2012 Fiscal Year Research-status Report
骨・血管連関の解明を目指したLDLコレステロールが骨に及ぼす影響の検討
Project/Area Number |
23590882
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
山内 美香 島根大学, 医学部, 講師 (40379681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 利嗣 島根大学, 医学部, 教授 (00226458)
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Keywords | osteoporosis |
Research Abstract |
臨床研究においては、骨粗鬆症健診受診者のうち本研究に対して同意の得られた閉経後女性を対象に横断検討にて、動脈硬化に関わる脂質異常症と骨代謝の検討を行った。LDLコレステロール(LDL-C)、HDL-C、中性脂肪は、骨代謝マーカー、骨密度のいずれとも相関を認めなかった。LDL-Cは椎体骨折の有無で差を認めなかったが、非椎体骨折では骨折有群で有意に高値を示した。さらにロジスティック回帰分析にて、年齢、BMI、骨吸収マーカー、25位水酸化ビタミンD[25(OH)D]、大腿骨頚部骨密度、脂質治療薬の有無で補正後もLDL-C上昇は有意な非椎体骨折のリスク因子として選択された。高LDL-C血症は骨-血管相関に関与する因子のひとつである可能性が示唆された。この結果を論文に投稿するも、受理されず、機序についてのさらなる検討が必要であると考えられた。 そこで、近年、動脈硬化に関与するとされるリン調節因子のFGF23およびKlothoの血中濃度を測定した。LDL-CはFGF23やKlothoと相関を認めなかった。また、LDL-Cと非椎体骨折の関係はこれらで補正後も有意であった。LDL-Cと骨の関係はFGF23やKlothoとは独立したものであることを明らかにした。これらの検討結果をふまえて、現在再投稿中である。 基礎実験では10T1/2マウス未分化間葉系細胞を用いて、酸化LDL-Cが骨芽細胞への分化に影響を及ぼすかを検討した。増殖能は細胞数カウント、分化能はアルカリフォスファターゼ(ALP)活性、type I collagenとosteocalcinの発現を検討したが、有意な影響を認めていない。酸化LDL-CはPTHの骨作用を抑制するとの報告もあり、PTH投与下での酸化LDL-Cの作用について検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本人の閉経後女性ではLDL-C高値が骨密度や骨代謝マーカー、25(OH)Dとは独立した非椎体骨折リスクとなりうることを横断的検討で明らかにした。このことを論文投稿するも受理されず、当初の予定よりは遅れている。LDL-Cが骨折リスクに関わる機序に関わる検討を要すると考え、当初予定していなかったが、FGF23やKlothoの関係について検討を行った。FGF23やKlothoはリン調節因子であるが、動脈硬化に関与することや、FGF23高値が骨折リスク因子であることが報告されている。LDL-Cによる骨脆弱性の機序にこれらは関与しないことを明らかにした。また、LDL-CとFGF-23、Klothoは相関を認めなかったが、HDL-CはKlothoと有意な正相関を認めることが明らかとなった。骨-血管連関の解明にあたり、FGF-23やKlothoも加えた検討ができたことは当初の予定以上の結果が得られていると考えている。 基礎研究では、LDL-Cが酸化し、酸化LDL-Cとなることで、骨芽細胞の増殖、分化、石灰化、あるいは未分化間葉系細胞から骨芽細胞への分化に影響をおよぼす可能性を考えたが、影響を認めなかった。いずれもnegative findingであり、関与があった場合には情報伝達系の検討に進む予定であったが、そこに至っていない。臨床検討で、LDL-Cが非椎体骨折のリスク因子であるとの結果であり、皮質骨の脆弱化に関与する可能性が考えられる。皮質骨に影響をおよぼすのはPTHであり、骨芽細胞におけるPTH作用に対して酸化LDL-Cが影響をおよぼす可能性を考え、検討を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
横断検討で得られたLDL-Cが非椎体骨折に関与するというデータを論文投稿中であり、これを最優先に行う。臨床研究については、1回目の健診から1年以上経過し、2回目の健診を実施している例が集積しつつある。本年度中には縦断的検討に値する例数に達する予定であり、新規骨折発生のリスクへのLDL-Cの関与について縦断的統計解析を行う。また、縦断検討ではLDL-C以外の因子が骨折リスクにかかわる可能性が有り、これについても検討する。さらに、近年、新たな骨質マーカーとしての可能性が示唆されている骨形成抑制因子のスクレロスチンがLDL-Cによる骨脆弱性に関わっていないかどうかを検討する。 基礎検討では、これまでに引き続き、MC3T3E1マウス骨芽細胞様細胞あるいは10T1/2マウス間葉系幹細胞を用いて、骨芽細胞増殖、分化および石灰化に対するPTH作用にLDL-Cが影響を及ぼすか否かを検討する。また、骨芽細胞分化実験でよく使用される、マウス未分化間葉系細胞ST-2細胞を用いて、LDL-Cの骨芽細胞分化能への影響を検討する。さらに、これらLDL-Cの影響がメバロン酸経路の情報伝達機構であるBMP-2、AMP kinaseのリン酸化やRho kinase活性を介するかをRT-PCR、Western blot法で検討する。加えて、PTHの骨形成に重要な細胞内情報伝達機構のWnt-βカテニン系の関与についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)