2011 Fiscal Year Research-status Report
剖検例の中毒学的検査を利用した静脈内投与薬物の胃内移行量の解明に関する研究
Project/Area Number |
23590864
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
守屋 文夫 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (40182274)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 法中毒学 / 薬物分析 / 塩基性薬物 / 胃内分泌 / 静脈内投与 / 医療処置 / ガスクロマトグラフィー / ガスクロマトグラフ-質量分析 |
Research Abstract |
今年度は、法医解剖220例を対象に、医療機関において死亡が確認された事例及び医療機関外で静脈内に薬物を投与したことが疑われる事例について、血液、胃内容及び尿の薬物分析を実施した。まず、胃内容と尿のイムノアッセイ(Triage DOA)とGC-FTDによる薬物スクリーニングを実施した後、GC/MSによる薬物の確認を行った。薬物の定量はGC-FTDを使用して行った。一方、捜査当局からインフォームド・コンセントの下に提供された医療機関等での薬物使用状況を詳査し、薬物分析結果を評価した。医療機関を経た事例では、気管内挿管に由来するリドカインが検出される割合が多かった。静脈内投与ではないが、非経口投与という視点に立てば、本研究の趣旨から検討対象に加えても差し支えないが、口腔内や咽頭部に付着したリドカインの嚥下を考慮しなければならず、それらの結果の評価には慎重であるべきと思われた。純粋に本研究の目的にかなった事例は4例であった。検出された塩基性薬物は、エフェドリン(2例)、ミダゾラム(1例)及びジルチアゼム(1例)であった。胃内容は30~500 gと幅があったが、そのpHは4~5とほぼ一定の値を示した。エフェドリンの胃内容/血中濃度比は4.31及び4.33であった。ミダゾラム及びジルチアゼムの胃内容/血中濃度比はそれぞれ11.5及び11.0であった。事例が少ないこと、薬物の種類が異なること、及び薬物投与時期が不明なものが含まれていることから、現時点ではデータの解釈に大きな制約がある。しかしながら、各事例に共通して言えることは、薬物の胃内容濃度が血中濃度に比してかなり高いということである。事例は少ないものの、医療時に静脈内投与された薬物が胃内に多量に分泌されることが実証されたことの法中毒学的意義は大きく、今後も本研究を推進することで、塩基性薬物の胃内分泌動態の一端を解明できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
法医解剖例には医療機関を経た事例がかなり含まれるが、その中で本研究の対象となるもの、すなわち死亡の2、3日以内に塩基性薬物が使用されかつ静脈内投与のみが行われた事例の数は限られることが予測された。今年度は、研究対象候補事例の地道な薬物分析と死亡状況の詳査を行うことにより、数例の対象事例の存在を明らかにし、それらの胃内容と血液の薬物濃度の関係を解析し得たことから、研究はおおむね順調に進行したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、検討の対象となる事例を地道に集積することが肝要である。したがって、今年度と同様に、研究対象候補と思われる事例の薬物分析と死亡状況の詳査を継続して実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
薬物分析に必要な試薬等の消耗品を購入する。また、国内で開催される国際学術集会での研究成果の発表のための旅費、及び国際誌への学術論文を投稿する際の英文校正費に充てる。
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