2012 Fiscal Year Research-status Report
レニン・アンジオテンシンを基盤とした糖尿病と骨代謝の相関関係の解析
Project/Area Number |
23590879
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
志水 秀郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (50388378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樂木 宏実 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20252679)
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Keywords | 骨代謝 / 糖尿病 / アンジオテンシン |
Research Abstract |
生後10週齢のWistar ratに卵巣摘出術を施し(OVX群)、高フルクトース食・F2HFrD(オリエンタル酵母)を1ヶ月間与えて(OVX+FF群)2型糖尿病モデルを作成、またアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を同時投与(OVX+FF+ARB群)して、糖代謝と骨代謝との相関関係を検証した。 骨代謝評価では、血清Ca、Pは3群間に有意差をみなかったが、尿中Ca、P排泄量など骨吸収指標において、OVX+FFR群で有意な上昇を認めたが、ARB併用群ではOVX群と同程度に抑制されていた。この系において破骨細胞の指標である酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)活性はOVX+FF群で有意に上昇しており、ARB併用により抑制された。これらの所見は脛骨のTRAP染色による同様の結果により裏付けられた。事実、DEXAによる骨密度測定においてもOVX+FF群において骨密度は有意な低下をみたがARB併用によりOVX群と同程度にまで改善をみた。糖代謝評価では、糖負荷試験によりOVX+FF群において血糖値、インスリン共に上昇しており耐糖能異常が認められたがARB併用により改善効果が認められた。これらの結果はインスリン負荷試験結果からも裏付けられた。また、糖化・酸化の最終産物(AGE)の産生において、OVX+FF群で血漿ペントシジン、グルコアルブミンの有意な上昇が確認されたが、ARBの併用により抑制された。これらの所見は脛骨におけるペントシジンの免疫染色による結果でも確認された。 以上のことから、高フルクトース食負荷により高回転型の骨代謝を惹起するとともにレニン・アンジオテンシン系(RAS)の活性化を引き起こすと考えられる。RASの抑制は糖化、酸化産物であるペントシジン生成抑制を伴って破骨細胞活性をを抑制して骨代謝改善に寄与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣摘出術に1ヶ月間高フルクトース負荷(FF:Fructose feeding)を行った動物実験モデル(Wistar rat)において、高回転型の骨代謝にともなう尿中Ca排泄量の増加、骨密度の減少を惹起してヒトの2型糖尿病に類似した病態を確認することが出来た。この系においては、レニン・アンジオテンシン系(RAS: renin angiotensin system)の亢進が確認されたので、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB: Angiotensin type 1 receptor blocker)を併用してRASの抑制を行ったところ、FFによって惹起された骨吸収の進展を抑制することが確認された。また、糖代謝においてもARBの併用によりFFによって惹起された耐糖能異常を改善するとともに最終糖化産物(AGEs: Advanced glycation endproducts )であるペントシジンやグルコアルブミンの上昇を抑制することが確認され、脛骨の病理組織においてもペントシジンの蓄積の減少が確認された。これらの糖代謝と骨代謝の相関のメカニズムを解析するにあたり、骨の脆弱性を検証するために、骨を構成するコラーゲン架橋の糖化、酸化を3点曲げ試験による評価を行ったところ、1カ月後の測定値において、最大荷重(N), 硬性 (stiffness; N/mm), 曲げ弾性 (N/mm2) and 吸収エネルギー (N.mm) の各パラメータにおいて有意差は認められなかった。そこで糖化産物が骨の脆弱性に影響を与えるには相応の期間を要すると考えて現在3ケ月モデルを作成して検証中である。
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Strategy for Future Research Activity |
高フルクトース負荷を行った2型糖尿病動物実験モデルにおいて、レニン・アンジオテンシン系(RAS)の抑制が、骨代謝および糖代謝の増悪を抑制するという結果が得られたので、これらの効果がRAS抑制薬に共通する効果(クラス効果)であるのか、立体構造に起因する薬剤特異性(ドラック効果)であるのか、または降圧による効果であるのかを検証してゆく。クラス効果の検証としては、違う機構でRAS を抑制するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi; Angiotensin converting enzyme inhibitor)、ドラック効果としては同じARBでありながらその構造特異性により異なった多面的効果を有する、糖化アマドリ転移阻害作用を有するオルメサルタンとPPARγ作動作用を有するテルミサルタンの両群を比較検証する。対照薬として同等の降圧効果を有するカルシウム拮抗薬(アムロジピン)を使用してその効果を比較検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通りの計画をすすめてゆく。高フルクトース負荷モデルに種々の降圧薬を投与してその薬理効果を検証する。現在進行中の3ヶ月モデルの解析を終了させたのちに、レニン・アンジオテンシン系の抑制を種々の降圧薬を用いて多面的に検証する。具体的には、この2型糖尿病モデルにおいてカルシウム拮抗薬、2種類のARB(糖化アマドリ転移阻害作用を有するオルメサルタンとPPARγ作動作用を有するテルミサルタン)を1か月服用させて、血液、尿における骨代謝マーカーの測定とDEXAによる骨密度、病理組織におけるTRAP染色、ペントシジン免疫染色、3点曲げ試験を行い、それぞれのDeta解析と各パラメータの相関関係の検証を行い、種々の降圧薬の作用機転の差異からから病態のメカニズムを解析する。
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Research Products
(1 results)