2012 Fiscal Year Research-status Report
線維筋痛症患者への心理教育ガイドラインの作成とその実証的研究
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23590893
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
金 外淑 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (90331371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 正人 日本大学, 医学部, 准教授 (60142501)
松野 俊夫 日本大学, 医学部, 講師 (20173859)
住吉 和子 岡山県立大学, 看護学部, 准教授 (20314693)
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Keywords | 家族参加介入 / 心理教育的支援 / 生活再構築 |
Research Abstract |
先行研究では線維筋痛症(FM)患者に対する認知行動療法(CBT)を中心としたプログラムを用い、患者の病態に応じた介入を行った結果、患者家族に対する心理教育を治療に加えることが、痛みを軽減につながると考えられた。そこで、本年度は家族との生活再構築に向けた心理教育的支援の具体的な介入モデルを用い、患者の痛み軽減のみならず、家族との生活再構築に向けた心理教育的支援および、患者家族への介入・支援の重要性を明確化することを研究の目的とした。 対象は、①家族に対する心理教育を組み入れた家族参加CBT介入群(患者は50代の男性1、女性4名の合計5例。家族は、患者の母親3例、患者の配偶者2例である)。②患者のみCBT介入を行った群は合計4例である(患者は50代の女性4名)。心理教育的介入支援は20回(1回50分~1時間)とし、家族面接は対象により6回~10回(1回20分)行った。 患者とその家族との心理面接を行った結果、患者のみ介入群は病識改善とともに痛みのセルフケア意欲の向上や適切な対処方法を身につけQOLの向上につながった。しかし、何らかの問題や出来事に巻き込まれると痛みの増悪をくり返す傾向がみられた。一方、家族参加介入群は治療に関係する家族関係の具体的なエピソードを早期に把握することができ、家族への適切な支援行動が増えることで、家族も含めた精神的安定度が向上する傾向が見られるとともに、痛みの軽減につながった。特に疼痛の罹病期間が長いFM患者にとって家族内葛藤は、患者の痛みを増悪させる直接的な要因となる反面、痛みを緩和する治療的役割を持つことが示唆された。したがって、FM治療を進める過程で、家族への心理教育的介入支援を同時に進めることの重要さが改めて明確化された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度は、FM患者の心理教育へ必要な基礎・実践プログラムなどを詳細に分析し、患者やその家族に対する支援モデルを作成した。引き続き、患者やその家族を対象とし、家族関係を改善するための介入方法や、家族の治療への参加タイミングなどを検討した結果、患者治療に家族支援を組み入れる際には、①CBTプログラの準備段階、心理教育段階ではFM患者のみがプログラムに参加し、その後の環境調整・整理段階で(介入開始5~7セッション前後)、家族の治療参加のメリットを患者に説明し、家族参加を提案する。②家族参加面接は家族から情報を引き出すという姿勢より、家族が抱えている問題やストレス、患者に対する思いを受け止めるという姿勢が重要である。③家族介入開始1回目は、患者と同席した上、FM症状の特徴を説明し、病気に対する認識の有無を確認するとともに、家族の視点から家族内構造や機能を把握する。④介入2日目からは、個別面接を行い、家族サポートを見直しや疾患に対する理解や痛み行動への対処などを学ぶ(認知・行動変容段階)。⑤最後の自己管理・維持段階では、患者と同席し、何がどのように変わったのかについて評価をくり返し、治療者側から家族に直接伝えるメリットを患者に理解させる。などの諸点が明らかになった。また、家族との生活再構築に向けた総合的な体系を示すとともに、各段階における対応を明確に位置づけることができた。 これらの結果は、The 15th Congress of Asian College Psychosomatic Medicine(ACPM 2012 Conference Best Poster Award)および、日本線維筋痛症学会第4回学術集会(優秀演題発表賞)で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、家族との生活再構築に向けた心理教育的支援の具体的な介入モデルを用い、患者とその家族関係に注目し、家族全体を視野に入れた治療的介入を見立てて治療の枠組み構築を行った結果、患者の症状などを家族と共有しやすく、痛みの改善にもつながった。今後、FM患者やその家族向けの小冊子作成の方向や活用について検討するためには、FM患者の家族の状況をより把握する必要があり、当初計画している研究をさらに広げ、「線維筋痛症友の会」に加入している患者200名(都市部在住の患者100名、地方在住の患者100名)とその家族200名(合計400名)を地域別にランダムで選択し、より具体的な情報を得るためにアンケートを実施し、現在その結果分析を行っている。 引き続き、本年度は、これまでの研究成果をふまえ、介入プログラムの最終評価と分析を行った上、汎用心理教育ガイドラインを作成し、外来診療においても活用可能なFM患者やその家族向けの小冊子を作成するとともに、次の治療ステップへの方向性を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は研究の最終年度でもあり、平成24年度の研究をさらに広げ、外来診療においても活用可能な汎用心理教育ガイドラインを作成し、その具体的行動指針としてFM患者やその家族向けの小冊子作成を目標としている。そのためのデータ収集・分析にかかわる、事務用品、人件費、国内・海外学会などの研究成果の発表に必要な費用に研究費を充てる。
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Research Products
(5 results)