習慣の調査を行っている。更に信頼性及び妥当性の確認された質問票を用いて、食事の状況および普段の運動量を調査することとした。また、社会経済的状況、本人及び家族の既往歴等について確認をする。酸化ストレスの状態を測定するため、初診時及び4回の再診時に尿検体の採取を行う。尿検体はマイナス70度で保存し、酸化ストレスのマーカーの測定を行う。 データの収集は開始されており、全過程を終了した対象者のデータも集まってきている。初診時のデータを中心に対象者の特性を調べたところ、20代から70代までの男女が調査に参加していることが確認された。普段の運動量は60歳以上の参加者においては低い傾向がみられた。禁煙外来受診の動機は、60歳未満の人では経済的な理由を挙げる人が多く、一方60歳以上の人では健康上の理由を挙げる人が多い傾向がみられた。また、ニコチン依存への度合いは男女ともに同程度であったが、一日当たりの喫煙量は女性では少ない傾向がみられた。また、女性においては、睡眠の質が低下している人が多くみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究目標に基づきデータ収集を円滑に行うための案を策定し、対象者の募集を行うことを計画していた。また既存研究のレビューを進め、酸化ストレスの状態を示す指標の測定や検体の有効な方法について検討し、更に酸化ストレスに影響を及ぼす要因について調べるために質問票を選定し、調査を行うための準備を行う計画であった。 予定通り既存研究の現時点でのレビューを行い、これらに基づき検体の保存方法や保存場所の確保、輸送方法等について検討した。必要な業者を手配して支払い方法などの確認を行い、また検体を受け取る担当者との打ち合わせを行った。今後も研究の進行と並行して文献のレビューを行う必要がある。 既存研究ではこれまでに喫煙により高まった酸化ストレスの状態はたばこを止めることにより改善されることが報告されているが、慢性疾患のある人には健康な人ほど改善がみられなかった。循環器疾患の発症には、運動や栄養摂取等の生活習慣が大きく係ることがわかっており、禁煙を試みる人の酸化ストレスの状況についても、既往歴に加えて運動や睡眠、栄養摂取の状況等が大きく係わっていることが考えられる。これらのことを考慮し、本計画で使用する質問票を妥当性と信頼性の確認されているものより選択した。質問票の印刷・配送等を手配した。また電子化が有料なものについては見積もりをとり、データの内容を確認した。 本調査は禁煙治療を行う人を対象とするため、禁煙外来を行う医院等の協力が必須である。これまでに埼玉県内の5医院に加え、県外の2医院において調査への協力が得られた。これらの医院には数度にわけて訪問し、それぞれ調査の目的や内容、具体的な手順等を伝えた。また必要な資材の梱包及び搬入を行った。データの収集はまだ中途であるが、順次データの入力を開始した。また、可能な範囲で収集データの解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在調査を依頼している県内5医院および県外の2医院において、引き続き対象者の登録を依頼し、調査に資材などの搬入を行う。また電話にて質問等の対応を行い、必要に応じて施設訪問を行う。データの収集に並行して、確認及び入力の作業を行う。特に確認が必要な点については実施施設に問い合わせを行い、また今後の改善点に加えることとする。データ入力のうち、質問票の著作権等の関係で研究組織内においてデータの変換ができないものに関しては専門の業者に依頼する。質問票によるデータは、可能な範囲で中間解析を始める。 検体の採取、輸送、保存について滞りなく行えるよう引き続き手配する。担当を決め、検体に識別番号を表示し、整理を行う。整理された検体より、尿中8-OHdG及び8-epi-PGF2α、その他のマーカーの測定を開始する。 文献検索を進め、また既存データを用いて一般住民における酸化ストレスと生活習慣との関連について検討を行う。特に食生活や特定の栄養素の摂取が酸化ストレスの状態とどのように関連するか解析を行い、現在収集中の禁煙外来における調査結果と関連づけられることを目標とする。 収集データを整理し中間解析の結果をまとめる。年齢、性別、また既存研究の検索やレビューを行い、新たな知見を整理する。また、既存データの解析の結果と照らし合わせて検討を行う。これらの内容について、研究会や学会等で発表を行う。また昨年度までに行った本調査に関連する質問票等のレビューの成果については、論文執筆を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
検査やデータ収集など調査実施施設において使用する資材を購入する。搬入の手配等を行うため、事務補助員を雇用する。また施設訪問を行い、調査実施の状況を把握するそのための旅費を要する。調査に協力頂いた方には、引き続き謝礼としてプリペイドカードを進呈する。 検体保存のため、容器や整理箱、識別用のラベル、ペンなどを購入する。これらは超低温で使用が可能なものとする。また必要に応じて事務補助員を雇用して検体の整理を行う。 収集されたデータのうち、院内で電子化できる簡単なものについては、事務補助員を雇用して行う。複雑なものについては外部の入力業者に依頼する。著作権などが登録されているものについては、専門の業者に依頼して電子化を行う。また解析に有用な統計ソフトウェアの更新を行う。また関連論文を検索して複写して複写する。また研究に係る専門の書籍の購入を予定している。 昨年度予定していた研究成果の学会発表については、本年度行うことを予定している。その際の学会参加費、旅費などが必要となる。また、本年度中にまとめられる成果についても、学会あるいは研究会で発表を行うことを目標とする。調査実施施設を訪問し、途中経過の報告を行う。これらについても、旅費が必要となる。
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