2011 Fiscal Year Research-status Report
レニン・アンジオテンシンを基盤とした糖尿病と骨代謝の相関関係の解析
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23590879
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
志水 秀郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (50388378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樂木 宏実 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20252679)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 骨代謝 / 糖尿病 / レニン / アンジオテンシン / 降圧薬 |
Research Abstract |
生後10週齢のWistar rat(Cont群)に卵巣摘出術を施し(OVX群)、高フルクトース食・F2HFrD(オリエンタル酵母)を1ヶ月間与えて(OVX+FFR群)2型糖尿病モデルを作成し、糖尿の進展と骨代謝との相関関係を検証した。血清Ca、Pは3群間に有意差をみなかったが、尿中Ca、DPD排泄量の測定など骨吸収指標において、Cont<OVX<FFRの順に有意に上昇していた。この系において血漿レニン活性はOVX,FFRにおいて同等に上昇していた。また、糖化指標として血漿ペントシジン濃度において、Cont<OVX<FFRの上昇をみた。脛骨組織において、ALP,TRAP活性はともにCont<OVX<FFRの順に上昇をみたが、上昇率においてALP<TRAPであったため、ALP/TRAP石灰化係数はCont>OVX>FFRの順に低下していた。脛骨の病理組織標本においては、酒石酸耐性酸ホスファターゼ染色(TRAP染色)において同様(Cont<OVX<FFR)に有意な破骨細胞数の増加を認めた。またペントシジンの免疫染色においては、FFRの骨基質に染色性が確認された。DEXAによる骨密度測定では、Cont>OVX>FFRの順に骨密度が温存されていた。糖尿病評価として、血清Glu、インシュリン濃度はともにFFRにおいて有意に上昇しており、インシュリン抵抗性の惹起が疑われ、糖負荷試験を施行したところ、FFRにおいて耐糖能異常が確認された。以上のことから、高フルクトース食負荷により高回転型の骨代謝を惹起すると考えられ、尿中へのCa排泄増加にともなう骨量の減少が確認され、ヒトの糖尿病に類似したモデルであることが証明された。またこのような病態では、レニン・アンジオテンシン系が活性化されて、破骨細胞の分化誘導が上昇してしていること、糖化、酸化の産物であるペントシジンの酸性亢進と蓄積が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本モデルである高フルクトース負荷モデルの確立が第一目標であり、卵巣摘出術に1ヶ月間高フルクトース負荷を行ったモデルにおいて、高回転型の骨代謝にともなう尿中Ca量の増加、骨密度の減少を惹起してヒトの2型糖尿病に類似した病態を確認することが出来た。この系において血液・尿の生化学検査、骨組織の一般病理検査、破骨細胞染色、DEXAによる骨密度解析は概ね順調に検証できたが、糖化・酸化産物であるペントシジンの免疫染色において脱灰方法や抗原の賦活法などの条件設定に時間を要したが概ね克服出来ている。また骨の生理学検査である3点曲げ試験において、高フルクトース食1ヶ月では指標に有意な変化を認めなかったために、負荷3ヶ月群において現在Detaを集積して検証しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
基本モデルである高フルクトース負荷モデルが確立されたので、負荷3ヶ月モデルでの3点曲げ試験のDeta収集と解析をおこなう。この系においては、研究課題であるところのレニン・アンジオテンシン系(RAS)の亢進と糖化・酸化産物であるペントシジンの産生亢進および骨組織への沈着が確認されたので、RASの阻害薬であり降圧薬であるアンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の薬理効果を検証する。対照薬として同等の降圧効果を有するカルシウム拮抗薬(アムロジピン)を使用する。ARBは、その構造特異性により異なった多面的効果を有するので、糖化アマドリ転移阻害作用を有するオルメサルタンとPPARγ作動作用を有するテルミサルタンの両群を比較検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通りの計画をすすめてゆく。すなわち確立した高フルクトース負荷モデルに種々の降圧薬を投与してその薬理効果を検証する。具体的には、この2型糖尿病モデルにおいてそれぞれカルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、2種のARBを1か月服用させて、血液、尿における骨代謝マーカーの測定とDEXAによる骨密度、病理組織におけるTRAP染色、ペントシジン免疫染色、3点曲げ試験を行い、それぞれのDeta解析と各パラメーターの相関関係の検証を行い、種々の降圧薬の作用機転の差異からから病態のメカニズムを解析する。
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