2011 Fiscal Year Research-status Report
角層カタラーゼ活性系に対する補剤の作用メカニズムの解明
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23590892
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小林 裕美 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10221243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田宮 久詩 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80464634)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 漢方 / 補中益気湯 / 皮膚 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
生体を防御し治癒機構を促進する漢方方剤は補剤と呼ばれる。補剤の代表方剤である補中益気湯は、黄耆、人参、柴胡など10種類の生薬から構成され、虚弱体質の改善などに用いられてきたが、酸化ストレスを伴う皮膚の病態に対する効果も臨床的に経験されてきている。 皮膚は紫外線照射などの酸化ストレスにより機能が低下し、角層カタラーゼ活性系にも影響が及ぶことが知られている。皮膚への酸化ストレスは皮膚の健常状態を損ない、さまざまな病態を形成する。 そこで、酸化ストレスを受けた皮膚に対する補中益気湯の作用メカニズムを明らかにする研究を行った。当該年度は、マウスに紫外線を照射し、補中益気湯投与群と非投与群において、皮膚機能を代表する角層水分量や経表皮水分喪失量を測定するとともに、酸化ストレスの影響を受ける角層カタラーゼ活性、カルボニル蛋白レベルなどのマーカーの変化について検討した。その結果、紫外線照射により角層水分量やカタラーゼ活性は低下し、経表皮水分喪失量やカルボニル蛋白レベルは増加するが、補中益気湯投与によりこれらの変化が抑制されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の一つである紫外線照射による皮膚酸化ストレスモデルの確立ができ、補剤の代表方剤である補中益気湯投与群において用量依存的に酸化ストレスによる皮膚の影響を抑制できることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
補剤の代表方剤である補中益気湯が皮膚に及ぼす作用については、酸化ストレスによる障害抑制のみならず、複数の作用を有することが推測されるため、抗炎症の観点からも検討を加える。同時に臨床においても難治アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に対する補剤併用の意義をより明らかにするため、食養など併用する他の療法と比較しつつ、症状や検査値の経過を観察する。さらに、ヒト皮膚の変化についてテープストリッピングなどにより非侵襲的に採取した角層を用い、簡便に評価できる方法を探索しつつ、皮膚における酸化ストレス―炎症相互連関を明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
補中益気湯が皮膚に及ぼす影響について、経表皮水分喪失量の測定器などを駆使し、ヒトやマウスモデルにおける角層カタラーゼ活性系を中心にさらに検討を加える。 コンピュータを利用し、画像解析も行う。 サイトカインや幹細胞との関連を明らかにできないか、サイトカイン測定キットなどを購入し、探索的研究も行う。 また、補剤の作用メカニズム解明のため、皮膚疾患治療における補剤併用の臨床効果を他の療法と比較する検討も平行して行う。 国内外の学会にできる限り参加し、最新の情報収集を行う。
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