2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト肝細胞を用いた乱用薬物代謝物解析システムの構築
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23590866
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
金森 達之 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (40356192)
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Keywords | 肝細胞 / 三次元培養 / 代謝 / 乱用薬物 / スフェロイド |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き、トランスパレント(株)より市販されている肝細胞スフェロイドアレイキット「Cell-able」を用いて肝細胞を培養し、薬物代謝実験を行った。培養条件等について、以下の視点から実験を行った: 1. 一般の接着細胞用プレートとの比較、2. フィーダー(支持)細胞(マウス由来繊維芽細胞)の効果、3. 振とう培養の効果について。 モデル薬物として、麻薬2,5-ジメトキシ-4-プロピルチオフェネチルアミン(2C-T-7)を用いて、各種条件により代謝実験を行った結果、1. 一般の接着細胞用プレートを用いた場合、Cell-ableを用いた場合に比べ代謝物によっては生成量が著しく少なく、薬物代謝実験におけるCell-ableの優位性が確認された。2. Cell-ableでは、基本的にフィーダー細胞の使用が前提となっているが、敢えて肝細胞のみの培養により代謝実験を行った場合、一部の代謝物の生成量が著しく少なく、Cell-ableではフィーダー細胞との共培養は必須であると考えられた。ただし、フィーダー細胞単独での代謝実験を行ったところ、一部の代謝物については、フィーダー細胞のみでも生成することが明らかとなった。本研究の最終目標は、ヒトの肝細胞を用いてヒト生体内における薬物代謝を予測することであり、マウス由来の細胞による代謝反応が混在してしまうのは不都合である。しかし、肝細胞の代謝能力を高く維持するためにはフィーダー細胞は欠かせない。従って、本キットにより薬物代謝を評価する場合、通常のフィーダー細胞と肝細胞の共培養に加え、フィーダー細胞単独、肝細胞単独での代謝実験も同時に行い、結果を総合的に判断すべきと思われた。3. 培養時に振とうした場合、静置した場合に比べ特段の変化は認められず、振とう培養は必要ないと判断された。 本年度の研究により、培養条件等の基礎的検討は概ね終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、実験条件について詳細な検討を行い、薬物代謝反応のための実験系を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、最終年度であり、これまでの研究により確立された実験系により、各種薬物の代謝実験を行う。具体的には、幻覚薬である2,5-ジメトキシ4-アルキルチオフェネチルアミン類(2C-T類)3種の代謝実験を行い、in vivoデータとの詳細な比較を行う。また、最近乱用が問題となっている合成カンナビノイド類の代謝についても検討を行う。なお、これまでの実験条件検討段階においては、安価であり、また、薬物代謝パターンの比較対象となるin vivoデータも揃っているとの理由からラット肝細胞を用いていたが、最終年度はヒト肝細胞を使用した実験も行う。その場合、ヒト肝臓由来の初代細胞に加え、ヒト由来の株化細胞についても検討を行う予定である。 得られたデータをもとに、本実験系の乱用薬物代謝予測のためのモデルとしての有用性について総括する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
三次元培養プレート(Cell-able)、ヒト肝細胞、ラット肝細胞、培地、シャーレ、ピペット等の消耗品に115万円程度の支出を予定している。 また、最終年度であり、研究成果の発表のため、国際学会2回(9月及び3月)参加の旅費及び参加費として75万円、英文校閲1回分として3万円の支出を予定している。
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