2012 Fiscal Year Research-status Report
角層カタラーゼ活性系に対する補剤の作用メカニズムの解明
Project/Area Number |
23590892
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小林 裕美 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10221243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田宮 久詩 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80464634)
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Keywords | 漢方 / 補中益気湯 / 皮膚 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
生体を防御し、治癒機構を促進する漢方方剤は補剤と呼ばれる。補剤の代表方剤である補中益気湯は、黄耆、人参、柴胡など10種類の生薬から構成され、虚弱体質の改善などに用いられてきたが、酸化ストレスを伴う皮膚の病態に対する効果も臨床的に経験されてきている。 皮膚は紫外線照射などの酸化ストレスにより機能が低下し、角層カタラーゼ活性系にも影響が及ぶことが知られている。皮膚への酸化ストレスは皮膚の健常状態を損ない、さまざまな病態を形成する。 そこで、酸化ストレスを受けた皮膚に対する補中益気湯の作用メカニズムを明らかにする研究を進めてきた。同時に、臨床においても、補剤を用いた治療について皮膚酸化ストレスへの影響を検討した。 その結果、マウスモデルにおいて補中益気湯は酸化ストレスによる皮膚の障害に対し、防御的に働くことが明らかとなった。また、臨床においては、薬物療法のみならず食養と併用するため、食養の影響を明らかにして、補剤の作用を検討する必要性が示された。 当該年度は、補剤の生体への作用をより明らかにするため、併用する食養が生体に及ぼす影響について難治アトピー性皮膚炎患者を対象とし、低カロリー和食による皮膚症状の重症度スコアや検査値の変化などを解析し、効果を客観的に評価した。この臨床研究をさらに進めて、補剤が有用であった糖尿病合併乾癬症例における補剤と食養の効果を、補剤未使用の同疾患症例と比較し、糖代謝の視点からも解析する研究準備に着手した。また、紫外線照射ストレスに対する補中益気湯の皮膚防御作用のメカニズムの詳細を明らかにするため、マウスモデルや生薬成分を用い、角層カタラーゼ活性、カルボニル蛋白に加えて、皮膚の病理組織学的変化と皮膚幹細胞に及ぼす影響を免疫組織学的、遺伝子レベルでも調査し、補中益気湯のこれまで知られていなかった作用の解明に向けて、視野を広げて検討をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画のとおり、補中益気湯が皮膚の酸化ストレスを抑制する作用メカニズムを角層カタラーゼ活性やカルボニル蛋白レベルで明らかにしたうえ、この系に関与する補中益気湯とその生薬成分の直接的な抗酸化作用のみならず、これまで知られていなかった皮膚への作用が明らかになりつつある。 また、臨床における補剤の作用を明らかにするために必要な食養の効果についても、症例集積研究を行い、客観的評価により有益な情報が得られている。このように、当初の計画以上に、より、広い視野からの補剤の作用解明へと発展させることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
補剤の代表方剤である補中益気湯が皮膚に及ぼす影響を広い視点から明らかにするため、酸化ストレスによる障害抑制のみならず、種々の観点から検討を加える。すなわち、補中益気湯および構成生薬やその個々の成分、他の方剤について、マウスモデルを用い、角層カタラーゼ活性など酸化ストレスに及ぼす影響や皮膚の機能測定機器を用いた検討、病理組織学的、免疫組織学的、遺伝子発現レベルの比較検討を行う。 臨床研究においても、難治アトピー性皮膚炎のみならず、生体の治癒システムの機能低下を伴う皮膚疾患を対象とし、食養など併用する他の療法と補剤単独の作用を臨床症状や検査値の推移から比較検討する。特に食養の影響をより明らかにするため、食の影響を受けやすい慢性皮膚疾患である乾癬について、糖尿病合併例と非合併例について漢方の食養を合併した治療経過についての研究を行い、食の影響をより明らかにする。 ヒト皮膚の変化については、機能検査やテープストリッピング法などを活かした評価法を確立し、皮膚における酸化ストレス―炎症―食・漢方の相互連関をより明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
補中益気湯の皮膚幹細胞に及ぼす影響とそのメカニズムについてさらに明らかにするため、補中益気湯とその構成生薬、生薬成分、他の方剤をマウスに投与した際や食餌成分の影響について、皮膚の計測機器を用いた機能的変化の検討をはじめ、病理組織学的、免疫組織学的、遺伝子発現などの検討をコンピュータを利用した画像解析も加えて、詳細に研究する。また、補剤の作用メカニズムをより明らかにするため、皮膚疾患治療における補剤併用の効果や食養が及ぼす影響について臨床的にも検討を加える。 そのため、乾癬と糖尿病の関係についての研究や皮膚病理組織学的研究を加え、糖や脂質代謝、生薬成分が皮膚酸化ストレス系に及ぼす影響や皮膚病理組織学的変化について最新の情報を得るため、国内外の学会に参加し、情報収集と研究発展に努める。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Protective effect of hochuekkito, a Kampo prescription, against ultraviolet B irradiation-induced skin damage in hairless mice.2013
Author(s)
Yanagihara S, Kobayashi H, Tamiya H, Tsuruta D, Okano Y, Takahashi K, Masaki H, Yamada T, Hasegawa S, Akamatsu H, Ishii M
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Journal Title
J Dermatol
Volume: 40
Pages: 201-206
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Hochuekkito, a Kampo prescription reduced skin oxidative stress indirectly in ultraviolet B-irradiated mice skin.2012
Author(s)
Yanagihara S, Kobayashi H, Tamiya H, Tsuruta D, Nakanishi T, Okano Y, Masaki H, Yamada T, Hasegawa S, Ishii M
Organizer
第37回日本研究皮膚科学会年次学術大会・総会
Place of Presentation
沖縄 (ロワジールホテル&スパタワー那覇、パシフィックホテル 沖縄)
Year and Date
20121207-20121209
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[Presentation] A “healthy, low-calorie diet” session for the treatment of recalcitrant atopic dermatitis2012
Author(s)
Kobayashi H, Tamiya H, Yanagihara S, Aoki A, Hoshi K, Naruse A, Tateishi C, Nakanishi T, Tsuruta D, Ishii M
Organizer
42nd Annual Meeting of the European Society for Dermatological Research
Place of Presentation
イタリア、ベニス (Palazzo del Casino, Venice Lido Congress Centre)
Year and Date
20120919-20120922