2011 Fiscal Year Research-status Report
珪藻のDNA-binding特性を利用した溺死診断法の開発
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23590854
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
瀬尾 泰久 大分大学, 医学部, 助教 (80187830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 哲子 大分大学, 医学部, 教授 (50136793)
内田 智久 大分大学, 医学部, 助教 (70381035)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 溺死 / プランクトン / 硅藻 / DNA |
Research Abstract |
まず、カオトロピックイオンの存在下で、硅藻被殻にDNAの吸着能が存在するか否か、DNAを吸着するのであればどの程度の量かを検討した。その結果、4Mグアニジン塩酸塩溶液下でもっとも効率よくDNAを吸着し、平均で硅藻一分子あたり0.2-0.4amolのラムダDNAを吸着することが明らかとなった。さらに、溶液を水に置換することによって吸着されたDNAは容易に水中に遊離することも確かめられた。ただし、これらの法則は100bp以下の短鎖DNAには適応されなかった。 ついで、同様の性質を持つシリカコートされた磁性ビーズにラムダDNAを介して硅藻被殻をトラップして精製する方法の開発を試みた。4Mグアニジン塩酸溶液下で磁性ビーズ、硅藻被殻、ラムダDNAを1~2分間インキュベートすることにより硅藻被殻を磁性ビーズに特異的にトラップした。洗浄後、純水に置換することにより被殻を水中に回収し、永久標本を作製した。その結果、、淡水系、海洋性の硅藻被殻のいずれも、ほぼ完全に磁性ビーズに吸着し、純水中に回収されることが確かめられた。 実際に溺死した死体の臓器を壊機した溶液に本法を適用したところ、従来の方法でおこなったものとほぼ同数の硅藻被殻が検出された。さらに、壊機溶液中の硅藻被殻は磁性ビーズに特異的に吸着されるので、洗浄により不純物が取り除かれ、観察が容易な標本を作製することが可能であった。特に、肺は生前に吸引した粉塵等の不純物が蓄積し、従来の方法では観察が困難な場合がほとんどであったが、本法を利用して作製された標本では鏡検が著しく改善された。 この研究成果は、日本法医学会九州地方会で発表し、論文として投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カオトロピックイオン存在下で、ガラス質で出来ている硅藻被殻にDNAが吸着することを実証した。また、壊機法による溺死診断においては、従来不純物が混在した状態で硅藻被殻を観察せざるを得なかったが、磁性ビーズを使った精製方法の開発に成功したことにより、壊機法による硅藻の検出を容易にすることができた。 完全ではないものの、この原理を応用した硅藻被殻の染色にも成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、困難とされてきた溺死体血液からの硅藻検出法について検討する。溺死体心臓血液中には、溺水に含まれる硅藻が含まれるはずなので、被殻のDNA吸着能を利用した検出方法を開発する予定である。 また、硅藻被殻にDNAを吸着させ、吸着したDNAを酵素標識複合体として染色、観察する方法の完成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度と同様に、カオトロピック溶液等の購入が必要である。 硅藻被殻を染色するのに必要な、プレート、プライマー、酵素、発色基質等の消耗品類を購入する。 海洋性プランクトンの採取に関わる人件費、論文校正費等を必要とする。
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