2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性疾患患者末梢白血球の環状テロメアDNAの定量によるゲノム老化の評価について
Project/Area Number |
23590885
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前田 豊樹 九州大学, 大学病院, 准教授 (30264112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 直樹 九州大学, 大学病院, 教授 (60157170)
小柳 雅孔 九州大学, 大学病院, 助教 (00325474)
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Keywords | テロメア / 老化 |
Research Abstract |
これまで、種々の慢性疾患患者を対象に、(1) 末梢白血球テロメアDNAの平均長、(2) その長さの分布、(3) サブテロメア領域エピジェネテイックな変化としてのメチル化の程度を追跡し、また、(4) テロメア領域由来の環状DNAの定量解析を行い、疾病状態のゲノムの老化速度への影響を評価することを目指してきた。 このうち、テロメア環状DNA定量が、最もゲノム老化速度の逐次変化を鋭敏に反映するものと期待し解析をすすめてきたが、環状DNA量が多くの因子の影響を受けるため、一定の見解を得るに至っていない。一方で、サブテロメアのメチル化やテロメア長の分布変化がヒトの疾病状況に依って比較的一定の傾向を示すことがわかってきている。慢性疾患状態では、テロメア平均長よりもサブテロメアの変化や長さの分布の方がより鋭敏に疾病特異的な変化を検出できることを示すことができた。また、ヒト血管内皮細胞培養系を用いて、病的ストレス増大条件下(酸化ストレス、放射線照射、低酸素下条件)におけるテロメアの変化を追跡して、この仮説を検証しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
テロメア環状DNAは、そのサイズ分布に揺らぎが大きいこと、ミトコンドリアDNAなど他の大量の環状DNAを内部標準にした場合にも回収率が一定でない、または未知の要因に依って回収量が大きく異なることなどが障壁となり、一定の見解を得ていない。しかし、他のテロメア関連パラメータの解析により、ヒトの疾病による身体ストレスを老化促進度に置き換えて評価することが可能になりつつある。老化の病的促進は、単に生理的な老化変化が早まるパターンと生理的な老化とは異なるパターンでテロメア変化を来すものとに分かれることがわかってきたが、いずれの場合でも、長いテロメアの減少速度が最も鋭敏なパラメータとなりうる可能性を示しつつある。 以上から、当初の「環状DNAを中心に解析を進める予定」から、方向修正を余儀なくされているものの、ゲノム病的老化のテロメア解析による、より鋭敏な老化性速度変化の検出とその定量的評価が具体化してきており、全体の印象としては、70~80%の達成度と自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、臨床検体における現在の解析を続行し、統計解析によって、これまでの仮説を検証し報告したい。また、培養系では、病的老化確認目的で、放射線照射によるヒト血管内皮細胞でのテロメア変化の詳細な解析を進めており、これまで臨床検体で得られた仮説を検証できるものと期待している。さらに、解析対象者に放射線治療対象がん患者が含まれており、臨床検体における放射線のテロメアへの影響が検出できるのではないかと期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
おおむね、前年と変わらない。臨床検体のテロメア解析、培養実験とテロメア解析、について実験材料費、研究補助者への謝金のほか、学会発表や論文発表の際には、旅費や投稿料などが必要となる。
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Research Products
(10 results)