2012 Fiscal Year Research-status Report
認知機能進展に対する新規診断法の開発(エピジェネティックスの臨床応用)
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23590878
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹屋 泰 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70590339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 充 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50335345)
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Keywords | 認知症 / 軽度認知機能障害 / 生活機能 / ADL / エピジェネティクス |
Research Abstract |
大阪大学医学部附属病院老年・高血圧内科で行われた「一泊二日もの忘れパス入院」は合計200名を超え、軽度認知機能障害(MCI)患者の表現型として多くの臨床パラメータを調査し、蓄積できた。特に老年内科として重要視している、認知症患者における認知機能と生活機能との関連については、下肢筋力検査、重心動揺検査、およびADL調査などの調査項目を追加し、詳細に調査できた。その結果、脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症(AD with CVD)は、認知機能や運動機能が同程度のアルツハイマー型認認知症(AD)に比し、ADLが低下していることを複数の研究会で報告した。 危険因子に関しては既報の如く年齢、教育年数などのほか、糖尿病との関連が最も強く示唆された。糖尿病に関して、罹病期間やHbA1Cといった比較的長期のパラメータと認知機能との間に相関は認められなかったが、食後1時間、および2時間血糖といった糖尿病の早期に生じる血糖異常とは相関が強かった。MCI患者における認知機能低下は血管疾患というより、むしろ、代謝性疾患としての影響が強い可能性があると考えている。血圧に関しては、早朝収縮期血圧と認知機能の間に負の相関が認められ、昼間、および就寝前血圧では認められなかった。この意義に関しては不明であるが、高血圧治療ガイドライン(JSH2009)で示される如く、24時間を通じた適正な血圧コントロールが認知症に対しても重要である可能性があることを学会で報告した。また、これまでの認知症と血圧の研究報告は外来ベースでの研究が大部分であり、早朝血圧を測定できることは入院ベースの研究の強みであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MCI患者の表現型として多くの臨床パラメータを蓄積することができたが、予定としていた目標対象患者数を下回った。老年・高血圧内科は平成24年度4月の病棟移転に伴い、入院が制限されたことが主な原因であったと考える。ただし下肢筋力検査や重心動揺検査、ADL調査など生活機能に関する調査項目を増やしたため、何とか満足できる臨床パラメータの収集ができたと考えている。 一方で遺伝子型、およびエピジェネティクスの解析が遅れている。特にエピジェネティクスに関しては試行錯誤を繰り返しているが、限られた資金内で効率良く多くのサンプルを調査する方法が定まらないままの状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
AD患者において認知機能や運動機能に差を認めない場合であっても、深部白質病変や無症候性ラクナなどの脳血管障害の存在により、ADLが低下することは興味深い結果であった。そのメカニズムとして、①前頭葉機能低下が存在しているのではないか②運動機能評価は十分であったか③認知機能評価は十分であったか、の3点を考え、調査項目を追加した。すなわち、神経心理学検査としてアルツハイマー病評価スケール(ADAS)を追加し、高齢者総合機能評価(CGA)を行い、下肢筋力検査、重心動揺検査を行うこととした。さらに介護者のZarit介護負担尺度も調査し、認知症患者のトータルケアの質を向上させることを目標とした。われわれ老年内科医は認知症患者のアウトプットとして、MMSEなどの神経心理学検査の得点以上に、ADLやIADLなどの生活機能評価や介護者の介護負担度などに関心が強く、今後も引き続きそれらにこだわって調査していきたい。その結果をもとに、長期的には認知症患者の生活機能を少しでも長く維持できるような介入方法を調査していく予定である。また介護負担度は認知機能の低下以上に生活機能の低下に強く影響され、介護者の負担を少しでも軽減できるように、医療のみならず介護を含めた総合的・社会的な老年内科らしい介入方法を提示していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き遺伝子型、およびエピジェネティクス解析に関する試薬、およびデータ解析に必要なソフトウェアや通信費、学会の参加費と交通費などに使用する予定である。
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