2011 Fiscal Year Research-status Report
認知機能進展に対する新規診断法の開発(エピジェネティックスの臨床応用)
Project/Area Number |
23590878
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹屋 泰 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (70590339)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 充 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50335345)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 臨床疫学調査 / エピジェネティクス / 遺伝子解析 |
Research Abstract |
[研究成果]軽度認知機能障害患者を対象とした「もの忘れパス入院」の平成23年度の入院患者数は43名であった。また神経心理検査にADASとCDRを加えさらに詳細に認知機能を調査することとした。6ヶ月後の外来フォローアップは10名に行われ、外来にて問診とMMSEが施行された。過去のもの忘れパス入院患者107名の横断研究では、MMSEの平均点は25.8点であり、軽度認知機能障害相当の患者群が入院対象として選択されており、また、既報のごとく、年齢や教育年数と認知機能障害との間に正の相関を認めた。以上より、もの忘れパス入院の患者群が軽度認知機能障害患者の疫学データを蓄積するための手段として有用であると結論付け、これらは予備試験の結果として2011年6月の日本老年医学会学術集会で報告した。また、空腹時血糖値、食後1時間血糖値、および2時間血糖値とMMSEとの間に強い相関を認め、ROC曲線の解析から、軽度認知機能障害相当のMMSE<24点に関して、食後2時間血糖値のcut off値は125mg/dL前後と予想した。[研究成果の意義や重要性]本研究は、軽度認知機能障害症例のみならず、良性健忘症例、および認知症症例を含む遺伝性因子、および遺伝子制御に関する前向きコホート研究であり、本邦では報告例がない。さらに、本研究では、良性健忘症例をフォローアップの対象に含めており、正常老化の研究が世界的にも初期段階であること、および正常老化を未だ黎明期のエピジェネティックス研究と結びつけて調査することにおいて、非常に独創的である。本研究で表現型と遺伝子制御の関連のパターンを見いだし、認知症の促進因子・予防因子の解明、早期発見と有効な予防法の発見につながる基礎研究になることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備試験として、107名のもの忘れパス入院の患者の横断研究を行った。患者の平均MMSE-Jが25.9±3.6点であり、対象目標としていた軽度認知機能障害に合致していた。また多変量解析の結果、既報のごとく認知機能障害と年齢、教育年数、血糖値との間に相関を認め、もの忘れパス入院が本研究の疫学データを蓄積するための手段として有用であることを確認できた。入院における心理検査にAlzheimer's Disease Assessment Scale(ADAS)とClinical Dementia Rating(CDR)による評価を追加し、より詳細に調査することとしたが、1人あたりの心理検査の時間が3時間程度必要となり、1日1人までの入院しか受け入れられなくなった。入院の受け入れ数を増やせるような体制を整えていく予定としている。一方、1年後のフォローアップ率は50%程度と低く、本試験ではこれを上昇させる必要がある。フォローアップ率が低い原因として継続的に当院にて外来フォローをしている患者が少なく、連絡が途絶えてしまったり、入院を勧めても断られたりするケースが認められる。本試験では退院時に繰り返しフォローの日程を説明し、また患者、およびフォローをお願いしている担当医師にも文書で依頼する方針である。遺伝子多型の解析に関しては、当研究室では以前より実験手技が確立しているため順調に行える予定であるが、多型に関してはApoEのみを調査する方針とした。エピジェネティクスの解析に関しては、コスト面などを含め、未だ試行錯誤を繰り返しており、この点が本研究の律速段階になっている。ゲノムワイドな網羅的解析はコストが高く、バイサルファイトシーケンスによる特定領域のメチル化部位の解析を行う予定であるが、領域を未だ絞り切れていない。これに関しては、予備研究として数症例の網羅的解析を行う必要があるかもしれない。
|
Strategy for Future Research Activity |
問題点として、6ヵ月後の外来フォローアップ率が低く、これを上げるためのシステム作りを行い、現在医学部医学倫理委員会に本試験の申請予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)患者、およびフォローアップ先の担当医師に対する通信費(2)遺伝子解析、およびエピジェネティクスの解析に用いるバイサルファイト処理やPCR増幅に必要な試薬(3)学会発表時の交通費・滞在費(4)関連書籍
|
Research Products
(1 results)