2011 Fiscal Year Research-status Report
睡眠時無呼吸症候群動物モデルにおける心血管病変の解析
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23590843
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 恒志 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60600369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下澤 達雄 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90231365)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | intermittent hypoxia / autohagy / heart |
Research Abstract |
近年、autophagyが「第3の細胞死」として注目されている。autohagyは細胞死を招く一方、necrosis、apoptosisを抑制し細胞保護的に作用するとも言われている。そこで睡眠時無呼吸症候群(SAS)の心臓とautophagyの関係をみるため、間歇的低酸素暴露(IH)ラットを作成し検証した。IHラットはhypoxia(nadir4%)とnormoxiaを90秒サイクルで、8時間/日、連日3週間暴露することで作成した。その結果、IH心筋では有意にLC3II/I比が亢進しており、また電子顕微鏡写真でautophagosomeの過剰形成を認め、IH心筋でのautophagy亢進が認められた。そこでautohpagy阻害剤であるchroloquineを連日投与して3週まで毎週心エコーを施行した。その結果、normoxia群(N)、normoxia+chroloquine群(NC)、IH群(IH)ではEF、FSは低下しなかったが、IH+chroloquine群(IC)では経時的に有意な低下を認めた。次にIH心筋におけるautophagy亢進のmorecular pathwayを調べるため種々の分子についてWestern blotを行った。autophagyの抑制因子として最も重要とされるmTOR(リン酸化で抑制)を測定したところIHでの脱リン酸化を認めた。またautophagyの促進因子であるAMPK(リン酸化で促進)とAkt(脱リン酸化で促進)を測定したところAMPK、Aktともに脱リン酸化していた。したがって少なくともAMPKのpathwayは関与せず、Aktのpathwayが関与していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで最大IH8週暴露モデルまで経時的な心機能変化を追ってきたが、IH群に心機能変化はほとんど認められなかった。唯一、低酸素暴露(10%O2)に対してIH群の方が心拍数の低下が生じにくいことだけであった。心拍数の低下が起きにくい原因については、24時間蓄尿によりIH群でcathecolamin(dopamin、adrenalin、noradrenalin)の著しい増加を認めたことより、交感神経活性の亢進によるものと結論づけた。したがって単体としての心機能に変化はなく、IHでは高度に心保護的な代償が働いているものと推察された。そこでangiotension受容体(AT1、2)や血中ardosteronなどを検索したものの特に変化を認めず、心機能維持機構を見いだすことは出来なかった。そのような状態の中、近年、necrosis、apoptosisに継ぐ第3の細胞死として注目を浴びるautophagyの存在を知った。そこでautophagyで生じるLC3のI→II変換を検証してみたところ、IHの心筋ではLC3Iが減少し、IIが増加していた。これを契機にautophagy阻害薬chroloquine投与モデルを作成したところ、我々の研究で初めてIHにおける心保護機構の一つを見いだすに至ったものである。
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Strategy for Future Research Activity |
autophagy阻害薬chloroquineの連日投与により、IHでは心機能が持続的に低下していく現象を発見した。しかしこれまでは3週暴露モデルまでしか作成して来なかったため、それが心不全あるいは個体死に至る程度にimpactの大きな現象-すなわち生存に必須な現象-か不明である。そこで長期間モデルを作成することで生存曲線を作成する。またchloroquineはautophagyの過程ではその最終段階を阻害する薬剤であるため、初期段階を阻害する3-methyladenineによっても同様の効果が認められるか検証する。また、IHの心臓はpreconditioning効果により虚血耐性に優れると言われている。そこで、この作用とautophagyの関連性について追究する。具体的にはIH±、chroloquine±による4群モデルに左冠動脈前下行枝(LAD)結紮による心筋梗塞を生じさせ、あるいは血流を再開通させ、虚血/虚血再潅流に対するIHの耐性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ラット購入費として20万円、動物用飼料・消耗品費として5万円、抗体や阻害剤などの試薬類として30万円、残りの金額を設備備品関連消耗品として使用する予定である。
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