2012 Fiscal Year Research-status Report
出血性ショック時の腎臓障害における出血速度の影響について
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23590865
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
佐藤 寛晃 産業医科大学, 医学部, 准教授 (50441845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敏子 産業医科大学, 医学部, 講師 (80141745)
笠井 謙多郎 産業医科大学, 医学部, 助教 (40169397)
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Keywords | 出血性ショック / 出血速度 / TNF-α / IL-1β |
Research Abstract |
全身麻酔下のラットの左大腿動脈にカテーテルを挿入し,さらに左腎臓を露呈して組織血流計を装着して実験を行った。実験は,出血をさせない群および全血液量の25%を,5分,20分および60分かけて出血させる計4群において,出血5時間後まで持続的に動脈圧と腎臓組織血流量をポリグラフ装置により記録しつつ行った。 各群において,出血1,3および5時間後に動脈血液ガス分圧測定,血中尿素窒素濃度,血清クレアチニン濃度および血中エンドトキシン濃度を測定した。さらに,腎臓組織中のTNF-αとIL-1βのmRNAの発現をRT-PCR法で測定し,腎静脈血清中のTNF-αとIL-1βの濃度をELISA法を用いて測定した。 いずれの群でも動脈圧は出血直後に一旦低下するものの,その後徐々に上昇し,その程度は出血速度が遅い群ほど小さく低血圧が持続した。腎臓組織血流量も動脈圧とほぼ同様の変化を示した。出血速度が遅い群ほどアシドーシスの進行,血清学的・組織学的な腎障害の悪化およびTNF-αとIL-1βの発現の増加を認めたが,血中のエンドトキシンには出血速度に応じた変化は認めなかった。 出血速度が遅いほど,出血5時間後には血清学的・組織学的に腎障害が悪化することが確認された。さらに,その原因として,腎臓組織血流量の減少による虚血状態がTNF-αとIL-1βなどの炎症性サイトカインの発現量の違いに関与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,本年度では出血速度が遅いほど腎障害が生じやすくなり,その病態メカニズムに,TNF-αやIL-1βなどの炎症性サイトカインの発現量の違いが関与していることを明らかにすることができた。 したがって,現在の時点では,本申請研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
出血性ショック後の臓器障害の発生メカニズムにおいて,TNF-αやIL-1βなどの炎症性サイトカインにより好中球の発現が促進されて,炎症性臓器障害が進行すると報告されている。そこで,出血速度の違いによる好中球の出現頻度や組織学的傷害の程度の関係を明らかにする。 これらの結果を解析し,出血速度と出血性ショック後の腎臓障害との関係について明らかにするとともに,好中球の出現頻度や組織学的傷害の程度が,出血性ショックの診断や重症度判定の形態学的診断マーカーになりうるかについても検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ラットの腎臓の組織切片を作成し,免疫染色を施して組織学的な検討を行う。また,必要に応じて出血性ショックモデルによる追加実験を行うためにラットを使用する。
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