2012 Fiscal Year Research-status Report
ダイビング剖検診断における血管内気泡の意義:加圧・減圧モデルからのアプローチ
Project/Area Number |
23590855
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
宮崎 哲次 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10144825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井濱 容子 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80347137)
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Keywords | 減圧症 / スキューバダイビング / 血管内気泡 / 脂肪塞栓 / 剖検診断 / 肺気腫 / 肺損傷 / 肥満 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ダイビング中に死亡した剖検例における血管内気泡の発生条件とその診断意義を明らかにすることである。研究手法は、実験動物において加圧・減圧モデルを作成して条件ごとに血管内気泡や剖検所見を比較・検討するものであり、現在のところ段階的に研究を進めている。加圧・減圧装置を用いてWistar系ラットの減圧症発症モデルの作成技術は昨年度中に確立しているが、本年度にあってはモデル数を増やすとともに、血管内気泡の発生状況(量ならびに部位)、脂肪塞栓ならびに肺損傷の評価などに焦点を絞って検討を行った。実験群は下記の3群、①減圧症モデル(加圧室内の気圧を速やかに6気圧(水深50m)に上げて1~3時間維持した後、速やかに大気圧に減圧)②加圧死亡後・減圧モデル(加圧状態で炭酸ガスによって死亡させた後に減圧)③死体加圧・減圧モデル(大気圧で死亡させた後に加圧・減圧)として、それぞれについて比較・検討を行った。 さらに、減圧症の発症リスクとして肥満が挙げられることから、食餌性肥満ラット(ZUC-Lepr)を使用してWistar系ラットとの比較・検討も行った。 また、加圧・減圧中の実験動物に対して継続的に呼吸・循環動態の測定を行っている。この結果から、生体に及ぼす加圧・減圧の影響を評価するとともに、血管内気泡や脂肪塞栓、肺損傷の程度と比較して検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度にあっては、昨年度中に確立した3つのモデル(①減圧症モデル、②加圧死亡後・減圧モデル、③死体加圧・減圧モデル)の数を増やすとともに、より減圧症発症リスクが高いと予想される肥満ラット(ZUC-Lepr)においても3つのモデルを作成することに成功した。各種モデルにおける血管内気泡の状況(量、部位など)、脂肪塞栓ならびに肺損傷について比較・検討を行い、今後は実験結果の考察ならびにまとめの段階に入っており、実験実施はほぼ計画通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果によって、血管内に生じる気泡のみの評価では①減圧症モデルと③死体加圧・減圧モデルを区別することは可能であることが示されたが、①減圧症モデルと②加圧死亡後・減圧モデルを区別することは困難であるという結果が示された。 一方、肺の気腫性変化を比較することによって①減圧症モデルと②加圧死亡後・減圧モデルを区別することが可能である印象を得ており、今後は画像ソフト解析(Image Jなど)などを併用して①減圧症モデルと②加圧死亡後・減圧モデルとを客観的に分類する方法を検討する。 さらに、加圧・減圧中の呼吸・循環動態の変化について検討する。Wistar系ラットでは、同じ条件で加圧・減圧を行っているにも拘わらず死亡するものと、生存するものとがあった。呼吸・循環動態の変化を生存・死亡例について個々に検討することによって、減圧症死亡の本態に迫る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においてはこれまでの実験結果をまとめる段階にあるが、追加実験や実験個体を増やす必要が生じてくると考えている。したがって、次年度の研究費は、追加の実験動物(Wistar系ラット、ZUC-Lepr)や各種消耗品(麻酔薬、解剖ならびに組織標本作製のための消耗品)を購入する予定である。さらに、研究成果を国際誌に投稿する予定でいるため、英語論文の校正ならびに投稿料・印刷費が必要となる。
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