2011 Fiscal Year Research-status Report
法医DNA多型検査における3対立遺伝子性SNPsの有用性に関する検討
Project/Area Number |
23590846
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
太田 正穂 信州大学, 医学部, 准教授 (50115333)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | Tri-allelic SNPs / 個人識別 / 多型性 |
Research Abstract |
一塩基多型(SNP:single nucleotide polymorphism)は、被災者の身元確認や犯罪捜査での退化したDNAの解析には、サンプルの増幅サイズが小さいことから有効であり、またマイクロサテライトと比較し変異率(突然変異率:約1 x10-8)が低いので、親子鑑定や親族鑑定で威力を発揮すると言われている。しかし、現在用いられている多くのSNPsは2対立遺伝性を示すものがほとんどである。多くのSNPは2対立遺伝子であることから、STRに比べ遺伝情報が少ないため、混合試料の個人識別等に不向きであった。そこで、3対立遺伝性および4対立遺伝性を示すSNPsをNCBI SNPデータベース(dbSNP)や、文献から選出し、日本人でのアリル頻度を調べた。方法は、インフォームドコンセントを得られたDNAサンプル96検体について、直接塩基配列を決定して3対立遺伝性SNPsの確認を行った。データベースで有効と思われた17種類の3対立遺伝性SNPs(rs3091244, rs3125289, rs3796048, rs35528968, rs7649855, rs356167, rs2032582, rs7824739, rs472455, rs1042229, rs933119, rs433342, rs17287498, rs5030240, rs2307223, rs2069945, rs9329104) について調べた結果、3対立遺伝性SNPsは9種類(rs3091244、rs356167, rs2032582, rs433342, rs1042229, rs17287498, rs5030240, rs2307223, rs2069945,)を確認した。 3対立遺伝性を示したSNPのマイナーアリル頻度は何れも3%以上の値を示し、個人識別に有効なマーカーであると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、現在法医学領域において使用されているマイクロサテライト多型マーカーの欠点を補うことから塩基多型(SNP:single nucleotide polymorphism)の有用性について検討を行う予定であった。ヒトゲノム中報告されている数百万個のSNPはほとんどが2対立遺伝性を示すものである。そこで日本人において、多型性が高い3対立遺伝性を示すSNPsの検索、データベースの構築が必要である。本年度行った解析では、海外で報告されている3対立遺伝性SNPs17種類について、日本人で3対立遺伝性を示したのは9種類であった。これらのSNPsパネルは法医実務に充分有用な遺伝マーカーとして使用できることが示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度まで確認した法医実務に有効と思われる3対立遺伝性SNPsは9種類であったが、これらのSNPsは全染色体をカバーしていない。今後さらに新たな3対立遺伝性SNPsを検索し、少なくとも各染色体上から1つの3対立遺伝性SNPを確認して、データベースを構築していく予定である。また、簡易的に検査可能なシステム(SNaPshot法やTaqMan法)を構築する。更に実務での有用性についての検討のため、混合試料での検出限界や、退化試料からの検出限界について解析を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)本年度得られた3対立遺伝性SNPsが局在する染色体以外の染色体から新たな3対立遺伝性SNPsを選び、その遺伝情報を検査し、全染色体上に及ぶセットを構築する。2) 有用性の評価を得たSNPsについて、各常染色体から少なくとも1つを選別する。これらのSNPsが連鎖の無いことを確認する。3) SNaPshot法で解析を行うために、選択したSNPsが最適であるか、PCRや延長プライマーの条件をmonoplex法で検討する。4) 検討済みのSNPsについて、SNPsのMultiplex 化が最適な条件で検査可能であるような条件を設定する。検査に必要な資料DNA量、SNPsの組合せ等を検討する。5) 確立したMultiplexシステムを用いて、陳旧化した試料からのタイピングの可能性を検討する。前年度と同様、熱や紫外線を加えて人工的に作製した試料や、古い試料(骨、血痕、毛髪など)を用いてタイピングを行い、有用性について検討する。また、混合試料を作製し、このmultiplex検査法の可能性について検討する。これらの研究遂行のために本年度の予算は、シークエンス解析試薬、PCR関連試薬、SNaPshot Multiplex試薬、および解析に必要な消耗品に充てる。
|
Research Products
(4 results)